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二章
噂と現実
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婚約破棄以来の夜会は、ラリー様の婚約者として参加したけれど…案の定、エリオット様とメイベルに捕まってしまった。
まぁ、彼らは私をバカにしたくて仕方がないから、もしかしたらこの夜会も彼らが仕組んだのかもしれないとは思っていたけれど…
でも、ラリー様は国王陛下の弟君で、エリオット様には叔父に当たる方なのだ。しかも王族でいらした時は騎士団を束ね、国内有数の騎士との誉れも高く、騎士たちからの信頼と人気は絶大だったと聞く。それ以外でも、非常に優秀で、陛下が即位された折には、ラリー様を宰相に…と望まれたと聞く。
でも、まだあの頃は陛下の即位に異を唱える者が多く、ラリー様を国王にと押す勢力があったため、ラリー様は政争の種になるのを厭って臣下に下ったのだ。
いつからか、ラリー様が顔に大きな傷を負い、それが原因で性格まで冷酷非情になられたとの噂が広まったけれど…それでもエリオット様がこんな風に貶めていい相手ではない。実績からすれば、エリオット様なんてラリー様の足元にも及ばないのだ。
「久しぶりだな、エリオット」
驚愕から戻ってこないエリオット様に焦れたのか、ラリー様がエリオット様に声をかけた。うん、こうして並ぶだけでも二人の格の差は歴然だ。そして、その外見も…エリオット様も美形ではあるけれど、それは上っ面だけだ。落ち着いた物腰に放つ威厳、自信に満ちた表情と、年を重ねてにじみ出る艶。どれもエリオット様にはないものだ。
「お、叔父上…?!」
「…どうかしたか?私の顔をもう忘れたか?」
「い、いえ!とんでもございませんっ!お、お久しぶりでございます」
「ああ、久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
「は、は、はいぃっ!叔父上もお変わりなく…」
「ああ、相変わらず隣国との小競り合いが治まらないが、この通り息災だ」
嫌だわ、エリオット様ったら…そんなにキョドってどうされたのかしら?いくらラリー様の放つオーラが際立っていたとしても、エリオット様は第二王子だというのに…もっとシャキッとしてくれないと国の威信にかかわるのに。
「そ、それにしても叔父上…」
「何だ?」
「そ、その…お顔は…」
「顔?」
「え、ええ。噂では、顔に酷い傷を受けられたと…」
ああ、エリオット様が驚いたのは、ラリー様のお顔のせいだったのか。確かに入場してからは他の貴族たちも同じような事を囁いていたっけ。
「いいや、そんな事実はないが?どういう訳かそんな噂がこちらでは広がっていたらしいな。まぁ、お陰で興味のない女性からの誘いが減って平和ではあったが」
「そ、そうでございますか…」
「噂を鵜呑みにする様な底が浅い女性はお断りだからな。助かったよ」
あらまぁ、ラリー様ったら、見事なまでのけん制だ。これではラリー様に突撃しようとした女性達も下手に動けないわね。だって、急に声なんかかけたら、噂を鵜呑みにしていたと白状している様なものだし。そしてさりげなく私を抱き寄せるのも勘弁して頂きたい。周りからの視線が痛すぎる…
「ああ、それからエリオット」
「は、はい、何でしょう?」
「シアとの結婚を命じたのはお前らしいな?」
「は、はひぃっ!そ、それは…」
嫌だわ、エリオット様。そんなに飛び上がらんばかりに驚かなくても…自分で命じておいて、ラリー様から何も言われないと思っていたのだろうか?
「礼を言うよ」
「は、はいっ?!」
「こんなに愛らしく有能な女性を宛がってくれたんだ。領民も喜んでくれているし、素晴らしいご令嬢を紹介してくれて助かったよ」
「は、はいっ!おお、お役に立てたなら何よりですっ」
あ~あ、完全にラリー様の完勝だ。まぁ、元から器が違ったのだけど…でも、私もエリオット様じゃなくラリー様に代わったのは本当によかった。だって、こんな残念なエリオット様じゃ、将来苦労するのは目に見えていたから。
「…は、はじめましてっ!ラリー様」
そろそろエリオット様から離れたい…そう思っていた私だったが、メイベルの声にその希望は直ぐには叶えられないのを感じた。
まぁ、彼らは私をバカにしたくて仕方がないから、もしかしたらこの夜会も彼らが仕組んだのかもしれないとは思っていたけれど…
でも、ラリー様は国王陛下の弟君で、エリオット様には叔父に当たる方なのだ。しかも王族でいらした時は騎士団を束ね、国内有数の騎士との誉れも高く、騎士たちからの信頼と人気は絶大だったと聞く。それ以外でも、非常に優秀で、陛下が即位された折には、ラリー様を宰相に…と望まれたと聞く。
でも、まだあの頃は陛下の即位に異を唱える者が多く、ラリー様を国王にと押す勢力があったため、ラリー様は政争の種になるのを厭って臣下に下ったのだ。
いつからか、ラリー様が顔に大きな傷を負い、それが原因で性格まで冷酷非情になられたとの噂が広まったけれど…それでもエリオット様がこんな風に貶めていい相手ではない。実績からすれば、エリオット様なんてラリー様の足元にも及ばないのだ。
「久しぶりだな、エリオット」
驚愕から戻ってこないエリオット様に焦れたのか、ラリー様がエリオット様に声をかけた。うん、こうして並ぶだけでも二人の格の差は歴然だ。そして、その外見も…エリオット様も美形ではあるけれど、それは上っ面だけだ。落ち着いた物腰に放つ威厳、自信に満ちた表情と、年を重ねてにじみ出る艶。どれもエリオット様にはないものだ。
「お、叔父上…?!」
「…どうかしたか?私の顔をもう忘れたか?」
「い、いえ!とんでもございませんっ!お、お久しぶりでございます」
「ああ、久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
「は、は、はいぃっ!叔父上もお変わりなく…」
「ああ、相変わらず隣国との小競り合いが治まらないが、この通り息災だ」
嫌だわ、エリオット様ったら…そんなにキョドってどうされたのかしら?いくらラリー様の放つオーラが際立っていたとしても、エリオット様は第二王子だというのに…もっとシャキッとしてくれないと国の威信にかかわるのに。
「そ、それにしても叔父上…」
「何だ?」
「そ、その…お顔は…」
「顔?」
「え、ええ。噂では、顔に酷い傷を受けられたと…」
ああ、エリオット様が驚いたのは、ラリー様のお顔のせいだったのか。確かに入場してからは他の貴族たちも同じような事を囁いていたっけ。
「いいや、そんな事実はないが?どういう訳かそんな噂がこちらでは広がっていたらしいな。まぁ、お陰で興味のない女性からの誘いが減って平和ではあったが」
「そ、そうでございますか…」
「噂を鵜呑みにする様な底が浅い女性はお断りだからな。助かったよ」
あらまぁ、ラリー様ったら、見事なまでのけん制だ。これではラリー様に突撃しようとした女性達も下手に動けないわね。だって、急に声なんかかけたら、噂を鵜呑みにしていたと白状している様なものだし。そしてさりげなく私を抱き寄せるのも勘弁して頂きたい。周りからの視線が痛すぎる…
「ああ、それからエリオット」
「は、はい、何でしょう?」
「シアとの結婚を命じたのはお前らしいな?」
「は、はひぃっ!そ、それは…」
嫌だわ、エリオット様。そんなに飛び上がらんばかりに驚かなくても…自分で命じておいて、ラリー様から何も言われないと思っていたのだろうか?
「礼を言うよ」
「は、はいっ?!」
「こんなに愛らしく有能な女性を宛がってくれたんだ。領民も喜んでくれているし、素晴らしいご令嬢を紹介してくれて助かったよ」
「は、はいっ!おお、お役に立てたなら何よりですっ」
あ~あ、完全にラリー様の完勝だ。まぁ、元から器が違ったのだけど…でも、私もエリオット様じゃなくラリー様に代わったのは本当によかった。だって、こんな残念なエリオット様じゃ、将来苦労するのは目に見えていたから。
「…は、はじめましてっ!ラリー様」
そろそろエリオット様から離れたい…そう思っていた私だったが、メイベルの声にその希望は直ぐには叶えられないのを感じた。
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読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
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