【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です

灰銀猫

文字の大きさ
上 下
43 / 213
二章

噂と現実

しおりを挟む
 婚約破棄以来の夜会は、ラリー様の婚約者として参加したけれど…案の定、エリオット様とメイベルに捕まってしまった。
 まぁ、彼らは私をバカにしたくて仕方がないから、もしかしたらこの夜会も彼らが仕組んだのかもしれないとは思っていたけれど…

 でも、ラリー様は国王陛下の弟君で、エリオット様には叔父に当たる方なのだ。しかも王族でいらした時は騎士団を束ね、国内有数の騎士との誉れも高く、騎士たちからの信頼と人気は絶大だったと聞く。それ以外でも、非常に優秀で、陛下が即位された折には、ラリー様を宰相に…と望まれたと聞く。
 でも、まだあの頃は陛下の即位に異を唱える者が多く、ラリー様を国王にと押す勢力があったため、ラリー様は政争の種になるのを厭って臣下に下ったのだ。
 いつからか、ラリー様が顔に大きな傷を負い、それが原因で性格まで冷酷非情になられたとの噂が広まったけれど…それでもエリオット様がこんな風に貶めていい相手ではない。実績からすれば、エリオット様なんてラリー様の足元にも及ばないのだ。

「久しぶりだな、エリオット」

 驚愕から戻ってこないエリオット様に焦れたのか、ラリー様がエリオット様に声をかけた。うん、こうして並ぶだけでも二人の格の差は歴然だ。そして、その外見も…エリオット様も美形ではあるけれど、それは上っ面だけだ。落ち着いた物腰に放つ威厳、自信に満ちた表情と、年を重ねてにじみ出る艶。どれもエリオット様にはないものだ。

「お、叔父上…?!」
「…どうかしたか?私の顔をもう忘れたか?」
「い、いえ!とんでもございませんっ!お、お久しぶりでございます」
「ああ、久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
「は、は、はいぃっ!叔父上もお変わりなく…」
「ああ、相変わらず隣国との小競り合いが治まらないが、この通り息災だ」

 嫌だわ、エリオット様ったら…そんなにキョドってどうされたのかしら?いくらラリー様の放つオーラが際立っていたとしても、エリオット様は第二王子だというのに…もっとシャキッとしてくれないと国の威信にかかわるのに。

「そ、それにしても叔父上…」
「何だ?」
「そ、その…お顔は…」
「顔?」
「え、ええ。噂では、顔に酷い傷を受けられたと…」

 ああ、エリオット様が驚いたのは、ラリー様のお顔のせいだったのか。確かに入場してからは他の貴族たちも同じような事を囁いていたっけ。

「いいや、そんな事実はないが?どういう訳かそんな噂がこちらでは広がっていたらしいな。まぁ、お陰で興味のない女性からの誘いが減って平和ではあったが」
「そ、そうでございますか…」
「噂を鵜呑みにする様な底が浅い女性はお断りだからな。助かったよ」

 あらまぁ、ラリー様ったら、見事なまでのけん制だ。これではラリー様に突撃しようとした女性達も下手に動けないわね。だって、急に声なんかかけたら、噂を鵜呑みにしていたと白状している様なものだし。そしてさりげなく私を抱き寄せるのも勘弁して頂きたい。周りからの視線が痛すぎる…

「ああ、それからエリオット」
「は、はい、何でしょう?」
「シアとの結婚を命じたのはお前らしいな?」
「は、はひぃっ!そ、それは…」

 嫌だわ、エリオット様。そんなに飛び上がらんばかりに驚かなくても…自分で命じておいて、ラリー様から何も言われないと思っていたのだろうか?

「礼を言うよ」
「は、はいっ?!」
「こんなに愛らしく有能な女性を宛がってくれたんだ。領民も喜んでくれているし、素晴らしいご令嬢を紹介してくれて助かったよ」
「は、はいっ!おお、お役に立てたなら何よりですっ」

 あ~あ、完全にラリー様の完勝だ。まぁ、元から器が違ったのだけど…でも、私もエリオット様じゃなくラリー様に代わったのは本当によかった。だって、こんな残念なエリオット様じゃ、将来苦労するのは目に見えていたから。

「…は、はじめましてっ!ラリー様」

 そろそろエリオット様から離れたい…そう思っていた私だったが、メイベルの声にその希望は直ぐには叶えられないのを感じた。

しおりを挟む
読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
感想 167

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
 ミレニア王国にある名もなき村の貧しい少女のミリアは酒浸りの両親の代わりに家族や妹の世話を懸命にしていたが、その妹や周囲の子ども達からは蔑まれていた。  ミリアが八歳になり聖女の素質があるかどうかの儀式を受けると聖女見習いに選ばれた。娼館へ売り払おうとする母親から逃れマルクト神殿で聖女見習いとして修業することになり、更に聖女見習いから聖女候補者として王都の大神殿へと推薦された。しかし、王都の大神殿の聖女候補者は貴族令嬢ばかりで、平民のミリアは虐げられることに。  その頃、大神殿へ行商人見習いとしてやってきたテオと知り合い、見習いの新人同士励まし合い仲良くなっていく。  十五歳になるとミリアは次期聖女に選ばれヘンリー王太子と婚約することになった。しかし、ヘンリー王太子は平民のミリアを気に入らず婚約破棄をする機会を伺っていた。  そして、十八歳を迎えたミリアは王太子に婚約破棄と国外追放の命を受けて、全ての柵から解放される。 「これで私は自由だ。今度こそゆっくり眠って美味しいもの食べよう」  テオとずっと一緒にいろんな国に行ってみたいね。  21.11.7~8、ホットランキング・小説・恋愛部門で一位となりました! 皆様のおかげです。ありがとうございました。  ※「小説家になろう」さまにも掲載しております。  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね

さこの
恋愛
恋がしたい。 ウィルフレッド殿下が言った… それではどうぞ、美しい恋をしてください。 婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました! 話の視点が回毎に変わることがあります。 緩い設定です。二十話程です。 本編+番外編の別視点

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

過保護の王は息子の運命を見誤る

基本二度寝
恋愛
王は自身によく似ている息子を今日も微笑ましく見ていた。 妃は子を甘やかせるなときびしく接する。 まだ六つなのに。 王は親に愛された記憶はない。 その反動なのか、我が子には愛情を注ぎたい。 息子の為になる婚約者を選ぶ。 有力なのは公爵家の同じ年の令嬢。 後ろ盾にもなれ、息子の地盤を固めるにも良い。 しかし… 王は己の妃を思う。 両親の意向のまま結ばれた妃を妻に持った己は、幸せなのだろうか。 王は未来視で有名な卜者を呼び、息子の未来を見てもらうことにした。 ※一旦完結とします。蛇足はまた後日。 消えた未来の王太子と卜者と公爵あたりかな?

ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。  一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。  そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

処理中です...