15 / 27
私達の婚約披露
しおりを挟む
義務感満載で参加したクラウス王子とマイヤー侯爵令嬢の婚約披露の夜会から十日後。今度は私とウィルバート様の婚約披露のパーティーを我が家で行いました。今日は親しい方を招いての事なので、この前の夜会に比べて気が楽です。
今日の私とウィルバート様の衣裳は、我が家の色の水色のドレスです。これは彼が婿に入るからで、妻でも婿でも迎える側の色を纏うのが一般的です。
私は水色に青と金の刺繍が施されたマーメイドラインのドレス、ウィルバート様も同じ色の正装になりました。婚約の際は特にお揃い感を出すのが今の流行りなので、この婚約を私達が受け入れていると周りに示すためにも必要なのです。そうでないと…横槍を入れようとする方が出てくる可能性があるので、その牽制ですわ。
「…このドレスもよくお似合いですね…お美しいです…」
「そ、そうですか? あ、ありがとうございます」
もう! この方ったらどうしてこうも恥ずかしい台詞をさらっと口にされるのでしょうか。褒め慣れていないせいかドキッとしてしまいましたわ。慣れてくるとこのもちもちした肉団子のようなお顔も、何だか可愛く見えてくるから不思議ですわ。いえ、決してデブ専ではありませんわよ?
お父様が会の開会を宣言した後、私達の婚約とウィルバート様が我が家の専属魔術師になったことが発表されました。私達の婚約は皆様ご存じでしたが、専属魔術師の件は驚きで迎えられました。専属魔術師を手に入れるのはどこの家も悲願ですが、ただでさえ魔術の力が大きい我が家が専属魔術師を得た意味は非常に大きいです。我が家とリートミュラー家と関係が深い家にとっては、一層の安心材料になるでしょうね。
「アルーシャ様、おめでとうございます」
「ゲルスター公爵令嬢、いい婿を見つけられたな」
「まぁ、ケビン様にイルーゼ様、ありがとうございます」
最初に声を掛けて来られたのは、キルンベルガー公爵家に嫁いだ親友のイルーゼ様と、その夫のケビン様でした。お二人は一年前に結婚された大変仲のいいご夫婦で、幸せな結婚をなさった彼女は未婚のご令嬢の羨望の的なのです。私も是非彼女にあやかりたいですわ。
そんなイルーゼ様は艶やかな黒髪に新緑の瞳を持つ、小柄で愛らしい顔立ちで、マイヤー侯爵令嬢よりもずっと美少女といえるでしょう。そんな彼女は騎士の家系のグレーデル公爵家の生まれで、自ら剣を手に魔獣討伐の最前線に立つ武闘派でもあります。そのギャップをケビン様は溺愛していらっしゃるのですよね。
「リートミュラー辺境伯令息の事は噂で伺っておりますわ。大変優秀な魔術師だと」
「いえ、その様な…」
「私達の間では謙遜は不要ですわ。私とアルーシャ様は親友ですもの。ね? アルーシャ様」
「ええ、そうですわ。ウィルバート様もこれからは一緒に過ごす事も増えますわ。ですから気楽になさって下さい」
「わ、わかりました」
そうはいっても相手が公爵家ではウィルバート様も気遣いでしょうね。ここはゆっくり慣れていって頂きたいですわ。でも、お二人は堅苦しいことを嫌うとても気安い方々なので、きっと大丈夫でしょう。
「ウィルバート様の魔獣討伐の鮮やかな魔術のお話は伺っていますわ」
「ええ、大変優秀だとか」
「是非一度、そのお話を伺いたいですわ」
さすがは武闘派のイルーゼ様、見た目に反して話の内容が魔獣に向かうのはいつもの事ですが、さすがにウィルバート様は戸惑っていらっしゃるようですわね。
「ウィルバート様、イルーゼ様はご自身も魔獣討伐の前線に立たれるのですよ」
「そうなのですか?」
「ええ。彼女は剣を使っての魔術が得意なのです」
「剣を使って…」
「ええ。ですから是非、魔術の造詣が深いリートミュラー様のご意見も伺いたいのです」
相変わらず魔獣退治がお好きですのね、イルーゼ様。彼女は魔獣の中でも特に強いAクラスの魔獣肉が大好物で、趣味と実益を兼ねているのです。その愛らしい外見からは想像もつきませんが、剣を振るって戦うイルーゼ様は惚れ惚れする程お美しいのです。
その後も仲のいいご令嬢や我が家の傘下にいるご令嬢たちに囲まれました。皆様、ウィルバート様の噂をご存じのためか私が嫌々婿に迎えると思われていたようですが、私が彼を誉めるので皆様の彼への視線も会が終わる頃には随分と柔らかくなりましたわ。
彼にはこれから魔獣退治をお願いする事になるでしょう。彼の機嫌を損ねればどうなるか、もお話しておきましたし。それに、公爵家のイルーゼ様達が好意的だったのもあり、お披露目としては中々にいい感じで終わりましたわ。
今日の私とウィルバート様の衣裳は、我が家の色の水色のドレスです。これは彼が婿に入るからで、妻でも婿でも迎える側の色を纏うのが一般的です。
私は水色に青と金の刺繍が施されたマーメイドラインのドレス、ウィルバート様も同じ色の正装になりました。婚約の際は特にお揃い感を出すのが今の流行りなので、この婚約を私達が受け入れていると周りに示すためにも必要なのです。そうでないと…横槍を入れようとする方が出てくる可能性があるので、その牽制ですわ。
「…このドレスもよくお似合いですね…お美しいです…」
「そ、そうですか? あ、ありがとうございます」
もう! この方ったらどうしてこうも恥ずかしい台詞をさらっと口にされるのでしょうか。褒め慣れていないせいかドキッとしてしまいましたわ。慣れてくるとこのもちもちした肉団子のようなお顔も、何だか可愛く見えてくるから不思議ですわ。いえ、決してデブ専ではありませんわよ?
お父様が会の開会を宣言した後、私達の婚約とウィルバート様が我が家の専属魔術師になったことが発表されました。私達の婚約は皆様ご存じでしたが、専属魔術師の件は驚きで迎えられました。専属魔術師を手に入れるのはどこの家も悲願ですが、ただでさえ魔術の力が大きい我が家が専属魔術師を得た意味は非常に大きいです。我が家とリートミュラー家と関係が深い家にとっては、一層の安心材料になるでしょうね。
「アルーシャ様、おめでとうございます」
「ゲルスター公爵令嬢、いい婿を見つけられたな」
「まぁ、ケビン様にイルーゼ様、ありがとうございます」
最初に声を掛けて来られたのは、キルンベルガー公爵家に嫁いだ親友のイルーゼ様と、その夫のケビン様でした。お二人は一年前に結婚された大変仲のいいご夫婦で、幸せな結婚をなさった彼女は未婚のご令嬢の羨望の的なのです。私も是非彼女にあやかりたいですわ。
そんなイルーゼ様は艶やかな黒髪に新緑の瞳を持つ、小柄で愛らしい顔立ちで、マイヤー侯爵令嬢よりもずっと美少女といえるでしょう。そんな彼女は騎士の家系のグレーデル公爵家の生まれで、自ら剣を手に魔獣討伐の最前線に立つ武闘派でもあります。そのギャップをケビン様は溺愛していらっしゃるのですよね。
「リートミュラー辺境伯令息の事は噂で伺っておりますわ。大変優秀な魔術師だと」
「いえ、その様な…」
「私達の間では謙遜は不要ですわ。私とアルーシャ様は親友ですもの。ね? アルーシャ様」
「ええ、そうですわ。ウィルバート様もこれからは一緒に過ごす事も増えますわ。ですから気楽になさって下さい」
「わ、わかりました」
そうはいっても相手が公爵家ではウィルバート様も気遣いでしょうね。ここはゆっくり慣れていって頂きたいですわ。でも、お二人は堅苦しいことを嫌うとても気安い方々なので、きっと大丈夫でしょう。
「ウィルバート様の魔獣討伐の鮮やかな魔術のお話は伺っていますわ」
「ええ、大変優秀だとか」
「是非一度、そのお話を伺いたいですわ」
さすがは武闘派のイルーゼ様、見た目に反して話の内容が魔獣に向かうのはいつもの事ですが、さすがにウィルバート様は戸惑っていらっしゃるようですわね。
「ウィルバート様、イルーゼ様はご自身も魔獣討伐の前線に立たれるのですよ」
「そうなのですか?」
「ええ。彼女は剣を使っての魔術が得意なのです」
「剣を使って…」
「ええ。ですから是非、魔術の造詣が深いリートミュラー様のご意見も伺いたいのです」
相変わらず魔獣退治がお好きですのね、イルーゼ様。彼女は魔獣の中でも特に強いAクラスの魔獣肉が大好物で、趣味と実益を兼ねているのです。その愛らしい外見からは想像もつきませんが、剣を振るって戦うイルーゼ様は惚れ惚れする程お美しいのです。
その後も仲のいいご令嬢や我が家の傘下にいるご令嬢たちに囲まれました。皆様、ウィルバート様の噂をご存じのためか私が嫌々婿に迎えると思われていたようですが、私が彼を誉めるので皆様の彼への視線も会が終わる頃には随分と柔らかくなりましたわ。
彼にはこれから魔獣退治をお願いする事になるでしょう。彼の機嫌を損ねればどうなるか、もお話しておきましたし。それに、公爵家のイルーゼ様達が好意的だったのもあり、お披露目としては中々にいい感じで終わりましたわ。
122
お気に入りに追加
1,664
あなたにおすすめの小説
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
辺境伯令息の婚約者に任命されました
風見ゆうみ
恋愛
家が貧乏だからという理由で、男爵令嬢である私、クレア・レッドバーンズは婚約者であるムートー子爵の家に、子供の頃から居候させてもらっていた。私の婚約者であるガレッド様は、ある晩、一人の女性を連れ帰り、私との婚約を破棄し、自分は彼女と結婚するなどとふざけた事を言い出した。遊び呆けている彼の仕事を全てかわりにやっていたのは私なのにだ。
婚約破棄され、家を追い出されてしまった私の前に現れたのは、ジュード辺境伯家の次男のイーサンだった。
ガレッド様が連れ帰ってきた女性は彼の元婚約者だという事がわかり、私を気の毒に思ってくれた彼は、私を彼の家に招き入れてくれることになって……。
※筆者が考えた異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。クズがいますので、ご注意下さい。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
[完結連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ/ちゃんこまめ・エブリスタ投
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう
楽歩
恋愛
白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳のシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢。
きらびやかに彩られた学院の大広間で、別の女性をエスコートして現れたセドリック王太子殿下に婚約破棄を宣言された。
傍若無人なふるまい、大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、王太子が心惹かれる男爵令嬢には嫌がらせをする。令嬢の有責で婚約破棄、国外追放、除籍…まさにその宣告が下されようとした瞬間。
「心当たりはありますが、本当にご理解いただけているか…答え合わせいたしません?」
令嬢との答え合わせに、青ざめ愕然としていく王太子、男爵令嬢、側近達など…
周りに搾取され続け、大事にされなかった令嬢の答え合わせにより、皆の終わりが始まる。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる