40 / 213
二章
王都へ向けて出立
しおりを挟む
王家の夜会の招待状を受け取った私達は、一週間後にヘーゼルダイン辺境伯の屋敷を出発した。
今回はラリー様も一緒という事で護衛騎士団を編成し、前回とは随分と様相が違った。ある程度余裕が必要だという事で、夜会の三週間前に出発したので、王都に着いても一週間の余裕はある。夜会に出る準備も必要だし、ラリー様は陛下と隣国の事で話し合いたい事がたくさんある様子だった。
ヘーゼルダイン辺境伯領は隣国に接する国の要所だし、交易用の街道もあって、それらへの対応は他の領地とは比べ物にならないのだ。だからラリー様が臣下に下されるときにお選びになったのだけれど。
領地ではおじ様が留守番役として留まり、隣国に目を光らせる事になった。元々おじ様のお力で領地は持ち直したから、おじ様は領民からの人気は絶大で影響力は今も健在なのだ。
それに、引退の原因になった怪我を私が治したため、おじ様ったら張り切ってしまわれて、もう一度騎士団に戻ろうか…などと仰っているのだ。さすがにお年だし…とは思うのだが、騎士団にはおじ様くらいの年の方がまだ現役でいらっしゃるから問題ないらしい。
王都への旅は馬車での移動だったから、私はラリー様と同じ馬車でたくさん話をした。行きとは違い、乗り心地のいい馬車を用意して下さったし、行程も護衛が多い分だけ余裕があった。ラリー様は身体がなまると仰って、一日の半分は馬で移動されていたけど。その間私はユーニスとお喋りを楽しみながら変わる景色を楽しんでいた。やはり騎士団に守られての移動は気分的にも楽だった。今にして思えば、前回はよく無事に辿り着けたな…と思う。
王都には、予定通り二週間で到着した。王都のヘーゼルダイン辺境伯の屋敷は王城から少し離れていたけれど、手入れの行き届いた立派な建物だった。辺境伯という特殊な環境にあるせいか、王都の屋敷も貴族的な秀麗さよりも実用性を重視されていた。
この屋敷の管理を任されているのは、イザードといい40代くらいの家令だった。ラリー様の話では、彼は元々辺境伯領の騎士団の一つを任されていたが、戦闘で負った怪我が元で引退したという。細々と気が付き、王都育ちで元は伯爵の出でもあったため、この屋敷を任せる事にしたのだと仰った。
「旦那様、セネット様、お待ちしておりました」
「久しいな、イザード、変わりないか?」
「はい、特には。でも、旦那様がいらっしゃるならお話をとキーナンが申しておりました」
「キーナンが?分かった。後で私の部屋へ」
「かしこまりました」
「さ、シアはこちらへ」
ラリー様に案内された部屋は、ラリー様の隣の部屋だった。ラリー様曰く、婚約披露パーティーの後で改修して、最近終わったばかりだという。室内は私好みの内装に変えられていて、日当たりがよく明るかった。
「あなたはもうここの女主人です。部屋も希望があれば好きなように変えて下さって構いませんよ」
「ありがとうございます。でも…そんな必要がないくらい素敵ですわ」
「気に入ってくれたならよかった」
王都に着いた後、私達は大急ぎで夜会の準備に取り掛かった。夜会用のドレスなどは辺境伯領でヘイローズが仕立てたものを持ってきたので問題ないが、それでも普段使いのドレスなどは購入しなければいけなかった。実家が当てにならない以上、ラリー様を煩わせることになって心苦しかったけれど、ラリー様は支度金があるから問題ないと仰るばかりだった。
ちなみに私の実家には、出発前に王都に向かう旨を手紙で送った。とは言え、直ぐに移動するので、返事は王都の屋敷にとも書いておいたけど返事はなかった。
まぁ、期待はしていなかったけれど、元とは言え王族に嫁ぐのに知らん顔とは、どういう了見なのだろうと私は呆れるしかなかった。ラリー様も困ったようにお笑いになるし、居たたまれなかったけど、私としてはこれで実家を気にかける理由がなくなったとも言える。元から付き合いを望んではいなかったから、ある意味私に決断をさせてくれたぶれなさに感謝しよう。
今回はラリー様も一緒という事で護衛騎士団を編成し、前回とは随分と様相が違った。ある程度余裕が必要だという事で、夜会の三週間前に出発したので、王都に着いても一週間の余裕はある。夜会に出る準備も必要だし、ラリー様は陛下と隣国の事で話し合いたい事がたくさんある様子だった。
ヘーゼルダイン辺境伯領は隣国に接する国の要所だし、交易用の街道もあって、それらへの対応は他の領地とは比べ物にならないのだ。だからラリー様が臣下に下されるときにお選びになったのだけれど。
領地ではおじ様が留守番役として留まり、隣国に目を光らせる事になった。元々おじ様のお力で領地は持ち直したから、おじ様は領民からの人気は絶大で影響力は今も健在なのだ。
それに、引退の原因になった怪我を私が治したため、おじ様ったら張り切ってしまわれて、もう一度騎士団に戻ろうか…などと仰っているのだ。さすがにお年だし…とは思うのだが、騎士団にはおじ様くらいの年の方がまだ現役でいらっしゃるから問題ないらしい。
王都への旅は馬車での移動だったから、私はラリー様と同じ馬車でたくさん話をした。行きとは違い、乗り心地のいい馬車を用意して下さったし、行程も護衛が多い分だけ余裕があった。ラリー様は身体がなまると仰って、一日の半分は馬で移動されていたけど。その間私はユーニスとお喋りを楽しみながら変わる景色を楽しんでいた。やはり騎士団に守られての移動は気分的にも楽だった。今にして思えば、前回はよく無事に辿り着けたな…と思う。
王都には、予定通り二週間で到着した。王都のヘーゼルダイン辺境伯の屋敷は王城から少し離れていたけれど、手入れの行き届いた立派な建物だった。辺境伯という特殊な環境にあるせいか、王都の屋敷も貴族的な秀麗さよりも実用性を重視されていた。
この屋敷の管理を任されているのは、イザードといい40代くらいの家令だった。ラリー様の話では、彼は元々辺境伯領の騎士団の一つを任されていたが、戦闘で負った怪我が元で引退したという。細々と気が付き、王都育ちで元は伯爵の出でもあったため、この屋敷を任せる事にしたのだと仰った。
「旦那様、セネット様、お待ちしておりました」
「久しいな、イザード、変わりないか?」
「はい、特には。でも、旦那様がいらっしゃるならお話をとキーナンが申しておりました」
「キーナンが?分かった。後で私の部屋へ」
「かしこまりました」
「さ、シアはこちらへ」
ラリー様に案内された部屋は、ラリー様の隣の部屋だった。ラリー様曰く、婚約披露パーティーの後で改修して、最近終わったばかりだという。室内は私好みの内装に変えられていて、日当たりがよく明るかった。
「あなたはもうここの女主人です。部屋も希望があれば好きなように変えて下さって構いませんよ」
「ありがとうございます。でも…そんな必要がないくらい素敵ですわ」
「気に入ってくれたならよかった」
王都に着いた後、私達は大急ぎで夜会の準備に取り掛かった。夜会用のドレスなどは辺境伯領でヘイローズが仕立てたものを持ってきたので問題ないが、それでも普段使いのドレスなどは購入しなければいけなかった。実家が当てにならない以上、ラリー様を煩わせることになって心苦しかったけれど、ラリー様は支度金があるから問題ないと仰るばかりだった。
ちなみに私の実家には、出発前に王都に向かう旨を手紙で送った。とは言え、直ぐに移動するので、返事は王都の屋敷にとも書いておいたけど返事はなかった。
まぁ、期待はしていなかったけれど、元とは言え王族に嫁ぐのに知らん顔とは、どういう了見なのだろうと私は呆れるしかなかった。ラリー様も困ったようにお笑いになるし、居たたまれなかったけど、私としてはこれで実家を気にかける理由がなくなったとも言える。元から付き合いを望んではいなかったから、ある意味私に決断をさせてくれたぶれなさに感謝しよう。
261
読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
お気に入りに追加
3,615
あなたにおすすめの小説
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
いつだって二番目。こんな自分とさよならします!
椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。
ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。
ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。
嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!?
小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。
いつも第一王女の姉が優先される日々。
そして、待ち受ける死。
――この運命、私は変えられるの?
※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる