『完結』孤児で平民の私を嫌う王子が異世界から聖女を召還しましたが…何故か私が溺愛されています?

灰銀猫

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変化しすぎです…

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 パチリ、と音が出そうな勢いで私は目を覚ましました。こんなにすっきりと目が覚めたのは初めてかも…そう思うくらいに一気に覚醒した、そんな目覚めでした。

「ルネ、目が覚めた?」
「レリア、ルド、ルネが目を覚ましたわ!」

 そんな私に声をかけたのは…セレン様と子犬形態のリアさんでした。リアさんのもふもふの尻尾がゆらゆらと揺れて、思わず手を伸ばしたくなります。じゃなくて…

「えっと?」

 何がどうなっているのでしょうか?深く眠り過ぎたせいなのか、一気に目が覚めたせいなのか、まだ頭が動かずぼ~っとしています。最後の記憶を辿ろうとして…私は一気に羞恥の洪水におぼれそうになりました。そ、そういえば、私…

「ルネったら初夜の後に熱を出したのよ。もうびっくりしたわ!」
「ああ、本当に心配したよ」

 リアさんとセレン様にそういわれて初めて、私は自分が熱を出したのだと知りましたが…そんな記憶がありません。ええと、あれから何が起きたのでしょうか?そして今は何日なのでしょう…

「結婚式から三日目だよ。ルネは一日半、熱を出して目を覚まさなかったんだ」
「一日半も…」

 その割にはすっきり目が覚めましたが、あの深い眠りは熱のせいだった、のですね。あれから気を失うように眠った私でしたが、熱が出たなんて、そんなに体調が悪かったでしょうか…リアさんの声にレリアとルドさんもやってきて、目が覚めてよかったと喜ばれてしまいました。皆さんに随分心配をかけていたみたいです。
 気になる事は多々ありますが、セレン様がまずは着替えと軽い食事をした方がいいと仰り、レリアが作ってくれたスープを頂いた後で湯あみをしました。神殿では物心つく前からずっと、日に一度は身を清めるのが習慣化していたので、二日もしなかったとなると落ち着かなかったからです。ですが…

「…えええぇっ?!!」

 湯あみをしようと寝室に備え付けの浴室に入り、服を脱いだ私はしかし…鏡に映る自分の身体と対峙した途端、思わず大きな声を出してしまいました。何となく目覚めた時から違和感があったのですが、服を脱いだ途端、それがはっきりしたのです。

(な、何で…?)

 そうです、鏡の中の自分は、これまでの自分とは似ても似つかない、とっても豊かな胸を持っていたのです。これが驚かずにいられましょうか…!これは…私が見ている都合のいい夢でしょうか…それとも、この鏡は何かの仕掛けがあって、自分の理想と言いますが、願望が現れるのでしょうか…鏡に映る自分は、出るところが出て、引っ込むところが引っ込んでいる、まさにボンキュッポンの夢の体型。胸などこれまでの三倍、いえ、四倍はあるでしょうか…そして肌の上にある赤い痕は…一体…

「ルネ?!どうした?!」

 私の叫び声に反応したのか、飛び込んできたのはセレン様でした。そ、そう言えば部屋で私を待っていてくれたのですが…

「き、ゃぁああ!!!」

 突然のセレン様の乱入に、私はその場に蹲るしか出来ませんでした。いくら初夜を迎えてセレン様の妻になったとはいえ、身体を重ねたばかりの私には、裸を見られることへの免疫がまだ出来ていなかったからです。




「それでは…これはセレン様と、その、夫婦になった影響、で…」
「うん、そうだよ」
「…だそうだ」

 あれから何とか湯あみを終え、私は今、下着の上にバスローブを羽織った状態でセレン様の膝の上にいます。バスローブなのは、これまで着ていた服が全く入らなくなったせいです。レリアの物を…と思ったのですが、こちらもサイズが合わず…仕方なしにです。下着も実を言えばかなりキツキツだったりします。
 それにしてもこの体制、おかしくないかと思うのですが、セレン様は可愛い妻に触れたいのは夫の性だと譲りません。このままでは話が進まないと、私は折れるしかありませんでした。子犬形態とはいえリアさんがいるので、恥ずかしい事この上ないのですが…そのリアさんは私が恥ずかしがっているのを不思議そうに見ていました。聖獣なので、感覚が違うみたいですね。
 あの初夜の後、私は熱を出して寝込んでしまって、今日まで目を覚まさなかったそうです。その割には今日目覚めた私はとてもすっきり爽快、身体の隅々にまで聖力が行き渡っている感じがして、とっても元気です。

「ルネとセレンは身体を繋げた事で、これまでとは比べ物にならないほどに魔力交換が進んだんよ」
「でも…これまでもキスで…」
「確かにあれでも魔力交換は出来たわ。でも、質も量も全く違うのよ。今まではルネの足りない分を補うだけだったけど、それはルネの力にはならなかったのよ」
「私の力?」
「そう。基本的に他人の魔力が交じり合う事はないのよ。どんなに相性が良くても、そこには必ず抵抗が生じるの。でも、ルネは聖属性の魔力しか持たないから、身体を繋げた後でセレンの魔力と交じり合って、ルネ自身の魔力に変わったのね」
「そうなのですか、セレン様」

 聖獣のリアさんがそう言うのだから間違いないとは思いますが…にわかには信じられません。思わずセレン様に尋ねてしまいました。あ、もしかしれリアさんに失礼だったでしょうか。

「あくまでも推測の域を出ないけど…リアが言うのだから間違いないだろうね。魔力の事はリアの方がずっとわかっているからね」
「そうなのですか」
「そうよ~でも、それはルネが白魔術しか持たなくて、セレンとの相性が良かったから。こんな事はまず起きないのよ」

 やっぱり二人は運命なのよ、とリアさんが嬉しそうに言いましたが、運命だなんて…何だか面映ゆいですが、私なんかでいいのでしょうか…

「ルネと運命だなんて光栄だね。私も嬉しいよ」

 どうやらセレン様も同じお気持ち、と思っていいのでしょうか。嬉しいですが、なんだか恐れ多いです。

「ルネの変化は…ううん、今回に限っては成長と言うべきかな。その姿がルネ本来の姿なのよ」
「私本来の?」
「そう。ルネは成長期の長い時間、栄養不足と魔力切れに晒されていて成長出来なかったの。それが十分な栄養と魔力を得た事で、一気に成長が進んだのよ」
「リア、それじゃ、ルネが熱を出したのは、身体の急激な成長のせいなのかい?」
「そういう事になるわね」

 信じがたい事ですが、リアさんはそうだと言い切り、セレン様もリアがそう言うのならと否定しません。何となくつじつまが合っているようにも思いますし、そもそも私にはその理由をはっきり知る手段も知識もありません。お二人がそう言うのなら、きっとそういう事なのでしょう。

「ああ、心配だよ。こんなに魅力的になったルネを誰かが奪いに来そうで…」

 そういってセレン様は私をぎゅっと抱きしめましたが…セレン様の心配をよそに、私はまだ自分の変化を受け入れられず、茫然としていたのでした。

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