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二章
王都へ向けて出立
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王家の夜会の招待状を受け取った私達は、一週間後にヘーゼルダイン辺境伯の屋敷を出発した。
今回はラリー様も一緒という事で護衛騎士団を編成し、前回とは随分と様相が違った。ある程度余裕が必要だという事で、夜会の三週間前に出発したので、王都に着いても一週間の余裕はある。夜会に出る準備も必要だし、ラリー様は陛下と隣国の事で話し合いたい事がたくさんある様子だった。
ヘーゼルダイン辺境伯領は隣国に接する国の要所だし、交易用の街道もあって、それらへの対応は他の領地とは比べ物にならないのだ。だからラリー様が臣下に下されるときにお選びになったのだけれど。
領地ではおじ様が留守番役として留まり、隣国に目を光らせる事になった。元々おじ様のお力で領地は持ち直したから、おじ様は領民からの人気は絶大で影響力は今も健在なのだ。
それに、引退の原因になった怪我を私が治したため、おじ様ったら張り切ってしまわれて、もう一度騎士団に戻ろうか…などと仰っているのだ。さすがにお年だし…とは思うのだが、騎士団にはおじ様くらいの年の方がまだ現役でいらっしゃるから問題ないらしい。
王都への旅は馬車での移動だったから、私はラリー様と同じ馬車でたくさん話をした。行きとは違い、乗り心地のいい馬車を用意して下さったし、行程も護衛が多い分だけ余裕があった。ラリー様は身体がなまると仰って、一日の半分は馬で移動されていたけど。その間私はユーニスとお喋りを楽しみながら変わる景色を楽しんでいた。やはり騎士団に守られての移動は気分的にも楽だった。今にして思えば、前回はよく無事に辿り着けたな…と思う。
王都には、予定通り二週間で到着した。王都のヘーゼルダイン辺境伯の屋敷は王城から少し離れていたけれど、手入れの行き届いた立派な建物だった。辺境伯という特殊な環境にあるせいか、王都の屋敷も貴族的な秀麗さよりも実用性を重視されていた。
この屋敷の管理を任されているのは、イザードといい40代くらいの家令だった。ラリー様の話では、彼は元々辺境伯領の騎士団の一つを任されていたが、戦闘で負った怪我が元で引退したという。細々と気が付き、王都育ちで元は伯爵の出でもあったため、この屋敷を任せる事にしたのだと仰った。
「旦那様、セネット様、お待ちしておりました」
「久しいな、イザード、変わりないか?」
「はい、特には。でも、旦那様がいらっしゃるならお話をとキーナンが申しておりました」
「キーナンが?分かった。後で私の部屋へ」
「かしこまりました」
「さ、シアはこちらへ」
ラリー様に案内された部屋は、ラリー様の隣の部屋だった。ラリー様曰く、婚約披露パーティーの後で改修して、最近終わったばかりだという。室内は私好みの内装に変えられていて、日当たりがよく明るかった。
「あなたはもうここの女主人です。部屋も希望があれば好きなように変えて下さって構いませんよ」
「ありがとうございます。でも…そんな必要がないくらい素敵ですわ」
「気に入ってくれたならよかった」
王都に着いた後、私達は大急ぎで夜会の準備に取り掛かった。夜会用のドレスなどは辺境伯領でヘイローズが仕立てたものを持ってきたので問題ないが、それでも普段使いのドレスなどは購入しなければいけなかった。実家が当てにならない以上、ラリー様を煩わせることになって心苦しかったけれど、ラリー様は支度金があるから問題ないと仰るばかりだった。
ちなみに私の実家には、出発前に王都に向かう旨を手紙で送った。とは言え、直ぐに移動するので、返事は王都の屋敷にとも書いておいたけど返事はなかった。
まぁ、期待はしていなかったけれど、元とは言え王族に嫁ぐのに知らん顔とは、どういう了見なのだろうと私は呆れるしかなかった。ラリー様も困ったようにお笑いになるし、居たたまれなかったけど、私としてはこれで実家を気にかける理由がなくなったとも言える。元から付き合いを望んではいなかったから、ある意味私に決断をさせてくれたぶれなさに感謝しよう。
今回はラリー様も一緒という事で護衛騎士団を編成し、前回とは随分と様相が違った。ある程度余裕が必要だという事で、夜会の三週間前に出発したので、王都に着いても一週間の余裕はある。夜会に出る準備も必要だし、ラリー様は陛下と隣国の事で話し合いたい事がたくさんある様子だった。
ヘーゼルダイン辺境伯領は隣国に接する国の要所だし、交易用の街道もあって、それらへの対応は他の領地とは比べ物にならないのだ。だからラリー様が臣下に下されるときにお選びになったのだけれど。
領地ではおじ様が留守番役として留まり、隣国に目を光らせる事になった。元々おじ様のお力で領地は持ち直したから、おじ様は領民からの人気は絶大で影響力は今も健在なのだ。
それに、引退の原因になった怪我を私が治したため、おじ様ったら張り切ってしまわれて、もう一度騎士団に戻ろうか…などと仰っているのだ。さすがにお年だし…とは思うのだが、騎士団にはおじ様くらいの年の方がまだ現役でいらっしゃるから問題ないらしい。
王都への旅は馬車での移動だったから、私はラリー様と同じ馬車でたくさん話をした。行きとは違い、乗り心地のいい馬車を用意して下さったし、行程も護衛が多い分だけ余裕があった。ラリー様は身体がなまると仰って、一日の半分は馬で移動されていたけど。その間私はユーニスとお喋りを楽しみながら変わる景色を楽しんでいた。やはり騎士団に守られての移動は気分的にも楽だった。今にして思えば、前回はよく無事に辿り着けたな…と思う。
王都には、予定通り二週間で到着した。王都のヘーゼルダイン辺境伯の屋敷は王城から少し離れていたけれど、手入れの行き届いた立派な建物だった。辺境伯という特殊な環境にあるせいか、王都の屋敷も貴族的な秀麗さよりも実用性を重視されていた。
この屋敷の管理を任されているのは、イザードといい40代くらいの家令だった。ラリー様の話では、彼は元々辺境伯領の騎士団の一つを任されていたが、戦闘で負った怪我が元で引退したという。細々と気が付き、王都育ちで元は伯爵の出でもあったため、この屋敷を任せる事にしたのだと仰った。
「旦那様、セネット様、お待ちしておりました」
「久しいな、イザード、変わりないか?」
「はい、特には。でも、旦那様がいらっしゃるならお話をとキーナンが申しておりました」
「キーナンが?分かった。後で私の部屋へ」
「かしこまりました」
「さ、シアはこちらへ」
ラリー様に案内された部屋は、ラリー様の隣の部屋だった。ラリー様曰く、婚約披露パーティーの後で改修して、最近終わったばかりだという。室内は私好みの内装に変えられていて、日当たりがよく明るかった。
「あなたはもうここの女主人です。部屋も希望があれば好きなように変えて下さって構いませんよ」
「ありがとうございます。でも…そんな必要がないくらい素敵ですわ」
「気に入ってくれたならよかった」
王都に着いた後、私達は大急ぎで夜会の準備に取り掛かった。夜会用のドレスなどは辺境伯領でヘイローズが仕立てたものを持ってきたので問題ないが、それでも普段使いのドレスなどは購入しなければいけなかった。実家が当てにならない以上、ラリー様を煩わせることになって心苦しかったけれど、ラリー様は支度金があるから問題ないと仰るばかりだった。
ちなみに私の実家には、出発前に王都に向かう旨を手紙で送った。とは言え、直ぐに移動するので、返事は王都の屋敷にとも書いておいたけど返事はなかった。
まぁ、期待はしていなかったけれど、元とは言え王族に嫁ぐのに知らん顔とは、どういう了見なのだろうと私は呆れるしかなかった。ラリー様も困ったようにお笑いになるし、居たたまれなかったけど、私としてはこれで実家を気にかける理由がなくなったとも言える。元から付き合いを望んではいなかったから、ある意味私に決断をさせてくれたぶれなさに感謝しよう。
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読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
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