42 / 71
想定外の申し出
しおりを挟む
「ルネ、大丈夫?酷い事はされなかった?」
いつも通りの優しい笑みを浮かべながら、セレン様が私に声を掛けられました。陛下達が何をするつもりか、セレン様はどうなっているのかもわからず、不安しかありませんでしたが…いつも通りの優しい声に、不安が急速に萎んでいくのを感じました。
「だ、大丈夫です。セレン様は…」
「ああ、私も平気だよ」
そう言って私の頬にそっと手を添えたセレン様の指の温かさに、私はようやく無事だったのだと実感し、強張っていた身体から少しだけ力が抜けるのを感じました。目の奥がツンとして、気を抜いたら泣いてしまいそうです。
「彼らに私を害する事など出来やしないよ。そう、指一本触れる事もね」
「馬鹿な!眠り薬を仕込んでおいた筈だ。それも丸一日は目が覚めないような強力なものを」
笑みを浮かべてそう言ったセレン様に反応したのは、セザール殿下でした。元より下と見た者を痛めつける事に躊躇しない方なので、セレン様にも同様に扱ったのでしょう。なのに、実際は幻影で指一本すらも触れる事が出来なかったと言われれば、彼のプライドが大きく傷ついたのは安易に想像出来ます。
「お、お前達、ちゃんと言った通りにしたんだろうな?!」
「は、はいっ。ご命令通り、鞭打ちを五十回、確かに…」
殿下の怒りを受けて、セレン様の側に居た騎士達がオロオロしながらもそう答えましたが…ちょっと待ってください!鞭打ち五十回って…それは終身刑や死刑になるほどの重罪人への罰の筈です。そんな事をセレン様にやっていたなんて…
「ああ、彼らはちゃんと仕事をしていたよ」
覚えのある声のする方に視線を向けると…ドアに入り口にいたのは、身体中が傷つき、見るも無残な王太子殿下の姿がありました。いつもお使いとしていらっしゃる側近の方が、その身体を支えていました。
「な…ジルベール?!」
「あ、兄上…何故…?!」
「ひっ!ジルベールっ?!」
王太子殿下の姿に、陛下やセザール殿下だけでなく、普段は表情を一切変えないと言われる王妃様ですらも目を見開き、悲鳴のような声を上げました。オレリア王女様に至っては、驚きで声も出ないようです。これは一体どういう事でしょうか…
「貴様っ!まさか魔術でジルベールを身代わりにっ?!」
陛下の怒気が一層膨らみ、室内にはピリピリするほどの威圧感が広がっていました。さすがは一国の国王陛下でいらっしゃいます。その圧に私も今までの安堵の空気が一気に冷えるのを感じました。でも、セレン様は怯むどころか表情から笑みが消えません。
「父上、誤解のないように申し上げますが、これは私自ら申し出た事です」
「な、何だと…っ?!」
「アシャルティ殿が何れこうなると仰っていたが、私は信じられなかったのですよ。陛下が…父上がそんな身勝手な事をなさるなど…だから彼に頼んで、周りが私をアシャルティ殿と誤解するような術を掛けて欲しいと頼んだのです」
「馬鹿なっ…何故そんな事を…!一歩間違えればお前は死んでいたかもしれないんだぞ!」
王太子殿下がそう言うも、陛下は信じられないご様子でした。しかも陛下の言葉は、セレン様を消そうと、その命を奪おうとしていたと白状しているも同然です。
「…アシャルティ殿の言った通りでした、か…」
「い、いやッ…これは…っ!」
王太子殿下の苦渋の呟きに、陛下はご自身の発言思い出したのか、ハッと表情を崩しました。王太子殿下はずっとセレン様の協力を得て、結界を現状に合わせ、何れは結界に頼らない国作りをとお考えになっていました。その為、連日セレン様と話合いを重ねていたのです。
それを陛下は一蹴し、今回の暴挙に走ったのです。王太子殿下の意見を完全に無視したご自身の行為が、よりにもよって次代を継ぐはずの殿下に降りかかったのです。
「父上…いえ、陛下、残念ですよ。私の言葉は届かなかったのですね」
「それ、は…」
「兄上!父上は国のためにご決断されたのですぞ。どうしてその者の身代わりになど!」
「お前は黙っていろ!そもそもお前が勝手に召喚の儀を行ったのが原因だという事を忘れたか?!」
「あ、あに、上…?」
いつも穏やかな表情を崩さない王太子殿下が、感情をそのままセザール殿下にぶつけました。王太子殿下の厳しい態度に、傍若無人なセザール殿下も呆然としています。もしかして、今までこの様に怒りをぶつけられた事がなかったのでしょうか。
「陛下もです。私は再三にわたって召喚は危険だと申し上げた。その結果がこれですか?しかも都合が悪くなれば口封じなどと…」
「な…!だが、これも国のためなのだ。お前とていずれ王になる身。綺麗事だけでは…」
「それで?我々よりもはるかに大きな力を使う者相手に喧嘩を売ると?それが身を滅ぼす事になると何故思わないのです?」
「だが、我らの力をもってすれば…アシャルティさえ殺せば、あの異形の者達も…」
「そんな訳ないでしょ~」
必死に言い訳をする様にしか見えない陛下の言葉を遮ったのは、リアさんでした。私達が捕まった後は姿を消していましたが、いつの間にかセレン様の後ろに人の姿で立っていました。無事な姿を目にして、私はまた一つ緊張がほぐれた気がしました。
「な…何を…」
「セレンを殺しても私達には関係ないよ」
「だ、だが…従魔だと…」
「うん、従魔だよ。でも、セレンとは命の契約をしているわけじゃないわ。それに、いつだって契約なんか解除出来るし」
「そんな…従魔の契約は…」
「こっちの世界じゃそうかもしれないけど、私とセレンはそんなんじゃないわ」
「以前、我々の常識とこちらの常識は違うと、そう申し上げた筈ですよ。もうお忘れですか?」
リアさんとセレン様がそう指摘すると、陛下は玉座から崩れ落ちそうになりました。想定していたシナリオが、全て意味のないものだったと悟られたからでしょうか…
「国王陛下にお願いがあります」
「な…何だ…」
「私を廃嫡とし、バズレール大公領を賜りたく存じます」
王太子殿下の思いがけない申し出に、謁見の間がシン…と静まり返りました。
いつも通りの優しい笑みを浮かべながら、セレン様が私に声を掛けられました。陛下達が何をするつもりか、セレン様はどうなっているのかもわからず、不安しかありませんでしたが…いつも通りの優しい声に、不安が急速に萎んでいくのを感じました。
「だ、大丈夫です。セレン様は…」
「ああ、私も平気だよ」
そう言って私の頬にそっと手を添えたセレン様の指の温かさに、私はようやく無事だったのだと実感し、強張っていた身体から少しだけ力が抜けるのを感じました。目の奥がツンとして、気を抜いたら泣いてしまいそうです。
「彼らに私を害する事など出来やしないよ。そう、指一本触れる事もね」
「馬鹿な!眠り薬を仕込んでおいた筈だ。それも丸一日は目が覚めないような強力なものを」
笑みを浮かべてそう言ったセレン様に反応したのは、セザール殿下でした。元より下と見た者を痛めつける事に躊躇しない方なので、セレン様にも同様に扱ったのでしょう。なのに、実際は幻影で指一本すらも触れる事が出来なかったと言われれば、彼のプライドが大きく傷ついたのは安易に想像出来ます。
「お、お前達、ちゃんと言った通りにしたんだろうな?!」
「は、はいっ。ご命令通り、鞭打ちを五十回、確かに…」
殿下の怒りを受けて、セレン様の側に居た騎士達がオロオロしながらもそう答えましたが…ちょっと待ってください!鞭打ち五十回って…それは終身刑や死刑になるほどの重罪人への罰の筈です。そんな事をセレン様にやっていたなんて…
「ああ、彼らはちゃんと仕事をしていたよ」
覚えのある声のする方に視線を向けると…ドアに入り口にいたのは、身体中が傷つき、見るも無残な王太子殿下の姿がありました。いつもお使いとしていらっしゃる側近の方が、その身体を支えていました。
「な…ジルベール?!」
「あ、兄上…何故…?!」
「ひっ!ジルベールっ?!」
王太子殿下の姿に、陛下やセザール殿下だけでなく、普段は表情を一切変えないと言われる王妃様ですらも目を見開き、悲鳴のような声を上げました。オレリア王女様に至っては、驚きで声も出ないようです。これは一体どういう事でしょうか…
「貴様っ!まさか魔術でジルベールを身代わりにっ?!」
陛下の怒気が一層膨らみ、室内にはピリピリするほどの威圧感が広がっていました。さすがは一国の国王陛下でいらっしゃいます。その圧に私も今までの安堵の空気が一気に冷えるのを感じました。でも、セレン様は怯むどころか表情から笑みが消えません。
「父上、誤解のないように申し上げますが、これは私自ら申し出た事です」
「な、何だと…っ?!」
「アシャルティ殿が何れこうなると仰っていたが、私は信じられなかったのですよ。陛下が…父上がそんな身勝手な事をなさるなど…だから彼に頼んで、周りが私をアシャルティ殿と誤解するような術を掛けて欲しいと頼んだのです」
「馬鹿なっ…何故そんな事を…!一歩間違えればお前は死んでいたかもしれないんだぞ!」
王太子殿下がそう言うも、陛下は信じられないご様子でした。しかも陛下の言葉は、セレン様を消そうと、その命を奪おうとしていたと白状しているも同然です。
「…アシャルティ殿の言った通りでした、か…」
「い、いやッ…これは…っ!」
王太子殿下の苦渋の呟きに、陛下はご自身の発言思い出したのか、ハッと表情を崩しました。王太子殿下はずっとセレン様の協力を得て、結界を現状に合わせ、何れは結界に頼らない国作りをとお考えになっていました。その為、連日セレン様と話合いを重ねていたのです。
それを陛下は一蹴し、今回の暴挙に走ったのです。王太子殿下の意見を完全に無視したご自身の行為が、よりにもよって次代を継ぐはずの殿下に降りかかったのです。
「父上…いえ、陛下、残念ですよ。私の言葉は届かなかったのですね」
「それ、は…」
「兄上!父上は国のためにご決断されたのですぞ。どうしてその者の身代わりになど!」
「お前は黙っていろ!そもそもお前が勝手に召喚の儀を行ったのが原因だという事を忘れたか?!」
「あ、あに、上…?」
いつも穏やかな表情を崩さない王太子殿下が、感情をそのままセザール殿下にぶつけました。王太子殿下の厳しい態度に、傍若無人なセザール殿下も呆然としています。もしかして、今までこの様に怒りをぶつけられた事がなかったのでしょうか。
「陛下もです。私は再三にわたって召喚は危険だと申し上げた。その結果がこれですか?しかも都合が悪くなれば口封じなどと…」
「な…!だが、これも国のためなのだ。お前とていずれ王になる身。綺麗事だけでは…」
「それで?我々よりもはるかに大きな力を使う者相手に喧嘩を売ると?それが身を滅ぼす事になると何故思わないのです?」
「だが、我らの力をもってすれば…アシャルティさえ殺せば、あの異形の者達も…」
「そんな訳ないでしょ~」
必死に言い訳をする様にしか見えない陛下の言葉を遮ったのは、リアさんでした。私達が捕まった後は姿を消していましたが、いつの間にかセレン様の後ろに人の姿で立っていました。無事な姿を目にして、私はまた一つ緊張がほぐれた気がしました。
「な…何を…」
「セレンを殺しても私達には関係ないよ」
「だ、だが…従魔だと…」
「うん、従魔だよ。でも、セレンとは命の契約をしているわけじゃないわ。それに、いつだって契約なんか解除出来るし」
「そんな…従魔の契約は…」
「こっちの世界じゃそうかもしれないけど、私とセレンはそんなんじゃないわ」
「以前、我々の常識とこちらの常識は違うと、そう申し上げた筈ですよ。もうお忘れですか?」
リアさんとセレン様がそう指摘すると、陛下は玉座から崩れ落ちそうになりました。想定していたシナリオが、全て意味のないものだったと悟られたからでしょうか…
「国王陛下にお願いがあります」
「な…何だ…」
「私を廃嫡とし、バズレール大公領を賜りたく存じます」
王太子殿下の思いがけない申し出に、謁見の間がシン…と静まり返りました。
67
お気に入りに追加
2,740
あなたにおすすめの小説

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
悪役令嬢、追放先の貧乏診療所をおばあちゃんの知恵で立て直したら大聖女にジョブチェン?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜
華梨ふらわー
恋愛
第二王子との婚約を破棄されてしまった主人公・グレイス。しかし婚約破棄された瞬間、自分が乙女ゲーム『どきどきプリンセスッ!2』の世界に悪役令嬢として転生したことに気付く。婚約破棄に怒り狂った父親に絶縁され、貧乏診療所の医師との結婚させられることに。
日本では主婦のヒエラルキーにおいて上位に位置する『医者の嫁』。意外に悪くない追放先……と思いきや、貧乏すぎて患者より先に診療所が倒れそう。現代医学の知識でチートするのが王道だが、前世も現世でも医療知識は皆無。仕方ないので前世、大好きだったおばあちゃんが教えてくれた知恵で診療所を立て直す!次第に周囲から尊敬され、悪役令嬢から大聖女として崇められるように。
しかし婚約者の医者はなぜか結婚を頑なに拒む。診療所は立て直せそうですが、『医者の嫁』ハッピーセレブライフ計画は全く進捗しないんですが…。
続編『悪役令嬢、モフモフ温泉をおばあちゃんの知恵で立て直したら王妃にジョブチェン?! 〜やっぱり『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件~』を6月15日から連載スタートしました。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/500576978/161276574
完結しているのですが、【キースのメモ】を追記しております。
おばあちゃんの知恵やレシピをまとめたものになります。
合わせてお楽しみいただければと思います。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる