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私の噂、ご存じですよね?
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どうやらローウェル様は、私が誰かに脅されて仕方なく婚約者に立候補したと思われていたらしい。鋭いよね…確かにその通りなんだから。
でも、きっかけはそうでも、今の私はそれを望んでいるのだ。何と言っても好みど真ん中のワイルド系イケメン。私にとってはそのお姿だけでも素晴らしい価値がある。そして、一度はこの話が流れらと嘆いていて、次にチャンスがあったら必ずものにするんだ!と心に誓っていたのだ。だとしたら…言う事は一つだ!
「私は…このお話をとても光栄に思っています」
直接好きだなんて言うのは、貴族の間では情緒がないからタブーだって言うから、遠回しに、でも遠くなり過ぎないレベルでそう告げたんだけど…そうしたらローウェル様の空気が少し固くなった気がした。あれ?前向き宣言、ダメだった?でも、私もこういう時、どうしていいのかわからないのだもの…
「…セラフィーナ嬢は、私が相手でも嫌ではないと受け取ってもいいのか?」
「ええ、もちろんです」
そうだよ、ドンとこいなのよ!ここはマナー違反かもしれないけど、ストレートに即答した。慣れない私にはこういう時の適切な言い方がわからない。もう若いからその辺知らないから、ストレートに言っちゃいました~で通すまでよ。
あ、だけど、これだけは聞いておかなきゃ。
「私は嬉しく思いますが、ローウェル様は私でよろしいのでしょうか?」
「私は嬉しく」のところを強調して、これまで気になっていた事を尋ねた。いや、藪蛇かとも思ったんだけど、もし相手が知らなかった場合、後で揉めるのも嫌だからさぁ…そうなった場合、嫌悪感が三倍くらいになりそうだったから、これだけは確認しておきたかったんだよね。
「私」は貞操観念強いけど、「セラフィーナ」はそうじゃなかったらしいからね。記憶を失った事になっているから、過去を気にしないでくれたら有難いのだけど…
「それはどういう意味で?」
「その…ご存じかもしれませんが…私は三か月ほど前に階段から落ちて、それ以前の記憶を失っているのです。それで…以前の私は男性とのお付き合いが盛んだったと噂されているらしくて…」
「ああ、その事か」
「…ご存じだったのですね」
ガーン!と頭の中で銅鑼が鳴ってリフレインしていた。うう、やっぱり知っていたんだ…その可能性は高いと思っていたけど…
「だが、噂だろう?」
「そうなのでしょうか…思い出せないから、私にはわからなくて…」
ここはちょっと悲し気な演技してもいい?でも、本当に身に覚えがないのは間違いないのよ―!
「…それに関しては、気になさる必要はない」
「え?でも…」
「失礼ながら、貴女の身の回りについてはこちらが…というか陛下がお調べになった」
「ええ?」
そ、それは初耳というか…でも、あり得る話よね。だって王家の血に連なる者の縁談あんだから、相手の身辺調査は必須だろう。そっか、心配していたけど、私の事なんてとっくに調査済みだったのね。
「貴女が言ったような噂は確かにある。しかし、そのような相手は見つからなかった」
「ええっ?」
「陛下がお調べになった以上、相手がいれば必ず見つけ出すだろう。となれば、所詮は噂。そんなものに踊らされる必要はない」
「……」
(なんですって―――!!!)
じゃ、じゃあ、あの令嬢たちの言っていた事は、全部嘘って事?
でも、彼女たちの様子からは、とても彼女たちが仕組んだとは思えなかったんだけど?それに、婚約者との間がおかしくなったのも間違いなさそうだし…
「そういう訳で、私としては何ら問題がない。むしろ…」
そこでローウェル様は一旦言葉を切られた。えっと、何でしょうか…
「貴女の事はその、とても好ましいと思う」
「え?」
「私の傷を見ても恐れず、それどころか、私の仕事ぶりを評価してくれた。今まで…そのような事を言う者はいなかった」
「そ、そうですか…」
ま、まぁ、この世界の令嬢達だとそうかもしれないわね。なよっとしたのが好みらしいし、それに働いた事もないお貴族様のご令嬢には、身体張って仕事する大変さなんかわからないだろう。私は社畜って言われるほど働いていたから、逆にそう言うところが気になるんだけど…
そんな事を漠然と考えていたら、不意に手を取られた。
「セラフィーナ嬢。貴女さえよければ、私の婚約者に、いずれは妻になって頂けないだろうか?」
見上げた先には、穏やかな目で私を見下ろすローウェル様がいた。その姿にまた心拍数が上がっていくんですけど―!ダメだ、絶対に顔が赤くなっている自信がある…
あまりにも嬉し過ぎる展開にすっかり頭の中が真っ白になった私は…こくこくと頷いて答える事しか出来ず、後になってもっと淑女らしく出来なかったのか、自分!と後悔するのだった。
そんな私の心情に反して、翌日には正式にローウェル侯爵家から求婚の書簡が届き、その翌日には陛下の裁可が下りると言う、ほぼ最短で婚約が成立した。
でも、きっかけはそうでも、今の私はそれを望んでいるのだ。何と言っても好みど真ん中のワイルド系イケメン。私にとってはそのお姿だけでも素晴らしい価値がある。そして、一度はこの話が流れらと嘆いていて、次にチャンスがあったら必ずものにするんだ!と心に誓っていたのだ。だとしたら…言う事は一つだ!
「私は…このお話をとても光栄に思っています」
直接好きだなんて言うのは、貴族の間では情緒がないからタブーだって言うから、遠回しに、でも遠くなり過ぎないレベルでそう告げたんだけど…そうしたらローウェル様の空気が少し固くなった気がした。あれ?前向き宣言、ダメだった?でも、私もこういう時、どうしていいのかわからないのだもの…
「…セラフィーナ嬢は、私が相手でも嫌ではないと受け取ってもいいのか?」
「ええ、もちろんです」
そうだよ、ドンとこいなのよ!ここはマナー違反かもしれないけど、ストレートに即答した。慣れない私にはこういう時の適切な言い方がわからない。もう若いからその辺知らないから、ストレートに言っちゃいました~で通すまでよ。
あ、だけど、これだけは聞いておかなきゃ。
「私は嬉しく思いますが、ローウェル様は私でよろしいのでしょうか?」
「私は嬉しく」のところを強調して、これまで気になっていた事を尋ねた。いや、藪蛇かとも思ったんだけど、もし相手が知らなかった場合、後で揉めるのも嫌だからさぁ…そうなった場合、嫌悪感が三倍くらいになりそうだったから、これだけは確認しておきたかったんだよね。
「私」は貞操観念強いけど、「セラフィーナ」はそうじゃなかったらしいからね。記憶を失った事になっているから、過去を気にしないでくれたら有難いのだけど…
「それはどういう意味で?」
「その…ご存じかもしれませんが…私は三か月ほど前に階段から落ちて、それ以前の記憶を失っているのです。それで…以前の私は男性とのお付き合いが盛んだったと噂されているらしくて…」
「ああ、その事か」
「…ご存じだったのですね」
ガーン!と頭の中で銅鑼が鳴ってリフレインしていた。うう、やっぱり知っていたんだ…その可能性は高いと思っていたけど…
「だが、噂だろう?」
「そうなのでしょうか…思い出せないから、私にはわからなくて…」
ここはちょっと悲し気な演技してもいい?でも、本当に身に覚えがないのは間違いないのよ―!
「…それに関しては、気になさる必要はない」
「え?でも…」
「失礼ながら、貴女の身の回りについてはこちらが…というか陛下がお調べになった」
「ええ?」
そ、それは初耳というか…でも、あり得る話よね。だって王家の血に連なる者の縁談あんだから、相手の身辺調査は必須だろう。そっか、心配していたけど、私の事なんてとっくに調査済みだったのね。
「貴女が言ったような噂は確かにある。しかし、そのような相手は見つからなかった」
「ええっ?」
「陛下がお調べになった以上、相手がいれば必ず見つけ出すだろう。となれば、所詮は噂。そんなものに踊らされる必要はない」
「……」
(なんですって―――!!!)
じゃ、じゃあ、あの令嬢たちの言っていた事は、全部嘘って事?
でも、彼女たちの様子からは、とても彼女たちが仕組んだとは思えなかったんだけど?それに、婚約者との間がおかしくなったのも間違いなさそうだし…
「そういう訳で、私としては何ら問題がない。むしろ…」
そこでローウェル様は一旦言葉を切られた。えっと、何でしょうか…
「貴女の事はその、とても好ましいと思う」
「え?」
「私の傷を見ても恐れず、それどころか、私の仕事ぶりを評価してくれた。今まで…そのような事を言う者はいなかった」
「そ、そうですか…」
ま、まぁ、この世界の令嬢達だとそうかもしれないわね。なよっとしたのが好みらしいし、それに働いた事もないお貴族様のご令嬢には、身体張って仕事する大変さなんかわからないだろう。私は社畜って言われるほど働いていたから、逆にそう言うところが気になるんだけど…
そんな事を漠然と考えていたら、不意に手を取られた。
「セラフィーナ嬢。貴女さえよければ、私の婚約者に、いずれは妻になって頂けないだろうか?」
見上げた先には、穏やかな目で私を見下ろすローウェル様がいた。その姿にまた心拍数が上がっていくんですけど―!ダメだ、絶対に顔が赤くなっている自信がある…
あまりにも嬉し過ぎる展開にすっかり頭の中が真っ白になった私は…こくこくと頷いて答える事しか出来ず、後になってもっと淑女らしく出来なかったのか、自分!と後悔するのだった。
そんな私の心情に反して、翌日には正式にローウェル侯爵家から求婚の書簡が届き、その翌日には陛下の裁可が下りると言う、ほぼ最短で婚約が成立した。
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