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一章
王子妃教育なんてやりたくない
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「メイベル様、また間違えていますよ」
今日何度目の叱咤だろう…私は今日もまた、朝から王宮で王子妃教育を受けていた。
お姉様を追い出してエリオット様の婚約者に内定したのはよかったけれど…あれから私の生活は一変してしまった。朝から晩まで王子妃教育、家に帰れば出来なかった分の課題…もう、寝る時間以外は勉強漬けの生活だ。最近では進みが遅いからと、エリオット様とのお茶の時間すらも奪われてしまった…お陰でより一層やる気が出ない。
それに、講師たちも意地悪で大っ嫌いだ。いう事が難しくて何を言っているかわからないし、わからないから尋ねると、みんな一様に驚くのよね。それって失礼じゃない?
しかも二言目にはアレクシア様は…ってお姉様と比較して。お姉様は子供の頃からエリオット様の婚約者と決められていて、ずっとその為の勉強をしていたのだから、出来て当然じゃない。私はこの家を継ぐから、淑女教育だって無理にしなくていいってお父様もお母様も仰っていたわ。だから出来てなくても仕方ないのに…お姉様は地味で可愛くもないから、私みたいにパーティーやお茶会に誘われなかったから、仕方なく勉強していたのに…
でも、講師にそう言ってやったら、またしても呆れたように私を見るのよ。どういう事よ?全く、失礼にも程があるわ!腹が立ったから、王妃様に告げ口してやったのに、王妃様まで同様にため息を付かれるし…王妃様、厳しいって噂だったけど、あれは意地悪って意味だったのね。でも、表立ってそんな事言えないから、厳しいって言葉で誤魔化していたんだわ。
でも…今日もエリオット様にお会いしたけど、結局は勉強を頑張りなさい、って言うだけ。私がどんなに我慢して勉強しているのか全く分かってくれていない。以前は何をしても許してくれたし、優しかったのに…せっかくお会いしたのだもの、以前のように二人でお茶でも…って誘ってくれなかったし。
はぁ…エリオット様を射止めてお姉様を追い出したけど…王族って、思ったよりも大変だし、疲れるのね…正直、もう面倒くさいし、エリオット様も優しくしてくれないから、他の人でもいいかな、って思っちゃうわ。
だって、王子妃教育がダメになった場合、エリオット様は王族から追放されて、与えられるのは伯爵位だって噂もあるのよ?伯爵位じゃ、私の家よりも家格が下、なのよね…確かに王子妃は国のトップだし、私の上になるのは、王妃様と王太子様のお妃様だけになるけど…こんなに勉強が大変ならもういいかな、って思っちゃう…
第一、エリオット様もいけないのよ?私が王子妃になっても、何もしなくていい、メイベルは俺の隣で笑っていてくれれば十分だって言っていたのに。こんな、王子妃教育の話なんてしていなかったじゃない。こんなの、詐欺だわ。
「メイベル様、どうかしたの?」
エリオット様と別れて、仕方なく教室に戻る途中、私は声をかけられた。
「まぁ、ジェローム様」
相手はエリオット様とも仲のいい、メイシー侯爵家のジェローム様だった。私と同じ歳で、とても頭がよくて優秀な方だ。栗色の髪と深緑の髪はありふれているけど、容姿は整っていて正に美少年って感じ。よくエリオット様も交えて一緒に遊んだ仲間だ。
「エリオット様に会いに行ったのですけれど…お忙しいと言われてしまって…」
「…そうですか。それは残念でしたね」
「ええ、でも、仕方ありませんわ…エリオット様もお忙しい方ですし…」
「そうですね。…では、私とお茶など如何ですか?」
「え?よろしいのですの?」
「ええ、構いませんよ。お可愛らしいメイベル様がそんな風に打ちしおれているのに、放ってなどおけません」
そう言ってジェローム様は優しく微笑まれた。そうよ、エリオット様だって、本当はこうあるべきなのよ。久しぶりにかけられた優しい言葉に、私はようやく気持ちが上向くのを感じた。
今日何度目の叱咤だろう…私は今日もまた、朝から王宮で王子妃教育を受けていた。
お姉様を追い出してエリオット様の婚約者に内定したのはよかったけれど…あれから私の生活は一変してしまった。朝から晩まで王子妃教育、家に帰れば出来なかった分の課題…もう、寝る時間以外は勉強漬けの生活だ。最近では進みが遅いからと、エリオット様とのお茶の時間すらも奪われてしまった…お陰でより一層やる気が出ない。
それに、講師たちも意地悪で大っ嫌いだ。いう事が難しくて何を言っているかわからないし、わからないから尋ねると、みんな一様に驚くのよね。それって失礼じゃない?
しかも二言目にはアレクシア様は…ってお姉様と比較して。お姉様は子供の頃からエリオット様の婚約者と決められていて、ずっとその為の勉強をしていたのだから、出来て当然じゃない。私はこの家を継ぐから、淑女教育だって無理にしなくていいってお父様もお母様も仰っていたわ。だから出来てなくても仕方ないのに…お姉様は地味で可愛くもないから、私みたいにパーティーやお茶会に誘われなかったから、仕方なく勉強していたのに…
でも、講師にそう言ってやったら、またしても呆れたように私を見るのよ。どういう事よ?全く、失礼にも程があるわ!腹が立ったから、王妃様に告げ口してやったのに、王妃様まで同様にため息を付かれるし…王妃様、厳しいって噂だったけど、あれは意地悪って意味だったのね。でも、表立ってそんな事言えないから、厳しいって言葉で誤魔化していたんだわ。
でも…今日もエリオット様にお会いしたけど、結局は勉強を頑張りなさい、って言うだけ。私がどんなに我慢して勉強しているのか全く分かってくれていない。以前は何をしても許してくれたし、優しかったのに…せっかくお会いしたのだもの、以前のように二人でお茶でも…って誘ってくれなかったし。
はぁ…エリオット様を射止めてお姉様を追い出したけど…王族って、思ったよりも大変だし、疲れるのね…正直、もう面倒くさいし、エリオット様も優しくしてくれないから、他の人でもいいかな、って思っちゃうわ。
だって、王子妃教育がダメになった場合、エリオット様は王族から追放されて、与えられるのは伯爵位だって噂もあるのよ?伯爵位じゃ、私の家よりも家格が下、なのよね…確かに王子妃は国のトップだし、私の上になるのは、王妃様と王太子様のお妃様だけになるけど…こんなに勉強が大変ならもういいかな、って思っちゃう…
第一、エリオット様もいけないのよ?私が王子妃になっても、何もしなくていい、メイベルは俺の隣で笑っていてくれれば十分だって言っていたのに。こんな、王子妃教育の話なんてしていなかったじゃない。こんなの、詐欺だわ。
「メイベル様、どうかしたの?」
エリオット様と別れて、仕方なく教室に戻る途中、私は声をかけられた。
「まぁ、ジェローム様」
相手はエリオット様とも仲のいい、メイシー侯爵家のジェローム様だった。私と同じ歳で、とても頭がよくて優秀な方だ。栗色の髪と深緑の髪はありふれているけど、容姿は整っていて正に美少年って感じ。よくエリオット様も交えて一緒に遊んだ仲間だ。
「エリオット様に会いに行ったのですけれど…お忙しいと言われてしまって…」
「…そうですか。それは残念でしたね」
「ええ、でも、仕方ありませんわ…エリオット様もお忙しい方ですし…」
「そうですね。…では、私とお茶など如何ですか?」
「え?よろしいのですの?」
「ええ、構いませんよ。お可愛らしいメイベル様がそんな風に打ちしおれているのに、放ってなどおけません」
そう言ってジェローム様は優しく微笑まれた。そうよ、エリオット様だって、本当はこうあるべきなのよ。久しぶりにかけられた優しい言葉に、私はようやく気持ちが上向くのを感じた。
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読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
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