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二章
王家からの招待状
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婚約破棄から約四か月、婚約披露パーティーから二か月が過ぎた、
あの後、ラリー様たちと話し合って、私たちの結婚式は半年後に決まり、王家にもそのように報告を上げて承認された。
既にウエディングドレスや会場、招待客の手配は済んで、あとは式を待つばかりだ。ウエディングドレスは、婚約披露パーティーでドレスを作ってくれたヘイローズが制作中だ。
ラリー様との関係は…悪くはない、と思う。ギルおじ様に、一日に一度は一緒にお茶を…と言われて、最近では毎日のように同じ時間を過ごしている。最初はぎこちなかったけれど、今は気を張らずに会話が出来るようになったと思う。
でも…恋人と言う感じではないのは確かだ。まぁ、年も16歳差と私の倍くらいのお年だから、恋人と言うよりは年の離れた兄妹といった感じだろう。貴族間では親子ほど年が離れた夫婦も珍しくないけど、私としてはラリー様に恋愛感情なんて持てる日が来るのだろうか…と言うのが正直な気持ちだ。
そして私の初恋の方であるギルおじ様はというと、二人の邪魔になってはいけないからと、婚約披露パーティーの後ご自身の別邸に帰っていかれてしまった。おじ様なりの気遣いなのだとはわかっているのだけれど…寂しい。
そんな私は寂しさを埋めるように、騎士たちの治療を始めたのだけれど…どうやら私の力は思った以上に強かったらしい…最初は一人一人治療していたのだけれど、一度試しに数人を治療したら全員の傷を治してしまったのだ。結局、その日は治療院にいた全員の怪我を治してしまった。
それで次の時には、その場にいた三十人程をまとめて治療したら、こちらも全員を治してしまい、一度に複数の治療が可能な事が分かってしまった。
また、未亡人対策の方も、最初は教会との間がぎくしゃくしたが、少しずつだが改善策が考えられるくらいには進んでいた。個人個人の要望などもあるし、雇う側の事情もあって、改善策は山のようにある。他国ではどうなっているのか気になるが、さすがにそれを知る手立てがないから、自分達で頑張るしかなさそうだ。でも、これが成功すればこの領地は格段に豊かになる筈だ。
ラリー様は交易をもっと盛んにして、この地を一大交易都市にし、他国から攻められないくらいの力を付けたいと仰っていた。交易が盛んになれば隣国も潤うし、逆に戦争する方がデメリットになる。そうなれば、この地での戦争が起きる可能性は限りなく減るのではないか。そうなれば領民が傷つく事もなくなるだろう…と。
こんな感じで私はこの辺境伯領で、予想以上に充実した日々を送っていたのだけど…
「夜会、ですか?」
ラリー様が私に見せてくれたのは、王宮で開かれる夜会の招待状だった。日程は一か月後だ。王都とこの地の移動は馬車で二週間、結婚式は四か月後だから、まぁ、行って帰ってきても特に問題はないだろう。実際今は社交シーズンで、夜会や舞踏会が開かれている。ラリー様は隣国との小競り合いを理由に、滅多に王都には行かれないし、行っても夜会などに出る事もない。隣国の事を陛下に報告し、今後の対応をどうするか話し合うためで、用事が終わればすぐに戻ってしまうのだ。
だから私も、エリオット様の婚約者として夜会などには出ていても、ラリー様にお会いする事がなかったのだ。ラリー様は言い寄ってくる令嬢たちが苦手だったうえ、実際にここ数年は隣国との関係は緊迫していて余裕がなかったのだろう。私との結婚もエリオット様が思い付きで言い出したもので、そうでなければまだ独身でいらしたと思う。
「今までほとんど出ていなかったのですが…今回はシアも一緒に…と」
「私と?まだ婚約中ですのに?」
「そうです。この手の招待は、婚姻後にと思っていましたが…」
「ええ、私もですわ…」
ラリー様がその麗しいお顔に苦笑を浮かべながら仰ったけれど…私も同感だった。エリオット様の命令と陛下達に思惑付きの勅命で結婚する事になったが、夜会などの招待は婚姻してからだとばかり思っていた。というか、結婚報告のために一度は王都に行かなきゃいけないんだろうな…くらいの認識だったのだ。王子から婚約破棄された令嬢の扱いなんてそんなものだろう。
「どうします?行きたくないなら断っても…」
「でも…」
「こちらの事は心配ありません。隣国とは年内の停戦を約束していますし、これから冬に向かえば戦闘も難しくなる。今ここを離れても不都合はないでしょう。それに…義父上もいらっしゃいますしね」
「…そうですか。では…」
あまり気が乗りませんが、王家からの招待をそう無下にも出来ない。私達は王家主催の夜会に出るため、王都に向かう事になった。
あの後、ラリー様たちと話し合って、私たちの結婚式は半年後に決まり、王家にもそのように報告を上げて承認された。
既にウエディングドレスや会場、招待客の手配は済んで、あとは式を待つばかりだ。ウエディングドレスは、婚約披露パーティーでドレスを作ってくれたヘイローズが制作中だ。
ラリー様との関係は…悪くはない、と思う。ギルおじ様に、一日に一度は一緒にお茶を…と言われて、最近では毎日のように同じ時間を過ごしている。最初はぎこちなかったけれど、今は気を張らずに会話が出来るようになったと思う。
でも…恋人と言う感じではないのは確かだ。まぁ、年も16歳差と私の倍くらいのお年だから、恋人と言うよりは年の離れた兄妹といった感じだろう。貴族間では親子ほど年が離れた夫婦も珍しくないけど、私としてはラリー様に恋愛感情なんて持てる日が来るのだろうか…と言うのが正直な気持ちだ。
そして私の初恋の方であるギルおじ様はというと、二人の邪魔になってはいけないからと、婚約披露パーティーの後ご自身の別邸に帰っていかれてしまった。おじ様なりの気遣いなのだとはわかっているのだけれど…寂しい。
そんな私は寂しさを埋めるように、騎士たちの治療を始めたのだけれど…どうやら私の力は思った以上に強かったらしい…最初は一人一人治療していたのだけれど、一度試しに数人を治療したら全員の傷を治してしまったのだ。結局、その日は治療院にいた全員の怪我を治してしまった。
それで次の時には、その場にいた三十人程をまとめて治療したら、こちらも全員を治してしまい、一度に複数の治療が可能な事が分かってしまった。
また、未亡人対策の方も、最初は教会との間がぎくしゃくしたが、少しずつだが改善策が考えられるくらいには進んでいた。個人個人の要望などもあるし、雇う側の事情もあって、改善策は山のようにある。他国ではどうなっているのか気になるが、さすがにそれを知る手立てがないから、自分達で頑張るしかなさそうだ。でも、これが成功すればこの領地は格段に豊かになる筈だ。
ラリー様は交易をもっと盛んにして、この地を一大交易都市にし、他国から攻められないくらいの力を付けたいと仰っていた。交易が盛んになれば隣国も潤うし、逆に戦争する方がデメリットになる。そうなれば、この地での戦争が起きる可能性は限りなく減るのではないか。そうなれば領民が傷つく事もなくなるだろう…と。
こんな感じで私はこの辺境伯領で、予想以上に充実した日々を送っていたのだけど…
「夜会、ですか?」
ラリー様が私に見せてくれたのは、王宮で開かれる夜会の招待状だった。日程は一か月後だ。王都とこの地の移動は馬車で二週間、結婚式は四か月後だから、まぁ、行って帰ってきても特に問題はないだろう。実際今は社交シーズンで、夜会や舞踏会が開かれている。ラリー様は隣国との小競り合いを理由に、滅多に王都には行かれないし、行っても夜会などに出る事もない。隣国の事を陛下に報告し、今後の対応をどうするか話し合うためで、用事が終わればすぐに戻ってしまうのだ。
だから私も、エリオット様の婚約者として夜会などには出ていても、ラリー様にお会いする事がなかったのだ。ラリー様は言い寄ってくる令嬢たちが苦手だったうえ、実際にここ数年は隣国との関係は緊迫していて余裕がなかったのだろう。私との結婚もエリオット様が思い付きで言い出したもので、そうでなければまだ独身でいらしたと思う。
「今までほとんど出ていなかったのですが…今回はシアも一緒に…と」
「私と?まだ婚約中ですのに?」
「そうです。この手の招待は、婚姻後にと思っていましたが…」
「ええ、私もですわ…」
ラリー様がその麗しいお顔に苦笑を浮かべながら仰ったけれど…私も同感だった。エリオット様の命令と陛下達に思惑付きの勅命で結婚する事になったが、夜会などの招待は婚姻してからだとばかり思っていた。というか、結婚報告のために一度は王都に行かなきゃいけないんだろうな…くらいの認識だったのだ。王子から婚約破棄された令嬢の扱いなんてそんなものだろう。
「どうします?行きたくないなら断っても…」
「でも…」
「こちらの事は心配ありません。隣国とは年内の停戦を約束していますし、これから冬に向かえば戦闘も難しくなる。今ここを離れても不都合はないでしょう。それに…義父上もいらっしゃいますしね」
「…そうですか。では…」
あまり気が乗りませんが、王家からの招待をそう無下にも出来ない。私達は王家主催の夜会に出るため、王都に向かう事になった。
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読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
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