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軟禁されています
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それから私は自室に軟禁されました。騎士達が部屋の外だけでなく中でも私を見張っていました。殿下曰く、召喚の儀が始まるまでは大人しくしていろとの事でした。
朝のお勤めでもある結界維持の仕事を終えて戻ってきたと思ったらすぐに殿下に呼び出されて、戻ってきたら今度は騎士達に囲まれているので、全く気が休まりません。
「聖女様、朝食をお持ちしました」
そんな中、無表情で朝食を持って来てくれたのは、私の唯一の専属侍女でもあるレリアでした。茶色の髪をきっちりとまとめ、涼やかな目元に紫の瞳は怜悧さを際立たせていて、彼女の方がよっぽど聖女らしく見えます。
彼女はとある伯爵家のご令嬢ですが、聖女の力があると十歳の頃から神殿で暮らしていた、いわば神殿仲間です。聖女になれなかった彼女は、ご実家が没落寸前で帰れないから私の侍女にして欲しいと頼んできたのです。
「ありがとう、レリア」
「いえ、お食事を抜かれては結界の維持に支障が出ますので」
「そうね」
淡々と話すレリアに私はそう答えると、持って来てくれた朝食を私は遠慮せず頂きました。結界を維持するには凄く力が必要で、実はさっきからお腹がペコペコだったのです。
食べなければ結界を維持するための力も出ませんし、栄養不足が続けば命にも関わります。聖女教育を受けていた時、私達は繰り返し『何があっても食事はしっかり摂るように!』と教えられたくらいです。実のところ、しっかり食べても足りないのですが…聖女になってからの私は、ずっと倦怠感に悩まされていますから。
今日はホカホカのパンと、野菜がたっぷりのスープ、卵焼きにシュラムという果物でした。どれも温かくて味も一級品です。
足りないのは…一緒に楽しく会話が楽しめる相手、でしょうか…聖女になり、王宮に来た時から私は、基本的に食事はいつも一人です。神殿ではみんなでワイワイ集まって食べていたので、あの頃が懐かしく恋しいです。
しかも今日は騎士達に見られている中での食事なので、食欲が半減です。それでもきっちり完食しましたが。
その後は、いつもの湯浴みの時間です。これも聖女としての役目の一環なので、さすがのこの時は騎士達には出て行ってもらいました。
「ルネ様、一体どうなさったのです?」
湯浴みの準備をしながら。レリアが小声でこっそり尋ねてきました。彼女は無表情がデフォルトで能面女と陰で言われていますが、実はとても気の利く優しい人です。そして…私にとっては姉のような存在でもあります。
ただ、それが公になると殿下が嫌がらせに彼女を追い出してしまいそうなので、表面上は不仲な態度をとっているのです。彼女は職務に忠実なだけの冷たい侍女。そんな風に言われていますが、こうして二人きりの時だけは心配して言葉をかけてくれるのです。
「それが…」
湯浴みをしながら私は、殿下に言われた事をレリアに簡単に話しました。私達が話をしているのが周りに知れると面倒なので、私達は視線を合わせる事は決してしません。こうしていると私は独り言を言っているようにしか見えないので、怪しまれる事はないのです。
「なんて事を…あの屑が…!」
さすがにレリアも想定外の事だったらしく、酷く憤慨して殿下に怒りを募らせていました、無表情で。
元よりレリアは、私を粗雑に扱う殿下を、それこそ親の仇のように嫌っています。彼女に言わせると殿下は、顔だけの残念王子だそうですが…私も否定はしません。
「でも、もし本当に聖女の力がある人が召喚されたら、聖女も殿下の婚約者を辞められるわ」
「それは…そうですが…」
そう、聖女も殿下の婚約者も、なりたくてなったわけではないのです。私より力がある方が来て下さったら、この地位は直ぐにでもお譲りしましょう。特に婚約者は代わって下さるなら誰でも構いません。
それに…私の力では結界を守るには力が十分でなく、難しいのです。今は何とか維持出来ていますが…正直言っていつまでもつか…自信がありません。
湯浴みの後は王子妃教育でしたが、今日は講師の先生は誰もいらっしゃいませんでした。きっと殿下が止めているのでしょう。召喚の儀をすると仰っていましたが…一体どんな事をするおつもりなのでしょうか…私の力が必要だと言っていましたが…もう悪い予感しかありません。
私達は婚約者同士ですが、そこには一滴の情も存在していません。殿下に至っては私を憎んですらいるように感じますし、それがこの先も変わる事はないように思います。
私は親を知りません。物心ついた時には神殿で、聖女候補として育てられていました。私の生まれ育った家は神殿で、家族は神殿に使える神官やシスター、そして私と同じ聖女候補が姉妹でした。レリアもその一人です。
そんな私は殿下からすると最も卑しい部類に入るらしく、私を酷く嫌っているのです。私の見た目が全く殿下に釣り合わないのも一因でしょうか。確かに私の白髪も赤い瞳も、この国では珍しくていい印象を持たれません。
殿下の婚約者になりたいがため、聖女の力を誤魔化しているのではないかと言われた事もあります。実際、殿下を含めて力を持たない方には、どれくらい力があるかはわかりません。力の有無は王宮か神殿にある聖貴晶に触れるとわかりますが、殿下に言わせるとそんなものはいくらでも誤魔化せるのだそうです。
まぁ、実際結界も目に見えるものではありません。昔は力を持った人が多くいて、力が強い人は結界を見る事が出来たそうですが…今は大神官様でも無理だと言われています。私は辛うじて見えていますが、レリアは見えないというので、今見る事が出来るのは私くらいかもしれません。
だからでしょうか、最近は聖女や結界の存在を疑う人も一定数いるのです。その方たちは聖女や神殿など廃してしまえと言っているのだとか。さすがに神殿は人々の生活に深く関わってくるので廃止は無理でしょうが、聖女に関しては懐疑的に見られているのです。
朝のお勤めでもある結界維持の仕事を終えて戻ってきたと思ったらすぐに殿下に呼び出されて、戻ってきたら今度は騎士達に囲まれているので、全く気が休まりません。
「聖女様、朝食をお持ちしました」
そんな中、無表情で朝食を持って来てくれたのは、私の唯一の専属侍女でもあるレリアでした。茶色の髪をきっちりとまとめ、涼やかな目元に紫の瞳は怜悧さを際立たせていて、彼女の方がよっぽど聖女らしく見えます。
彼女はとある伯爵家のご令嬢ですが、聖女の力があると十歳の頃から神殿で暮らしていた、いわば神殿仲間です。聖女になれなかった彼女は、ご実家が没落寸前で帰れないから私の侍女にして欲しいと頼んできたのです。
「ありがとう、レリア」
「いえ、お食事を抜かれては結界の維持に支障が出ますので」
「そうね」
淡々と話すレリアに私はそう答えると、持って来てくれた朝食を私は遠慮せず頂きました。結界を維持するには凄く力が必要で、実はさっきからお腹がペコペコだったのです。
食べなければ結界を維持するための力も出ませんし、栄養不足が続けば命にも関わります。聖女教育を受けていた時、私達は繰り返し『何があっても食事はしっかり摂るように!』と教えられたくらいです。実のところ、しっかり食べても足りないのですが…聖女になってからの私は、ずっと倦怠感に悩まされていますから。
今日はホカホカのパンと、野菜がたっぷりのスープ、卵焼きにシュラムという果物でした。どれも温かくて味も一級品です。
足りないのは…一緒に楽しく会話が楽しめる相手、でしょうか…聖女になり、王宮に来た時から私は、基本的に食事はいつも一人です。神殿ではみんなでワイワイ集まって食べていたので、あの頃が懐かしく恋しいです。
しかも今日は騎士達に見られている中での食事なので、食欲が半減です。それでもきっちり完食しましたが。
その後は、いつもの湯浴みの時間です。これも聖女としての役目の一環なので、さすがのこの時は騎士達には出て行ってもらいました。
「ルネ様、一体どうなさったのです?」
湯浴みの準備をしながら。レリアが小声でこっそり尋ねてきました。彼女は無表情がデフォルトで能面女と陰で言われていますが、実はとても気の利く優しい人です。そして…私にとっては姉のような存在でもあります。
ただ、それが公になると殿下が嫌がらせに彼女を追い出してしまいそうなので、表面上は不仲な態度をとっているのです。彼女は職務に忠実なだけの冷たい侍女。そんな風に言われていますが、こうして二人きりの時だけは心配して言葉をかけてくれるのです。
「それが…」
湯浴みをしながら私は、殿下に言われた事をレリアに簡単に話しました。私達が話をしているのが周りに知れると面倒なので、私達は視線を合わせる事は決してしません。こうしていると私は独り言を言っているようにしか見えないので、怪しまれる事はないのです。
「なんて事を…あの屑が…!」
さすがにレリアも想定外の事だったらしく、酷く憤慨して殿下に怒りを募らせていました、無表情で。
元よりレリアは、私を粗雑に扱う殿下を、それこそ親の仇のように嫌っています。彼女に言わせると殿下は、顔だけの残念王子だそうですが…私も否定はしません。
「でも、もし本当に聖女の力がある人が召喚されたら、聖女も殿下の婚約者を辞められるわ」
「それは…そうですが…」
そう、聖女も殿下の婚約者も、なりたくてなったわけではないのです。私より力がある方が来て下さったら、この地位は直ぐにでもお譲りしましょう。特に婚約者は代わって下さるなら誰でも構いません。
それに…私の力では結界を守るには力が十分でなく、難しいのです。今は何とか維持出来ていますが…正直言っていつまでもつか…自信がありません。
湯浴みの後は王子妃教育でしたが、今日は講師の先生は誰もいらっしゃいませんでした。きっと殿下が止めているのでしょう。召喚の儀をすると仰っていましたが…一体どんな事をするおつもりなのでしょうか…私の力が必要だと言っていましたが…もう悪い予感しかありません。
私達は婚約者同士ですが、そこには一滴の情も存在していません。殿下に至っては私を憎んですらいるように感じますし、それがこの先も変わる事はないように思います。
私は親を知りません。物心ついた時には神殿で、聖女候補として育てられていました。私の生まれ育った家は神殿で、家族は神殿に使える神官やシスター、そして私と同じ聖女候補が姉妹でした。レリアもその一人です。
そんな私は殿下からすると最も卑しい部類に入るらしく、私を酷く嫌っているのです。私の見た目が全く殿下に釣り合わないのも一因でしょうか。確かに私の白髪も赤い瞳も、この国では珍しくていい印象を持たれません。
殿下の婚約者になりたいがため、聖女の力を誤魔化しているのではないかと言われた事もあります。実際、殿下を含めて力を持たない方には、どれくらい力があるかはわかりません。力の有無は王宮か神殿にある聖貴晶に触れるとわかりますが、殿下に言わせるとそんなものはいくらでも誤魔化せるのだそうです。
まぁ、実際結界も目に見えるものではありません。昔は力を持った人が多くいて、力が強い人は結界を見る事が出来たそうですが…今は大神官様でも無理だと言われています。私は辛うじて見えていますが、レリアは見えないというので、今見る事が出来るのは私くらいかもしれません。
だからでしょうか、最近は聖女や結界の存在を疑う人も一定数いるのです。その方たちは聖女や神殿など廃してしまえと言っているのだとか。さすがに神殿は人々の生活に深く関わってくるので廃止は無理でしょうが、聖女に関しては懐疑的に見られているのです。
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