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王太子殿下からの謝罪
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「おい、出ろ!」
「ひっ!」
翌日、する事もない私がクルルを撫でていると、看守が声をかけてきました。クルルが見つかってしまったのではないかと焦る私を看守は冷たく一瞥しましたが…幸いにもクルルには気が付いていないようでした。
クルルも看守が来るのが分かるのでしょうか。看守が来る時にはシーツの中にもぐっていたり、看守から見えない位置にいたりと、上手く立ち回っています。子犬ながら侮りがたし、ですわね。
クルルの事は心配ですが…連れていくわけにもいきません。見つからないように大人しくしているか、こうしている間に外に出てくれるといいのですが…
連れて来られたのは、王族の生活エリアの中にある客間でした。一体どういう事でしょうか…
「失礼します、聖女様」
「え…ええっ?!」
声をかけてきたのは三人の侍女でした。衣装からして上級侍女なのでしょう。何を…と思う間もなく私は身ぐるみ剥がされて、湯船に放り込まれました。いえ、お風呂にずっと入っていなかったので有難いのですが…状況が分からないのでそれはそれで不安です。
「あの…何がどうなって…」
「陛下より御身の清めを命じられました。この後、王太子殿下の元にご案内します」
「殿下の元に?どうして…」
「それについては私共は伺っておりません」
相変わらず淡々と事務的に私を磨き上げる侍女達からは、好意の一片も感じられませんでした。謁見するのにあの格好では問題があったのでしょうが…それにしては随分と入念に磨かれました。
それから一刻程度後。ピッカピカに磨き上げられ、聖女の衣装ではなく普通の令嬢が着るような水色のドレスを着せられ、更には軽く化粧までされました。鏡に映るのは別人のような自分です。しかし、この格好は一体…王宮に上がって以来、こんなドレスを着るのは初めてなのですが…
「さ、ご案内いたします」
そう言って侍女に案内されたのは、直ぐ近くにある客間でした。ソファに案内されて暫く待つようにと言われましたが、一体何があるのでしょうか…侍女たちもこれ以上の事は何も教えてくれなかったので、不安ばかりが募ります。
「待たせたね」
暫くして入って来られたのは、王太子殿下でした。穏やかな笑みに少しだけ不安が軽くなった気がします。この方は常識的というか、王族の中でも私を蔑む言動をされないので、他の方々よりは安心出来ます。
「すまないね、ルネ殿。牢になど放り込んで」
「い、いえ……」
謝られてしまうと、かえって不安が募りました。これは…どう受け止めていいのでしょうか。
「セザールが陛下に無断で召喚術を使った事、それについて貴女の力を無理やり奪い命の危険に晒した事、更には貴女のせいだという弟の言葉を真に受けて牢に繋いだ事、すまなかった」
そう言って王太子殿下が頭を下げられたため、私は焦ってしまいました。王家の方がこんなに簡単に頭を下げてはいけないのではないでしょうか。
「あ、あの…王太子殿下のせいではありませんので…頭をお上げください」
そうです。全てはセザール殿下のせいで、王太子殿下は関係ありません。慌ててそう言いますが、殿下は中々頭を上げられませんでした。王家の方に頭をさせさせるなんて…それこそ不敬罪にならないでしょうか…
「ありがとう、貴女は優しいね」
「いえ、その様な…」
優しいとかどういう問題ではないのですが…じゃ、どういう問題だと言われると答えようもないので、私はそれ以上何も言えませんでした。
「謝罪したばかりで申し訳ないのだけど、実は貴女にお願いがあるんだ」
「お願い…ですか?」
「ああ、あの召喚した男性なのだが…」
「え?あの男性ですか?ご無事なのですか」
「ああ、今は客人として丁重に持てなしているよ。その彼だけど…かなりの力をお持ちのようでね。我が国の結界の維持を引き受けてもいいと言ってくれているんだ」
「まぁ…」
「だが、それには条件があってね」
「条件、ですか…」
結界の維持をして頂けるのは大変ありがたい事です。私では十分ではありませんが、あの方なら難なくこなせるのではないでしょうか。
でも、その条件を聞いてはいけない様な気がするのは気のせい、でしょうか…
「ああ、彼は貴女を側に置きたいと言っているんだ」
「…私を、ですか?どうして…」
それこそ意外な話でした。私など側に置いてどうしようというのでしょうか…侍女としてのスキルもありませんし、聖女の力だって十分とは言えません。お役に立てるとは思えないのですが…
「彼は魔力が大きすぎるらしくてね。この世界では暴走してしまうかもしれないというのだよ」
「まぁ…」
「だが、貴女の力があれば、それを緩和できると言うんだ」
「緩和?私の力で…ですか?」
「ああ。詳しい事は私もわからないのだが、彼は貴女が適任だというのだよ。そして、貴女が側に居てくれる間は結界を守ると約束すると。何なら綻びかけている結界も修復してくれると言うんだ」
「綻びた結界を…」
それは…願ったりかなったりですが、そんな事が可能なのでしょうか。この世界にはもう、結界を再構築する力はなく、維持する事も困難なはずです。でも…
「そう言う事でしたら…私でよければ…」
結界の維持は国を、民を守るためには必要不可欠です。私の身一つでそれが叶うのなら、私にはそう応える以外の選択肢などありません。私は…力が弱くても聖女なのですから…
「そう言って貰えると助かるよ」
王太子殿下が、ホッと安堵するような笑顔を浮かべました。何が何だかよくわかりませんが、私の罪はなかった事になり、牢から出られただけでも一安心です。最悪、死罪かも…と覚悟していましたから。
「ひっ!」
翌日、する事もない私がクルルを撫でていると、看守が声をかけてきました。クルルが見つかってしまったのではないかと焦る私を看守は冷たく一瞥しましたが…幸いにもクルルには気が付いていないようでした。
クルルも看守が来るのが分かるのでしょうか。看守が来る時にはシーツの中にもぐっていたり、看守から見えない位置にいたりと、上手く立ち回っています。子犬ながら侮りがたし、ですわね。
クルルの事は心配ですが…連れていくわけにもいきません。見つからないように大人しくしているか、こうしている間に外に出てくれるといいのですが…
連れて来られたのは、王族の生活エリアの中にある客間でした。一体どういう事でしょうか…
「失礼します、聖女様」
「え…ええっ?!」
声をかけてきたのは三人の侍女でした。衣装からして上級侍女なのでしょう。何を…と思う間もなく私は身ぐるみ剥がされて、湯船に放り込まれました。いえ、お風呂にずっと入っていなかったので有難いのですが…状況が分からないのでそれはそれで不安です。
「あの…何がどうなって…」
「陛下より御身の清めを命じられました。この後、王太子殿下の元にご案内します」
「殿下の元に?どうして…」
「それについては私共は伺っておりません」
相変わらず淡々と事務的に私を磨き上げる侍女達からは、好意の一片も感じられませんでした。謁見するのにあの格好では問題があったのでしょうが…それにしては随分と入念に磨かれました。
それから一刻程度後。ピッカピカに磨き上げられ、聖女の衣装ではなく普通の令嬢が着るような水色のドレスを着せられ、更には軽く化粧までされました。鏡に映るのは別人のような自分です。しかし、この格好は一体…王宮に上がって以来、こんなドレスを着るのは初めてなのですが…
「さ、ご案内いたします」
そう言って侍女に案内されたのは、直ぐ近くにある客間でした。ソファに案内されて暫く待つようにと言われましたが、一体何があるのでしょうか…侍女たちもこれ以上の事は何も教えてくれなかったので、不安ばかりが募ります。
「待たせたね」
暫くして入って来られたのは、王太子殿下でした。穏やかな笑みに少しだけ不安が軽くなった気がします。この方は常識的というか、王族の中でも私を蔑む言動をされないので、他の方々よりは安心出来ます。
「すまないね、ルネ殿。牢になど放り込んで」
「い、いえ……」
謝られてしまうと、かえって不安が募りました。これは…どう受け止めていいのでしょうか。
「セザールが陛下に無断で召喚術を使った事、それについて貴女の力を無理やり奪い命の危険に晒した事、更には貴女のせいだという弟の言葉を真に受けて牢に繋いだ事、すまなかった」
そう言って王太子殿下が頭を下げられたため、私は焦ってしまいました。王家の方がこんなに簡単に頭を下げてはいけないのではないでしょうか。
「あ、あの…王太子殿下のせいではありませんので…頭をお上げください」
そうです。全てはセザール殿下のせいで、王太子殿下は関係ありません。慌ててそう言いますが、殿下は中々頭を上げられませんでした。王家の方に頭をさせさせるなんて…それこそ不敬罪にならないでしょうか…
「ありがとう、貴女は優しいね」
「いえ、その様な…」
優しいとかどういう問題ではないのですが…じゃ、どういう問題だと言われると答えようもないので、私はそれ以上何も言えませんでした。
「謝罪したばかりで申し訳ないのだけど、実は貴女にお願いがあるんだ」
「お願い…ですか?」
「ああ、あの召喚した男性なのだが…」
「え?あの男性ですか?ご無事なのですか」
「ああ、今は客人として丁重に持てなしているよ。その彼だけど…かなりの力をお持ちのようでね。我が国の結界の維持を引き受けてもいいと言ってくれているんだ」
「まぁ…」
「だが、それには条件があってね」
「条件、ですか…」
結界の維持をして頂けるのは大変ありがたい事です。私では十分ではありませんが、あの方なら難なくこなせるのではないでしょうか。
でも、その条件を聞いてはいけない様な気がするのは気のせい、でしょうか…
「ああ、彼は貴女を側に置きたいと言っているんだ」
「…私を、ですか?どうして…」
それこそ意外な話でした。私など側に置いてどうしようというのでしょうか…侍女としてのスキルもありませんし、聖女の力だって十分とは言えません。お役に立てるとは思えないのですが…
「彼は魔力が大きすぎるらしくてね。この世界では暴走してしまうかもしれないというのだよ」
「まぁ…」
「だが、貴女の力があれば、それを緩和できると言うんだ」
「緩和?私の力で…ですか?」
「ああ。詳しい事は私もわからないのだが、彼は貴女が適任だというのだよ。そして、貴女が側に居てくれる間は結界を守ると約束すると。何なら綻びかけている結界も修復してくれると言うんだ」
「綻びた結界を…」
それは…願ったりかなったりですが、そんな事が可能なのでしょうか。この世界にはもう、結界を再構築する力はなく、維持する事も困難なはずです。でも…
「そう言う事でしたら…私でよければ…」
結界の維持は国を、民を守るためには必要不可欠です。私の身一つでそれが叶うのなら、私にはそう応える以外の選択肢などありません。私は…力が弱くても聖女なのですから…
「そう言って貰えると助かるよ」
王太子殿下が、ホッと安堵するような笑顔を浮かべました。何が何だかよくわかりませんが、私の罪はなかった事になり、牢から出られただけでも一安心です。最悪、死罪かも…と覚悟していましたから。
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