『完結』孤児で平民の私を嫌う王子が異世界から聖女を召還しましたが…何故か私が溺愛されています?

灰銀猫

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結婚のお披露目

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 そんな中、あっという間にお披露目の日を迎えました。十日程前から私は、マリアンヌ様に派遣された侍女さんたちにピカピカに磨き上げられた上、当日も日の出前から起こされて飾り立てられました。青みのかかった銀色のウエディングドレスに身を包んだ鏡の中の私は…完全に別人、です。

「まぁ!素敵だわ、ルネ!」
「ほぅ、これはこれは…」
「マリアンヌ様、ジルベール様、この度はありがとうございました」

 盛装に身を包んだ麗しい一対のお二人に、私は謝意を込めてカーテシーをしました。私などマリアンヌ様に比べたら天と地ほどの差があるのですが…マリアンヌ様は侍女たちを労いながら私をネタに盛り上がっています。これは望まれた通りの出来だったと思ってもいいのでしょうか。

「ルネ、入るよ」

 少し遅れてやってきたのはセレン様でした。私と対の青みのある銀の正装を召したセレン様は…これまでに見た誰よりも麗しく凛々しくていらっしゃいました。隣に並ぶのかと思うと腰が引けてしまうほどに…全く、男性だというのにこうも綺羅綺羅しいのはいかがかと思うのですが…ずるいと感じてしまうのは仕方がないでしょう。

「…ああ、ルネ、とってもきれいだよ…」

 セレン様の麗しさに固まってしまった私を解したのは、やはりセレン様でした。いえ、そのセリフはそのまんまお返ししたいのですが…そんな風に思っている間にもセレン様は私の側に歩み寄られると、頭のてっぺんからつま先まで眺めると、蕩ける様な甘い笑顔を私に向けました。な、何と言いますか…セレン様の甘さには随分慣れたつもりでいましたが…これは反則ではないでしょうか…この笑顔をこのまま残しておきたい程です。




 結婚式は大公宮の聖堂で恙なく行われ、神官様の祝福を受けた私達は正式な夫婦として認められました。既にジルベール様から大公国民としての承認は頂きましたが、神殿の承認も大事なのです。双方揃って正式に婚姻が成立したと見なすのが、この周辺の国の習わしですから。

 結婚式の後は、暫しの休憩を挟んで、ジルベール様主催の夜会となりました。私は今度はセレン様の色でもある青みのあるブルーグリーンのドレスに着替えました。あまり露出の多いデザインは私には相応しくないと、夜会のドレスにしては露出少な目です。私もあまり露出の多いドレスは恥ずかしいので、そこは幸いでした。
 夜会に出るのは初めてではありませんが…いい思い出は皆無…でした。聖力不足で体調が悪かったのもありますが、悪意の視線が凄くて息苦しいほどだったのです。しかもセザール様がああでしたから、私には苦行としか思えませんでした。
 でも、今回は違います。私には甘すぎるほど甘いセレン様と一緒で、夜会がこんなにも楽しいと思うのも生まれて初めてでした。そんなセレン様は、私と同じブルーグリーンとシルバーを基調とした盛装でした。あんなにも麗しく気品も威厳もおありなので、ジルベール様に並んでも遜色ありません。

 今回はセレン様の爵位授与式も兼ねているので、まずはそちらが先でした。この地に来た時には、不審者を見る様な目で見られていたセレン様ですが…魔獣討伐の成果が上がると共に、セレン様の評価もぐんぐん上がっていったのです。結界で魔獣の侵入を防いだ事が一番大きかったでしょうか。魔獣に襲われる人が減ったため、セレン様は神が遣わした御使いだと言う人もいるほどです。セレン様の評価は一気に高くなり、爵位授与も当然との声が大半でした。むしろ他国に行ってしまわないように、もっと高い爵位を…という声もあるほどです。

 爵位の授与式の後は、いよいよ私たちの結婚のお披露目となりました。今日はジルベール様の夜会の形をとっているので、大公国の重鎮や貴族、主だった領主と、他国の大使たちを招待しています。小さな大公国とは言え、大公は元王太子殿下だったジルベール様だったのもあり、殆どの招待客が出席したそうです。

「まぁ…なんて麗しい…」
「清らかという表現がぴったりですわ」
「お綺麗でまるで天上に住まう神々のようですわね」

 人込みから漏れ伝わるのは、セレン様を称賛する声でしょうか。確かにそのお力もお姿も天の神々にも並ぶほどだと思い、私はそんな言葉に心の中で頷いていました。

「ルネの事をみんなが絶賛しているよ」
「まさか…」

 称賛の声はセレン様にでしょうに。そう思う私にセレン様は、ルネはもっと自信を持つべきだと仰っていましたが…いえいえ、セレン様には適いそうもありませんし、自惚れられるほどのものを私は持ち合わせていないのです。それでも、嬉しい事にセレン様と並んでも見劣りがするとか釣り合わないという声は聞こえませんでした。セザール様の時はそんな言葉しか聞こえなかったので、それだけでも私はとても穏やかな気持ちで夜会を楽しいと感じられました。

「アシャルティ子爵、おめでとうございます」
「これからは是非親しくお付き合い頂けると嬉しいですな」
「今度一緒に晩餐でもいかがですかな?」

 挨拶とダンスの後、私たちはあっという間に招待客の皆さんに囲まれてしまいました。セレン様の力を借りたい人たちが、少しでも繋がりを求めて話したのでしょう。中には…ご自身の娘をあからさまに紹介する方もいらして、そのたびにセレン様の口元が引き攣っていたように見えました。セレン様、元の世界では女性に散々付きまとわれてご苦労されていたそうなので、押してくる女性は苦手らしいのですよね。それに…私も新婚だというのに女性を売り込んで来るなんて、失礼極まりないでしょう。そのような方々には、正直いい感情を持てそうにありませんでした。
 そんな私の心情を感じられたのか、セレン様はそのような方々には特に、聖女だった私がいかに謙虚で慎ましく、清らかな心根かを語り、相手を面食らわせていました。

「セレン様、さすがに褒め過ぎです…」
「ほら、そういうところがルネの素晴らしいところなんだよ。あれくらい言ってもまだ足りないよ」
「まぁ、惚気もここまでくると天晴ですわね」
「何を仰います、マリアンヌ様。ジルベール様に比べたら私など、足元にも及びませんよ」
 
 マリアンヌ様の横ではジルベール様が笑顔を保ったまま無言でしたが…それってジルベール様はそれ以上にマリアンヌ様の事を…確かにここに来てからのジルベール様のマリアンヌ様への溺愛は疑問に感じる事もあるほどですが…どうやらセレン様はジルベール様と似た者同士のようです。マリアンヌ様に視線をちらと向けると、目が合ったマリアンヌ様が困ったような笑みを浮かべられて、私たちもまた同士なのだと納得することになったのでした。

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