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今度は引っ越し?
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「ルネ、出来れば離宮に引っ越してきて欲しいんだ」
「はい?」
セレン様のお側に控えるようになってから十日ほどが経ったある日。いつものようにセレン様の元を訪れると、いきなりそう切り出されました。
「引っ越しって…」
「毎日通うのも面倒だろう?この離宮には部屋がまだ余っているからね。だったらここに引っ越してきて欲しいんだ。その方がいつでも貴女の協力が得られるからね」
そう言ってにっこり笑顔を浮かべるセレン様ですが…そんな勝手な事をしてもいいのでしょうか。それに…男性が住む離宮に引っ越すなんて、はしたなくないでしょうか…
「それは…」
「ああ、国王陛下の許可は取ってあるから心配いらないよ」
「え?」
陛下の許可が出ているのなら…それはお願いではなく確定ではないでしょうか…そもそも私に選択権が与えられる事など今までなかったですし。
「もちろん、ルネが嫌だというなら無理にとは言わない。でも、ルネが側に居てくれると体調がいいんだよ」
そう言って縋るような目で見るのは反則だと思います。そんな風に言われたら、無下に出来ないじゃないですか…結局、私は押し切られるようにして引っ越す事になっていました。
「可愛いルネが側に居るだけで体調がいいのは本当なのだよ」
「そうなのですか?でも、元の世界では…」
「ああ、あっちにも聖魔力を持つ者はいたけれど…純粋な力を持つ者は希少でね。私の力を中和する以前に、私の魔力に中てられてしまって使い物にならなかったんだ」
「そうなのですか。でも、それじゃ…」
「ああ、私は生まれた時、医者に三歳まで生きられないと言われたんだよ」
「ええっ?どうして…」
「魔力があり過ぎて身体を蝕んでしまう程だったんだ。あちらの世界では魔力過多症という病でね。魔力を抑える道具などで何とか抑えていたけれど…それも限界に近づいていてね。最近はもう無理かと諦めていたんだよ」
「そんな事が…」
いつも人当たりのいい笑顔で、憂いなどなさそうに見えたセレン様がそんな事情を抱えていたとは思いませんでした。それに…私の見た限り、具合が悪そうにも見えませんし。それで三年もつかどうか…と言われていたというのだから驚きです。
「ああ、ルネが気にする必要はないよ。向こうの世界では珍しくないんだ」
なんて事はないように笑顔でそう話すセレン様に、私は心が痛むのを感じました。そんな大変な事情を抱えていたのに、こちらの都合で呼び出してしまったなんて…今は私の力で中和できても、ここにはセレン様を治す医者どころかそんな知識のある人すらいません。これ以上悪化させないためにも、私も出来る限りの事はしたいです。セレン様が呼び出されてしまったのは、私の聖力のせいでもありますから。
「わかりました。私に出来る事なら出来る限りお力になります」
「ありがとう、ルネは優しいね」
花のような笑顔というのが、男性でも当てはまるのだ…と私はセレン様の笑顔を見てしみじみと感じました。本当に、見た目の麗しさだけでもドキドキしてしまうのに、甘く優しい笑みを向けられると…何とも言いようのない気持ちになってしまい、落ち着きません。
こうして翌日、私はセレン様が住み離宮に引っ越す事になりました。元より大した荷物もない私でしたから、侍女さん達がてきぱきと段取りを組み、さっさと荷物を運んでしまいました。
「セレン様、お願いがあるのですが…」
「何だい、可愛いルネのお願いを無下にするほど狭量ではないよ」
「……」
何と言うか、サラッと恥ずかしい事を仰るセレン様ですが、私は中々慣れなくて今回も言葉に詰まってしまいました。可愛いだなんて…何かとそんな風に言われるのですが、向こうでは名前の前にそのような言葉を付ける風習でもあるのでしょうか…
「…私の侍女のレリアと…この子を連れてきてもよろしいでしょうか?」
そう言って私は、レリアと手に抱いたクルルに視線を向けました。引っ越すならレリアも一緒に来て欲しいですし、クルルは勝手に付いてきそうですが、ここはセレン様の居住区なので一言お伝えしておいた方がいいと思ったのです。セレン様が動物嫌いだったり、アレルギーがあったりするなら側に置いておくわけにもいきませんから。
「別に構わないよ、ルネが望むのなら。レリアと言ったか、君はルネ付きの侍女?」
「はい。神殿にいた頃からご一緒させて頂いておりました。今はそのご縁で侍女としてお側に置かせて頂いております」
「レリアは私の姉のような存在なんです。ですから…」
「レリア、私の事もよろしく頼む。色々教えてくれ」
「ご厚情に感謝いたします」
「そんなに畏まらなくてもいいよ。もっと気楽に接してくれると嬉しい。後、その子犬も歓迎するよ」
「あ、ありがとうございます」
断られる事はないだろうと、最近のセレン様の様子からそんな風に思っていましたが、実際に許可を貰って気が楽になりました。特にレリアは私の侍女を辞めると行き場がないのです。最近は聖力が弱くなって神殿に戻るほどの力がありませんし、実家も没落している上代替わりして、もう帰られる状態ではないからです。
こうして私はレリアとクルルも一緒に、セレン様の離宮へと引っ越しました。そうしてその日から、食事も共に摂るようになっただけでなく、何をするにも一緒の生活になったのでした。
「はい?」
セレン様のお側に控えるようになってから十日ほどが経ったある日。いつものようにセレン様の元を訪れると、いきなりそう切り出されました。
「引っ越しって…」
「毎日通うのも面倒だろう?この離宮には部屋がまだ余っているからね。だったらここに引っ越してきて欲しいんだ。その方がいつでも貴女の協力が得られるからね」
そう言ってにっこり笑顔を浮かべるセレン様ですが…そんな勝手な事をしてもいいのでしょうか。それに…男性が住む離宮に引っ越すなんて、はしたなくないでしょうか…
「それは…」
「ああ、国王陛下の許可は取ってあるから心配いらないよ」
「え?」
陛下の許可が出ているのなら…それはお願いではなく確定ではないでしょうか…そもそも私に選択権が与えられる事など今までなかったですし。
「もちろん、ルネが嫌だというなら無理にとは言わない。でも、ルネが側に居てくれると体調がいいんだよ」
そう言って縋るような目で見るのは反則だと思います。そんな風に言われたら、無下に出来ないじゃないですか…結局、私は押し切られるようにして引っ越す事になっていました。
「可愛いルネが側に居るだけで体調がいいのは本当なのだよ」
「そうなのですか?でも、元の世界では…」
「ああ、あっちにも聖魔力を持つ者はいたけれど…純粋な力を持つ者は希少でね。私の力を中和する以前に、私の魔力に中てられてしまって使い物にならなかったんだ」
「そうなのですか。でも、それじゃ…」
「ああ、私は生まれた時、医者に三歳まで生きられないと言われたんだよ」
「ええっ?どうして…」
「魔力があり過ぎて身体を蝕んでしまう程だったんだ。あちらの世界では魔力過多症という病でね。魔力を抑える道具などで何とか抑えていたけれど…それも限界に近づいていてね。最近はもう無理かと諦めていたんだよ」
「そんな事が…」
いつも人当たりのいい笑顔で、憂いなどなさそうに見えたセレン様がそんな事情を抱えていたとは思いませんでした。それに…私の見た限り、具合が悪そうにも見えませんし。それで三年もつかどうか…と言われていたというのだから驚きです。
「ああ、ルネが気にする必要はないよ。向こうの世界では珍しくないんだ」
なんて事はないように笑顔でそう話すセレン様に、私は心が痛むのを感じました。そんな大変な事情を抱えていたのに、こちらの都合で呼び出してしまったなんて…今は私の力で中和できても、ここにはセレン様を治す医者どころかそんな知識のある人すらいません。これ以上悪化させないためにも、私も出来る限りの事はしたいです。セレン様が呼び出されてしまったのは、私の聖力のせいでもありますから。
「わかりました。私に出来る事なら出来る限りお力になります」
「ありがとう、ルネは優しいね」
花のような笑顔というのが、男性でも当てはまるのだ…と私はセレン様の笑顔を見てしみじみと感じました。本当に、見た目の麗しさだけでもドキドキしてしまうのに、甘く優しい笑みを向けられると…何とも言いようのない気持ちになってしまい、落ち着きません。
こうして翌日、私はセレン様が住み離宮に引っ越す事になりました。元より大した荷物もない私でしたから、侍女さん達がてきぱきと段取りを組み、さっさと荷物を運んでしまいました。
「セレン様、お願いがあるのですが…」
「何だい、可愛いルネのお願いを無下にするほど狭量ではないよ」
「……」
何と言うか、サラッと恥ずかしい事を仰るセレン様ですが、私は中々慣れなくて今回も言葉に詰まってしまいました。可愛いだなんて…何かとそんな風に言われるのですが、向こうでは名前の前にそのような言葉を付ける風習でもあるのでしょうか…
「…私の侍女のレリアと…この子を連れてきてもよろしいでしょうか?」
そう言って私は、レリアと手に抱いたクルルに視線を向けました。引っ越すならレリアも一緒に来て欲しいですし、クルルは勝手に付いてきそうですが、ここはセレン様の居住区なので一言お伝えしておいた方がいいと思ったのです。セレン様が動物嫌いだったり、アレルギーがあったりするなら側に置いておくわけにもいきませんから。
「別に構わないよ、ルネが望むのなら。レリアと言ったか、君はルネ付きの侍女?」
「はい。神殿にいた頃からご一緒させて頂いておりました。今はそのご縁で侍女としてお側に置かせて頂いております」
「レリアは私の姉のような存在なんです。ですから…」
「レリア、私の事もよろしく頼む。色々教えてくれ」
「ご厚情に感謝いたします」
「そんなに畏まらなくてもいいよ。もっと気楽に接してくれると嬉しい。後、その子犬も歓迎するよ」
「あ、ありがとうございます」
断られる事はないだろうと、最近のセレン様の様子からそんな風に思っていましたが、実際に許可を貰って気が楽になりました。特にレリアは私の侍女を辞めると行き場がないのです。最近は聖力が弱くなって神殿に戻るほどの力がありませんし、実家も没落している上代替わりして、もう帰られる状態ではないからです。
こうして私はレリアとクルルも一緒に、セレン様の離宮へと引っ越しました。そうしてその日から、食事も共に摂るようになっただけでなく、何をするにも一緒の生活になったのでした。
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