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婚姻を急ぐ?好都合です
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あのクラウス王子がマイヤー侯爵領の魔獣退治に向かったのは、それから一月後でした。どうなる事かと思っていましたが、意外にも問題なく終わったそうです。というのも…
「どうやら殿下が向かう前に、マイヤー侯爵が秘密裏に魔獣退治を行ったそうです」
ウィルバート様からそんな話が飛び出してビックリしてしまいました。でも、情報源はリートミュラー家の騎士たちなので、ほぼ間違いはないだろうとの事。
「一体どういうことですの?」
「殿下に恥をかかせられないのと、マイヤー侯爵領が危険だと思われたくなかったのでしょう。もし何かあれば婚約破棄されるかも…と考えたのかもしれませんね」
ウィルバート様の話によると、マイヤー侯爵は損得勘定が強くてがめつい方なので、もしクラウス王子との婚約がなくなっては大損だと、先に魔獣狩りをしたそうです。その上で弱い魔獣だけを残して、クラウス王子の手柄にしたのだとか…
「そんなの…いずれバレるでしょうに…」
「そうは思うのですが、確実に婿になるまでは、とお考えなのでしょう。殿下を逃したら次の婚約は絶望的ですからね」
「確かに…」
そう、あれだけ派手にやらかしたマイヤー侯爵令嬢です。クラウス王子を逃したら、次の婿は簡単には見つからないでしょう。貴族は契約を重要視するので、彼らの婚約破棄は貴族社会では強い反感を買いましたから。しかも令嬢は十九歳とそれなりにいいお年です。いくら顔がよくても二度も婚約がなくなれば、さすがに男性側も尻込みするでしょうね。
「今回の成功で気をよくした殿下は、早々に婚姻したいと仰っているとか」
「まぁ。でも、まだ婚約して三月しか経っていないのに、ですか?」
「ええ。式はドレスの準備などがあるから、入籍だけでも先にと」
「まぁ。そんなに慌てるなんて…どうして…」
「さぁ、そこまでは…」
さすがにその理由まではわからなかった私達ですが…
「あら、噂じゃ子供が出来たら困るから籍だけでも先にって話よ?」
そう教えてくれたのはお母様でした。今日は仲のいいご婦人方とのお茶会に行かれたのですが、そこであの二人の事が話題になったそうです。何でもこらえ性のない殿下が早くと急かしているそうです。何を…とはさすがに言えませんが、そういうことだそうです。恥の上塗りでしかないのですが、盛り上がっているお二人は気にならないようですわね。
(でも、そうなればウィルバート様の呪いも解けるわね)
予定では半年以上は先だと思っていましたが…どうやら前倒しになりそうな気がします。これは好都合ですわ。早めに手を打っておいた方がよさそうですわね。
という訳で、それから五日後、私はウィルバート様を屋敷にお招きして、とあるお方をお待ちしていました。
「アルーシャ様、今日はどうされたのです?」
「クラウス王子達が早めに籍だけでも入れると騒いでいるそうなので、解呪の準備をと思いまして」
「なるほど。確かにそうですね」
「ええ。ただ、私が解呪したらあの方々は私が呪いをかけたと言いそうでしょう?」
「ええ、まぁ…そこが不安要素なので…」
「その為、力強い助っ人をお願いしましたの」
今日ウィルバート様に来ていただいたのは、とある方に協力をお願いするためです。ウィルバート様の呪いを解いた場合、その呪いはマイヤー侯爵令嬢に向かいます。そうなると私達が悪者にされる可能性が高いのですよね。それを防ぐには、第三者の協力が必要だと思い立ったのです。
「助っ人、ですか?」
「ええ」
そう答える間にも、その方が我が家にいらっしゃったのを感じました。この強い魔力は…
「ああ、待たせたな、アリー」
「ギルベルトおじ様、お待ちしておりましたわ」
短く切り揃えられた黒髪に、険しくも凛々しい煌めく紅の瞳を持つその方は、私が秘かにお呼びしたお父様のご友人で、この国の筆頭魔術師でもあるギルベルト=ファ―べルグ公爵でした。
「どうやら殿下が向かう前に、マイヤー侯爵が秘密裏に魔獣退治を行ったそうです」
ウィルバート様からそんな話が飛び出してビックリしてしまいました。でも、情報源はリートミュラー家の騎士たちなので、ほぼ間違いはないだろうとの事。
「一体どういうことですの?」
「殿下に恥をかかせられないのと、マイヤー侯爵領が危険だと思われたくなかったのでしょう。もし何かあれば婚約破棄されるかも…と考えたのかもしれませんね」
ウィルバート様の話によると、マイヤー侯爵は損得勘定が強くてがめつい方なので、もしクラウス王子との婚約がなくなっては大損だと、先に魔獣狩りをしたそうです。その上で弱い魔獣だけを残して、クラウス王子の手柄にしたのだとか…
「そんなの…いずれバレるでしょうに…」
「そうは思うのですが、確実に婿になるまでは、とお考えなのでしょう。殿下を逃したら次の婚約は絶望的ですからね」
「確かに…」
そう、あれだけ派手にやらかしたマイヤー侯爵令嬢です。クラウス王子を逃したら、次の婿は簡単には見つからないでしょう。貴族は契約を重要視するので、彼らの婚約破棄は貴族社会では強い反感を買いましたから。しかも令嬢は十九歳とそれなりにいいお年です。いくら顔がよくても二度も婚約がなくなれば、さすがに男性側も尻込みするでしょうね。
「今回の成功で気をよくした殿下は、早々に婚姻したいと仰っているとか」
「まぁ。でも、まだ婚約して三月しか経っていないのに、ですか?」
「ええ。式はドレスの準備などがあるから、入籍だけでも先にと」
「まぁ。そんなに慌てるなんて…どうして…」
「さぁ、そこまでは…」
さすがにその理由まではわからなかった私達ですが…
「あら、噂じゃ子供が出来たら困るから籍だけでも先にって話よ?」
そう教えてくれたのはお母様でした。今日は仲のいいご婦人方とのお茶会に行かれたのですが、そこであの二人の事が話題になったそうです。何でもこらえ性のない殿下が早くと急かしているそうです。何を…とはさすがに言えませんが、そういうことだそうです。恥の上塗りでしかないのですが、盛り上がっているお二人は気にならないようですわね。
(でも、そうなればウィルバート様の呪いも解けるわね)
予定では半年以上は先だと思っていましたが…どうやら前倒しになりそうな気がします。これは好都合ですわ。早めに手を打っておいた方がよさそうですわね。
という訳で、それから五日後、私はウィルバート様を屋敷にお招きして、とあるお方をお待ちしていました。
「アルーシャ様、今日はどうされたのです?」
「クラウス王子達が早めに籍だけでも入れると騒いでいるそうなので、解呪の準備をと思いまして」
「なるほど。確かにそうですね」
「ええ。ただ、私が解呪したらあの方々は私が呪いをかけたと言いそうでしょう?」
「ええ、まぁ…そこが不安要素なので…」
「その為、力強い助っ人をお願いしましたの」
今日ウィルバート様に来ていただいたのは、とある方に協力をお願いするためです。ウィルバート様の呪いを解いた場合、その呪いはマイヤー侯爵令嬢に向かいます。そうなると私達が悪者にされる可能性が高いのですよね。それを防ぐには、第三者の協力が必要だと思い立ったのです。
「助っ人、ですか?」
「ええ」
そう答える間にも、その方が我が家にいらっしゃったのを感じました。この強い魔力は…
「ああ、待たせたな、アリー」
「ギルベルトおじ様、お待ちしておりましたわ」
短く切り揃えられた黒髪に、険しくも凛々しい煌めく紅の瞳を持つその方は、私が秘かにお呼びしたお父様のご友人で、この国の筆頭魔術師でもあるギルベルト=ファ―べルグ公爵でした。
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