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一章
婚約披露パーティー
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婚約披露のパーティーが開かれる日がやって来た。私も昨日からマッサージだ、爪の手入れだ何だと、身体を磨き上げるために朝から大忙しだったが、当日もそれは変わらなかった。パーティーが始まるまでに、私はドレスや宝飾品で飾られ、髪を結いあげて化粧もされて、完全に別人に仕立て上げられた。うん、化粧も盛りに盛られて、鏡に映る私はもう別人だ…
「まぁ、アレクシア様!お綺麗に出来ましたわ!」
「本当に、ここまで映えるとは思いませんでした!」
ユーニスとヘイローズ、ヘイローズが連れてきた侍女たちが、私を囲って大騒ぎだった。今日の私のドレスはハイネックとパフリース、ふんわりと広がるスカートと言う形だった。私くらいの娘がよく着る形で、トップが鮮やかな青で、スカートの下に行くほどに青銀に変わる綺麗なグラデーションで、金と濃紫の刺繍がアクセントになっていた。色合いは鮮やかだけど生地は光沢を抑えたシックな素材のせいか下品にはならず、むしろ気品があって王都でもこれだけの品はあまりお目にかかれないだろう。スカートもよくよく見ると、微妙に色合いが違う透け感のある生地が重なって青銀色になっていた。
アクセサリーもドレスに合わせ、ゴールドの地にラリー様の瞳の色と同じ青玉をメインに添え、その周りを小さな紫玉が彩っていた。どこから見てもラリー様の色だ。まぁ、婚約披露のパーティーだから当然なのだけれど。
「ああ、綺麗に出来ましたね」
にこやかに入ってきたのはラリー様だった。こちらは私の髪色の青銀色をベースにして、襟などには鮮やかな青を刺し色にして、金と濃紫の刺繍が施されていた。アクセサリーはシルバーの地に濃紫があしらわれている。互いの色を纏って、二人並べばこれはもうペアとしか言いようがない。
いつもは無造作に後ろで一つ結びにされている髪も、今日は綺麗に後ろに撫でつけられて飾り紐で結われていて、綺麗な青い瞳が一層鮮やかに見えた。背が高くて姿勢もよろしいから、男神が舞い降りたような美麗さだ。これほどに麗しい殿方は王都でもみた事がないわ。さすがの私も見とれてしまったが、これは仕方がないだろう。
「えっと…何か?」
暫くラリー様に見とれてしまったけれど、そんな私をラリー様がじっと見ていたため、私は見過ぎて気を悪くさせてしまったかと思って焦った。うん、まじまじと見るなんてマナー違反だ。あまりにもお美しい上に王族のせいか気品と風格もおありさから、つい呑まれてしまうわ。
「いえ…シアがあまりに愛らしいので…」
「は?」
「いつも飾らずにいらしたから気が付きませんでしたが…こうして着飾ると春の妖精のようですよ。失敗しました…もう少し衣装なども増やしましょう。あんなに地味な格好ではシアの魅力が半減してしまう」
「は、ぁ…?」
何だか恥ずかしい事を言われているようですが…褒められて…いるのだろうか?王都にいた時は、地味だ、花がないと貶められるばかりで褒められた事がなかったから、この状況がイマイチ消化出来ない。これは…もしかして褒め殺しなのだろうか…私は呆気に取られ、またラリー様の真意がわからず何も言えなかった。
「もう、アレクシア様。辺境伯様は褒めて下さっているのですよ」
「え?そうなの?」
「シア…今の言葉のどこにそれ以外のものが…?」
「だって…王都ではそんな風に言われた事がなかったので…その…褒め殺しかと?」
そう言った私に、ラリー様だけでなくユーニスやデザイナー達も頭を抱えてしまった。そんなにおかしい事を言っただろうか…
「ヘイローズ。明日にでもシアの普段使いのドレスなどを手配してくれ。ああ、アクセサリーなどもセットで」
「畏まりました。お任せください!」
「他にも、シアの身の回りを整える侍女を増やそう」
「ら、ラリー様、さすがにそこまでは…」
「いや、前から思っていたが、シアに付ける侍女が少なすぎるだろう」
「でも…今でも十分に間に合っていますし…」
「いいや、足りな過ぎる。心配するな、私が信用できる者を付けるから」
そう言われてしまえば、それ以上は否とは言えなかった。スザンナが采配した者ではなく、ラリー様が信用されている者なら大丈夫だろか。私が周りに人を付けないのは、単に危害を加えられないためと、まだ誰が信用出来るかわからないからなのだけど。とは言え、今は一人でも味方は増やしたいし、ラリー様と歩み寄るためにも申し出を素直に受けるしかなかった。
「まぁ、アレクシア様!お綺麗に出来ましたわ!」
「本当に、ここまで映えるとは思いませんでした!」
ユーニスとヘイローズ、ヘイローズが連れてきた侍女たちが、私を囲って大騒ぎだった。今日の私のドレスはハイネックとパフリース、ふんわりと広がるスカートと言う形だった。私くらいの娘がよく着る形で、トップが鮮やかな青で、スカートの下に行くほどに青銀に変わる綺麗なグラデーションで、金と濃紫の刺繍がアクセントになっていた。色合いは鮮やかだけど生地は光沢を抑えたシックな素材のせいか下品にはならず、むしろ気品があって王都でもこれだけの品はあまりお目にかかれないだろう。スカートもよくよく見ると、微妙に色合いが違う透け感のある生地が重なって青銀色になっていた。
アクセサリーもドレスに合わせ、ゴールドの地にラリー様の瞳の色と同じ青玉をメインに添え、その周りを小さな紫玉が彩っていた。どこから見てもラリー様の色だ。まぁ、婚約披露のパーティーだから当然なのだけれど。
「ああ、綺麗に出来ましたね」
にこやかに入ってきたのはラリー様だった。こちらは私の髪色の青銀色をベースにして、襟などには鮮やかな青を刺し色にして、金と濃紫の刺繍が施されていた。アクセサリーはシルバーの地に濃紫があしらわれている。互いの色を纏って、二人並べばこれはもうペアとしか言いようがない。
いつもは無造作に後ろで一つ結びにされている髪も、今日は綺麗に後ろに撫でつけられて飾り紐で結われていて、綺麗な青い瞳が一層鮮やかに見えた。背が高くて姿勢もよろしいから、男神が舞い降りたような美麗さだ。これほどに麗しい殿方は王都でもみた事がないわ。さすがの私も見とれてしまったが、これは仕方がないだろう。
「えっと…何か?」
暫くラリー様に見とれてしまったけれど、そんな私をラリー様がじっと見ていたため、私は見過ぎて気を悪くさせてしまったかと思って焦った。うん、まじまじと見るなんてマナー違反だ。あまりにもお美しい上に王族のせいか気品と風格もおありさから、つい呑まれてしまうわ。
「いえ…シアがあまりに愛らしいので…」
「は?」
「いつも飾らずにいらしたから気が付きませんでしたが…こうして着飾ると春の妖精のようですよ。失敗しました…もう少し衣装なども増やしましょう。あんなに地味な格好ではシアの魅力が半減してしまう」
「は、ぁ…?」
何だか恥ずかしい事を言われているようですが…褒められて…いるのだろうか?王都にいた時は、地味だ、花がないと貶められるばかりで褒められた事がなかったから、この状況がイマイチ消化出来ない。これは…もしかして褒め殺しなのだろうか…私は呆気に取られ、またラリー様の真意がわからず何も言えなかった。
「もう、アレクシア様。辺境伯様は褒めて下さっているのですよ」
「え?そうなの?」
「シア…今の言葉のどこにそれ以外のものが…?」
「だって…王都ではそんな風に言われた事がなかったので…その…褒め殺しかと?」
そう言った私に、ラリー様だけでなくユーニスやデザイナー達も頭を抱えてしまった。そんなにおかしい事を言っただろうか…
「ヘイローズ。明日にでもシアの普段使いのドレスなどを手配してくれ。ああ、アクセサリーなどもセットで」
「畏まりました。お任せください!」
「他にも、シアの身の回りを整える侍女を増やそう」
「ら、ラリー様、さすがにそこまでは…」
「いや、前から思っていたが、シアに付ける侍女が少なすぎるだろう」
「でも…今でも十分に間に合っていますし…」
「いいや、足りな過ぎる。心配するな、私が信用できる者を付けるから」
そう言われてしまえば、それ以上は否とは言えなかった。スザンナが采配した者ではなく、ラリー様が信用されている者なら大丈夫だろか。私が周りに人を付けないのは、単に危害を加えられないためと、まだ誰が信用出来るかわからないからなのだけど。とは言え、今は一人でも味方は増やしたいし、ラリー様と歩み寄るためにも申し出を素直に受けるしかなかった。
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読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
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