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王宮にて
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翌日、気が重いまま出勤した。父は本気だ。今はミレーヌのことで頭がいっぱいだけど、それが片付いたら私の婚約者を決めようと動き出すだろう。ミレーヌの侯爵家への嫁入りが絶望的になったから、その代わりに私に少しでも高い家格の家に嫁がせる気だ。
(全く、小心なくせに野心だけはあるんだから……)
外に出てわかったのは、父の器の小ささだった。家では気に入らないとすぐに怒鳴り散らすから怖いと思っていたけれど、勤めに出てみればそれも自信のなさの裏返しだとわかった。それからは怒鳴られても気にならないけれど、家長という立場は絶対だ。父が嫁げと命じれば断ることは出来ない。
(ルイーズ様に取り成して貰うことも出来るけど……)
王族が貴族の家の問題に口を出すのはタブーとされる。お家乗っ取りを疑われるからだ。私がいなくなると執務が滞るとかの理由で、退職を先延ばしするのが精一杯だろう。でもそんな負担をおかけしたくない。
「おい!」
「え? あ、申し訳ございません」
どうやらぼんやりしていて呼ばれているのに気付かなかったらしい。相手は同じ部屋の先輩のブルレック伯爵令息だ。私より三つ上。次男だから継ぐ爵位がなく、文官として勤めている。
「全く、ぼ~っとするな。これだから女は」
そう言うとブルレック様は乱雑に書類を置いて、今日中にやっておけと言って部屋を出て行った。相変わらず粗雑な方だ。
「やれやれ、ぼ~っとしているのはどっちだって言うんだろうね」
ブルレック様とすれ違いで部屋に入ってきたのは、一番最年長のカバネル様だった。最年長とは言ってもミオット室長より少し上なだけ。以前は監査局にいたとかで、書類全般に詳しい。
「そんな風に言ったらまた怒り出しますよ」
「俺にはな~んにも言えんよ。全く、自分よりの弱い者にしか強く言えないなんて、情けないよねぇ」
ブルレック様は何かと私に張り合ってくる。家の家格が近く、彼より年下が私しかいないからだ。それに、彼にとっては女性が仕事をするのは許し難いらしい。女は家で大人しく刺繍でもしていろと考えるタイプだ。お陰で侍女の間では人気がない。本人は気付いていないけれど、ルイーズ様からの評価も低かった。
「ふふ、カバネル様が庇って下さるから大丈夫ですわ」
「ああ、いくらでも頼りにしてくれていいよ」
人懐っこい顔立ちのカバネル様は笑うと余計に若く見える。それが侍女たちから可愛いと評判だ。年上の男性を可愛いと感じるとは思わなかったけれど、目が大きくて童顔なのもあるだろう。口調は軽いけど、知識が豊富で仕事は出来て頼りになる。
もう一人のムーシェ様は侯爵家の三男だけど子爵位をお持ちだ。年は室長より少し下で、寡黙で殆ど声を聞いたことがない。身体が大きくて騎士のようだけど、お優しい気性だとカバネル様は言っていた。実際、この二年で声を荒げるのを聞いたことがない。
「ブルレックよりシャリエ嬢が仕事は出来る。困ったことがあったら私かミオットにすぐに言うんだよ」
「ありがとうございます」
仕事の出来を誉められるのは嬉しい。そしてもしもの時は有難く頼らせて貰おう。その前にそんなことにならないことを祈りたい。
「ルドン伯爵令息が復縁を願っているのですって?」
数日後、ルイーズ様の元に書類を届けに行くと、フィルマン様のことがすっかり広まっていた。こうなるのが嫌だからさっさと引いて欲しかったのに。配慮が足りないのは隣国に行っても変わりがなかった。
「ええ、ですがもう二年以上も前の話です。さすがに今更復縁など……父もあり得ないと言っていますし」
父が断言しているから今のところは安心だ。でも、噂になるのは勘弁してほしい。誰かに聞かれて誤解されるのは困し、それが原因で父の考えが変わる可能性がないとは言い切れない。
「そうよね。でも……まだ二年前のことなのね。もう十年くらい経った気分だわ」
「私も同じです」
あれから二年余り。ルイーズ様は一年前にルイ様の卒業を待って結婚されて、仲の良さは国外にも広まっている。初恋を叶えた一途な王子は優秀で、しっかり王太子である兄王子を支えていらっしゃる。王族に残ったのがルイ様でよかったと貴族の間でも好評だ。
一方のアラール様は、卒業半年してからフルール様と婚姻し、王都から少し距離のある伯爵領を得た。慣れない伯爵家の当主業に今も苦労なさっていると聞く。一年ほどはフルール様と夜会に出て来られたけれど、最近はお二人とも姿を見ない。慣れない地方暮らしでフルール様は体調を崩し、療養中だとか。アラール様もフルール様を案じて領地を離れないと言われている。
「男性は不思議よね。自分が振った相手がその後も自分を想っていると思っているのだから」
「そのような殿方もいらっしゃいますわね」
侍女がすかさず相槌を打ち、周りにいる侍女も頷いていた。
「アラール様もそうだったのよ。今になって私が間違っていたなんて言ってきて」
「ええっ!?」
あのアラール様がそんなことを? 今はフルール様の療養に付き添って、領地にいらっしゃったのではなかったのか。
「この前の夜会でね、そんなことを言われて困ってしまったわ。直ぐにルイ様が来てくれて遠ざけて下さったからよかったけれど」
ルイーズ様を溺愛し、男性を威嚇してことごとく遠ざけているルイ様らしい。その光景が目に浮かんだ。それにしても、アラール様の行動は直ぐには信じられなかった。あんなに真実の愛だと仰っていたのに……
「ジゼルが独身だから、ルドン伯爵令息は勘違いしたのかしら。気を付けてね」
「はい」
あれだけ室長に言われたのだ。もう何かを言ってくることはない、と思いたい。
「それにしても……ジゼルは誰かいいなと思う相手はいないの?」
「そ、それは……」
「ジゼルは優秀だから公爵家の夫人だって務められるわ。誰かいいなと思う人がいたら教えてね。力になるわ」
「あ、ありがとうございます」
急にそんな風に言われて動揺してしまった。そんな風に言って下さるのは嬉しいのだけど、相手があることだから簡単ではない。それに貴族に生まれたからには、想いだけで決められる筈もないのだ。
(全く、小心なくせに野心だけはあるんだから……)
外に出てわかったのは、父の器の小ささだった。家では気に入らないとすぐに怒鳴り散らすから怖いと思っていたけれど、勤めに出てみればそれも自信のなさの裏返しだとわかった。それからは怒鳴られても気にならないけれど、家長という立場は絶対だ。父が嫁げと命じれば断ることは出来ない。
(ルイーズ様に取り成して貰うことも出来るけど……)
王族が貴族の家の問題に口を出すのはタブーとされる。お家乗っ取りを疑われるからだ。私がいなくなると執務が滞るとかの理由で、退職を先延ばしするのが精一杯だろう。でもそんな負担をおかけしたくない。
「おい!」
「え? あ、申し訳ございません」
どうやらぼんやりしていて呼ばれているのに気付かなかったらしい。相手は同じ部屋の先輩のブルレック伯爵令息だ。私より三つ上。次男だから継ぐ爵位がなく、文官として勤めている。
「全く、ぼ~っとするな。これだから女は」
そう言うとブルレック様は乱雑に書類を置いて、今日中にやっておけと言って部屋を出て行った。相変わらず粗雑な方だ。
「やれやれ、ぼ~っとしているのはどっちだって言うんだろうね」
ブルレック様とすれ違いで部屋に入ってきたのは、一番最年長のカバネル様だった。最年長とは言ってもミオット室長より少し上なだけ。以前は監査局にいたとかで、書類全般に詳しい。
「そんな風に言ったらまた怒り出しますよ」
「俺にはな~んにも言えんよ。全く、自分よりの弱い者にしか強く言えないなんて、情けないよねぇ」
ブルレック様は何かと私に張り合ってくる。家の家格が近く、彼より年下が私しかいないからだ。それに、彼にとっては女性が仕事をするのは許し難いらしい。女は家で大人しく刺繍でもしていろと考えるタイプだ。お陰で侍女の間では人気がない。本人は気付いていないけれど、ルイーズ様からの評価も低かった。
「ふふ、カバネル様が庇って下さるから大丈夫ですわ」
「ああ、いくらでも頼りにしてくれていいよ」
人懐っこい顔立ちのカバネル様は笑うと余計に若く見える。それが侍女たちから可愛いと評判だ。年上の男性を可愛いと感じるとは思わなかったけれど、目が大きくて童顔なのもあるだろう。口調は軽いけど、知識が豊富で仕事は出来て頼りになる。
もう一人のムーシェ様は侯爵家の三男だけど子爵位をお持ちだ。年は室長より少し下で、寡黙で殆ど声を聞いたことがない。身体が大きくて騎士のようだけど、お優しい気性だとカバネル様は言っていた。実際、この二年で声を荒げるのを聞いたことがない。
「ブルレックよりシャリエ嬢が仕事は出来る。困ったことがあったら私かミオットにすぐに言うんだよ」
「ありがとうございます」
仕事の出来を誉められるのは嬉しい。そしてもしもの時は有難く頼らせて貰おう。その前にそんなことにならないことを祈りたい。
「ルドン伯爵令息が復縁を願っているのですって?」
数日後、ルイーズ様の元に書類を届けに行くと、フィルマン様のことがすっかり広まっていた。こうなるのが嫌だからさっさと引いて欲しかったのに。配慮が足りないのは隣国に行っても変わりがなかった。
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「ジゼルが独身だから、ルドン伯爵令息は勘違いしたのかしら。気を付けてね」
「はい」
あれだけ室長に言われたのだ。もう何かを言ってくることはない、と思いたい。
「それにしても……ジゼルは誰かいいなと思う相手はいないの?」
「そ、それは……」
「ジゼルは優秀だから公爵家の夫人だって務められるわ。誰かいいなと思う人がいたら教えてね。力になるわ」
「あ、ありがとうございます」
急にそんな風に言われて動揺してしまった。そんな風に言って下さるのは嬉しいのだけど、相手があることだから簡単ではない。それに貴族に生まれたからには、想いだけで決められる筈もないのだ。
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