12 / 86
横暴な先輩と頼れる上司
しおりを挟む
オリアーヌが言い出したミオット室長の独身疑惑は、私の中ではまさかの思いが強すぎて信じられそうになかった。上位貴族の当主が三十過ぎても独身だなんて、よほどの事情がなければあり得ない。周りから結婚しろと迫られるのは明白だ。室長はあの通り穏やかな性格だから断り切れないだろうし。
そんなことを思いながら出勤した。昨日は休みだったから今日は仕事がそれなりに溜まっているだろう。そう思うと気が重いけれど、職場に行けばお会い出来ると思えばそんな空気は霧散する。
「おい! なんで勝手に休んでるんだ!」
挨拶をしながら部屋に入った途端、そんな怒号が飛んできた。何事かと室内を見渡せば、ブルレック様が鬼の形相で睨んでいた。何だろう。休み前に出した書類に不備があっただろうか。でも、確認を取ったからそれはないはず。
「いきなり何のことでしょう? 室長に許可を頂いていますが?」
「はぁ? 何で俺に言わねぇんだよ!!」
ブルレック様の許可は必要ないのに、何故か唾が飛ぶ勢いでまくしたてられた。
「先週から休むとお話していますわ。予定表にも、ほら、あのように書かれていますし」
そう言って壁にある今月の全員の予定表を指さす。王子妃の公務は休みなしだし、王宮に勤める者は大抵そうだ。だから交代で休みを取る。毎月室長が勤務の予定表を作り、問題なければその通りに休む。急に休みが必要な場合は室長にお願いして調整して貰う。だから文句を言われる謂れはないのだけど……
「だ、だからって、休みなら前の日に言えよな! 黙って休まれたら迷惑だろうが!」
「そうは言われましても……」
何だというのだ。今までだって事前に言ったことなどないのに。
「何だよ! 先輩に向かって逆らう気か!! 大体、何で仕事が終わっていないのに休んでるんだ! 一昨日頼んだ書類、出来ていなかっただろうが!!」
「一昨日の、書類? ああ、前回の公務に使った経費のものですね」
「そうだ! どうして仕事が終わっていないのに休みを取った?」
何のことかと記憶を探った。そういえば一件、お昼前にやっておけと言われて渡された書類があった。でも、あれは……
「それは……」
「私がいいと言ったからだよ」
私の言葉に別の声が被さった。
「し、室長!?」
穏やかで朗々と響くその声は、ミオット室長のものだった。その後ろにはカバネル様の姿も見えた。
「ミオット室長、カバネル様、おはようございます」
「ああ、シャリエ嬢、おはよう」
「シャリエ嬢、おはよう。昨日はお休みで寂しかったよ~」
相変わらず軽いノリのカバネル様の一言で、部屋の空気の刺々しさが随分薄れた気がした。
「室長、あの、これは……」
「ブルレック君、あの書類は君に頼んだものだろう?」
「え、あ、そ、それは……その! そうです、その女がやると! やらせて欲しいと言ったんです!!」
その女呼ばわりもどうかと思うけれど、指さすのも止めて欲しい。こんな品のない方がどうしてここにいるのか不思議だ。
「そうなのか? シャリエ嬢?」
室長が気遣うような視線を向けてきた。その目が大丈夫だと言ってくれているような気がするのは気のせいだろうか。
「いえ、私からはそのようなことは何も言っておりません。あの日は次回の地方公務の予算書の作成で手一杯でしたから。それが終わっても明日が期限の公務の予定表作りがあります。他の仕事に手を上げる余裕はさすがに……」
「な! お、お前っ!!」
ブルレック様は憤って立ち上がろうとしたけれど、室長たちの姿に上げた腰をすぐに戻した。
「ブルレック君、あれは君にと頼んだよね? シャリエ嬢は急ぎの案件をやっているからと。それは君だけでなくここにいる全員が聞いていた話だ」
ブルレック様が眉間に皴を刻みながら俯いた。知らなかったわけじゃないけど、忘れていたのだろう。
「それに、君はあの日の午後、どこに行っていた?」
「……え?」
急に話が変わったことに理解が付いていかなかったのか、ブルレック様が室長を見上げた。その表情からは怒りが消え、今は戸惑いが支配していた。
「あの日の午後、君は退勤時間までずっと不在だったね。どこに行っていたの?」
その一言に大きく目を開いて、次に私を睨みつけた。
「シャリエ嬢からは何も聞いていないよ。私はルイーズ様から教えて頂いたんだよ。孤児院の慰問の帰り道、街中で君を見かけたとね」
「……あ、あれは……」
あの日は終日、室長とカバネル様は会議で不在だったから、気付かれていないと思っていたらしい。でもルイーズ様の証言では文句が言える筈もない。
「どうして職務中に街にいたんだい? 君の仕事で街へ出るような用事は何もないし、外出届も出ていなかったよね」
「あ、そ……」
「詳しく話を聞かせて貰おうか」
だから一緒に来てくれるかな。室長がそう言うとブルレック様はふらふらと力ない足取りでその後を突いていった。
「あ~あ、これであいつも終わりだなぁ。左遷で済めばいいけど」
カバネル様がその背を見送りながらそう言った。確かにあの日、ブルレック様は午後からいなかった。私は忙しくて気にしている余裕もなく、てっきり午後からは休みだと思っていたくらいだ。
「シャリエ嬢、不快な思いをさせてすまなかったね」
暫くして室長が戻って来て謝罪されてしまった。聞けばあの書類はブルレック様に自分でやるようにと重ねて頼んでいたそうだ。
「いえ、室長のせいではありませんから」
「そうは言うけど、彼を増長させたのは私にも原因があるからね。二度とあんなことがないようにするから、これからも頼むよ」
「はい、勿論です」
室長にそう言われて、心が軽くなった。ブルレック様のことでは随分嫌な思いをしたからだ。二度とあんな横暴な態度をとられないのならそれで十分だ。そう思っていたのだけど、ブルレック様の姿をこの部屋で見ることは二度となかった。
そんなことを思いながら出勤した。昨日は休みだったから今日は仕事がそれなりに溜まっているだろう。そう思うと気が重いけれど、職場に行けばお会い出来ると思えばそんな空気は霧散する。
「おい! なんで勝手に休んでるんだ!」
挨拶をしながら部屋に入った途端、そんな怒号が飛んできた。何事かと室内を見渡せば、ブルレック様が鬼の形相で睨んでいた。何だろう。休み前に出した書類に不備があっただろうか。でも、確認を取ったからそれはないはず。
「いきなり何のことでしょう? 室長に許可を頂いていますが?」
「はぁ? 何で俺に言わねぇんだよ!!」
ブルレック様の許可は必要ないのに、何故か唾が飛ぶ勢いでまくしたてられた。
「先週から休むとお話していますわ。予定表にも、ほら、あのように書かれていますし」
そう言って壁にある今月の全員の予定表を指さす。王子妃の公務は休みなしだし、王宮に勤める者は大抵そうだ。だから交代で休みを取る。毎月室長が勤務の予定表を作り、問題なければその通りに休む。急に休みが必要な場合は室長にお願いして調整して貰う。だから文句を言われる謂れはないのだけど……
「だ、だからって、休みなら前の日に言えよな! 黙って休まれたら迷惑だろうが!」
「そうは言われましても……」
何だというのだ。今までだって事前に言ったことなどないのに。
「何だよ! 先輩に向かって逆らう気か!! 大体、何で仕事が終わっていないのに休んでるんだ! 一昨日頼んだ書類、出来ていなかっただろうが!!」
「一昨日の、書類? ああ、前回の公務に使った経費のものですね」
「そうだ! どうして仕事が終わっていないのに休みを取った?」
何のことかと記憶を探った。そういえば一件、お昼前にやっておけと言われて渡された書類があった。でも、あれは……
「それは……」
「私がいいと言ったからだよ」
私の言葉に別の声が被さった。
「し、室長!?」
穏やかで朗々と響くその声は、ミオット室長のものだった。その後ろにはカバネル様の姿も見えた。
「ミオット室長、カバネル様、おはようございます」
「ああ、シャリエ嬢、おはよう」
「シャリエ嬢、おはよう。昨日はお休みで寂しかったよ~」
相変わらず軽いノリのカバネル様の一言で、部屋の空気の刺々しさが随分薄れた気がした。
「室長、あの、これは……」
「ブルレック君、あの書類は君に頼んだものだろう?」
「え、あ、そ、それは……その! そうです、その女がやると! やらせて欲しいと言ったんです!!」
その女呼ばわりもどうかと思うけれど、指さすのも止めて欲しい。こんな品のない方がどうしてここにいるのか不思議だ。
「そうなのか? シャリエ嬢?」
室長が気遣うような視線を向けてきた。その目が大丈夫だと言ってくれているような気がするのは気のせいだろうか。
「いえ、私からはそのようなことは何も言っておりません。あの日は次回の地方公務の予算書の作成で手一杯でしたから。それが終わっても明日が期限の公務の予定表作りがあります。他の仕事に手を上げる余裕はさすがに……」
「な! お、お前っ!!」
ブルレック様は憤って立ち上がろうとしたけれど、室長たちの姿に上げた腰をすぐに戻した。
「ブルレック君、あれは君にと頼んだよね? シャリエ嬢は急ぎの案件をやっているからと。それは君だけでなくここにいる全員が聞いていた話だ」
ブルレック様が眉間に皴を刻みながら俯いた。知らなかったわけじゃないけど、忘れていたのだろう。
「それに、君はあの日の午後、どこに行っていた?」
「……え?」
急に話が変わったことに理解が付いていかなかったのか、ブルレック様が室長を見上げた。その表情からは怒りが消え、今は戸惑いが支配していた。
「あの日の午後、君は退勤時間までずっと不在だったね。どこに行っていたの?」
その一言に大きく目を開いて、次に私を睨みつけた。
「シャリエ嬢からは何も聞いていないよ。私はルイーズ様から教えて頂いたんだよ。孤児院の慰問の帰り道、街中で君を見かけたとね」
「……あ、あれは……」
あの日は終日、室長とカバネル様は会議で不在だったから、気付かれていないと思っていたらしい。でもルイーズ様の証言では文句が言える筈もない。
「どうして職務中に街にいたんだい? 君の仕事で街へ出るような用事は何もないし、外出届も出ていなかったよね」
「あ、そ……」
「詳しく話を聞かせて貰おうか」
だから一緒に来てくれるかな。室長がそう言うとブルレック様はふらふらと力ない足取りでその後を突いていった。
「あ~あ、これであいつも終わりだなぁ。左遷で済めばいいけど」
カバネル様がその背を見送りながらそう言った。確かにあの日、ブルレック様は午後からいなかった。私は忙しくて気にしている余裕もなく、てっきり午後からは休みだと思っていたくらいだ。
「シャリエ嬢、不快な思いをさせてすまなかったね」
暫くして室長が戻って来て謝罪されてしまった。聞けばあの書類はブルレック様に自分でやるようにと重ねて頼んでいたそうだ。
「いえ、室長のせいではありませんから」
「そうは言うけど、彼を増長させたのは私にも原因があるからね。二度とあんなことがないようにするから、これからも頼むよ」
「はい、勿論です」
室長にそう言われて、心が軽くなった。ブルレック様のことでは随分嫌な思いをしたからだ。二度とあんな横暴な態度をとられないのならそれで十分だ。そう思っていたのだけど、ブルレック様の姿をこの部屋で見ることは二度となかった。
426
お気に入りに追加
5,240
あなたにおすすめの小説
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。

隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~
夏笆(なつは)
恋愛
ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。
ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。
『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』
可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。
更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。
『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』
『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』
夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。
それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。
そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。
期間は一年。
厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。
つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。
この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。
あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。
小説家になろうでも、掲載しています。
Hotランキング1位、ありがとうございます。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる