【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です

灰銀猫

文字の大きさ
上 下
36 / 213
一章

動き出した事業

しおりを挟む
 モリスン男爵を治療してからの私は、騎士の治療を進めながら、領内の孤児たちの問題に手を付けた。これは王都でも私がずっとやって来た慈善活動の一環だったのだけれど…王都よりも田舎で、隣国との戦闘が絶えない辺境伯領では、孤児の問題は予想以上に深刻だった。
 と言うのも、戦闘で亡くなった騎士たちの子供達の数が、私の想像を大きく超えていたからだ。しかも、子供達が小さいからと満足に働けない未亡人が多く、それがより一層貧困に拍車をかけていたのだ。

「ラリー様、騎士たちは治療して社会に復帰させるとして…亡くなった騎士の妻子はどうされています?」
「ん?一応恩給を支給してはいるが…十分とは言い難いのが現状だな…」
「そうですが…では…」

 私はラリー様に、一つの提案をした。それは、未亡人に仕事を与え、その職場へ子連れで出勤させるというものだった。これは最近他国で始まった制度で、私も聞きかじりで詳しい事は知らないが、最初にこの話を聞いた時には我が国でもぜひ取り入れたいと思っていたのだ。

 聞いた話では、その制度は裁縫や料理、売り子など様々な仕事で行われているという。未亡人たちは子供達を連れて出勤して、子どもを預けてからそれぞれの職場に向かうらしい。
 子供達は一つの場所に集められて、そこで文字の読み書きや簡単な計算、国のルールなどを教わるのだという。しかもお昼には、簡単なものとはいえ食事が与えられるのだ。
 未亡人としては子供を預けられて勉強させて貰え、しかもお昼ご飯も食べさせて貰えるとあって、大層人気らしい。未だに平民は文字の読み書きが出来ない者が多いので、親としては最低限の読み書きだけでも…と思うし、子供の世話をしなくても済むため、家で細々と内職するよりも格段に捗り、収入も増えるという。

「しかし…子どもをたくさん連れてこられても…居場所作りが…」
「それでしたら、教会などはどうでしょう?元から人がたくさん集まるように出来ていますし」
「しかし…教会が受け入れてくれるか…」
「それでは子どもをたくさん受け入れた教会には、その分協力金としてお布施を上乗せしては?」
「そうですね、あと、多くの教会は人手不足だと聞きます。それなら草むしりや掃除などを出来る範囲で子供達にお手伝いして貰えば?」
「…なるほど…」

 私の提案に、意外にもメイナードやモリスン夫人が案を出してくれた。

「教会としても人が集まれば布教になります。食事を作るのも集めた子供達に手伝わせれば、親としても子供が料理を覚えるのでメリットがあります。教会もお昼ご飯を領主が準備するとなれば助かるのではないでしょうか?」
「そうですね。子供達が掃除のやり方や食事の作り方を覚えれば、自分の家でも役に立つでしょうし、将来働きに出る時にも役立つでしょう」
「試しに、どこかの教会に協力をお願いして、実際にやってみては如何でしょうか?それで問題点も見えてくるでしょうし、うまくいったらその方法で広げて行けばやりやすいでしょう」

 こうして、騎士たちへの治療と、未亡人とその子供たちへの対策はスタートした。
 騎士たちの治療については、ラリー様は実力があって隊をまとめていた幹部クラスの復帰を願っていたため、そちらから治療を始める事にした。当然だが、出来る人の方がこなせる仕事量が違うのだ。慢性的な人材不足のこの地では、やはり効率性を重視するしかなかった。
 また、未亡人対策としては、メイナードの提案通り、教会の助けを借りる事にした。ただ、大きな教会は資金面で困っていないようで、提案に難色を示したらしい。
 そこで、資金面で厳しい状況の小規模の教会の協力を仰ぐことにした。そういった教会の方が協力を仰ぎやすく、市民との距離も近くいため、やりたい事を試しやすいだろうというのもあった。また、小規模な教会は資金稼ぎのために、刺繍や小物作りなどをして売っているという。子供達が刺繍や小物作りを出来るようになれば、互いにメリットがあるだろう。
しおりを挟む
読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
感想 167

あなたにおすすめの小説

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

いつだって二番目。こんな自分とさよならします!

椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。 ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。 ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。 嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。  そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!? 小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。 いつも第一王女の姉が優先される日々。 そして、待ち受ける死。 ――この運命、私は変えられるの? ※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです) hotランキング1位入りしました。ありがとうございます

処理中です...