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あ~る~晴れた~ひ~る~下がり~
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王家からの書状が届いた三日後、私はクリフォードさんとシンシアさんに連れられて、王宮へと連行された。いや、実際にはただの呼び出しなんだけど、私からしたら連行された気分も同然なのだ。
だって、国王陛下が私を呼び出したって事は…ローウェル様との婚約はほぼ本決まりなんでしょ?内示出たんだよね?転勤だって内示が出たらもう変更不可だよ?嫌なら内示が出る前に阻止しなきゃいけないんだから…
時間がなかったので、ドレスなどの用意が間に合いません!と断ってやろうと思ったのに、お使いが来た翌日にはレイトン侯爵からドレスが数着と、それに合わせた装飾品一式が届いた。しかもサイズがピッタリだ。
どうして?何で?この世界の貴族の服ってオーダーメイドだよね?それを翌日には届けるって…
もしかしてこれ、前々から仕組まれてたの?
あのお茶会での断罪は最初から決まっていたとか?
いや、ドレスを作る時間を入れるとその前から?
だからドレスも事前に準備されていたわけ?
クリフォードさんとシンシアさんの背中を追いかけながら、私はそんな事を考えていた。この用意周到さは偶然じゃあり得ないよね?
頭の中を流れるのは、もちろんドナドナだ。可愛~い子牛、売られて行~く~よ~…ってあれね。しかもピッタリ昼下がりだし。荷馬車じゃないだけよかったのか?いや、今はセルフ突っ込みしている場合じゃないんだけど…
通されたのは王宮内にある客間だった。ハットン子爵家なんぞ目じゃないくらいに高級で立派な部屋に通された私は、長椅子でクリフォードさんとシンシアさんの間に座ったけど、落ち着かなかった。いや、この状況で落ち着ける人なんているの?売られているのは自分なんだよ?
「セラフィーナ、今日は顔合わせだけだから気楽にな」
「そうよ、最初から仲のいい夫婦なんて少数派ですからね」
「ああ、私達もそうだったからな」
「そうですわね、あなた」
二人はそう言って私を安心させるつもりだったみたいだけど…その口ぶりじゃどう見ても婚約じゃなくて結婚がほぼ確定じゃないだろうか…顔合わせしてタイプじゃないからごめんなさい…は通じない気がするし、そもそもそんな選択肢は私にはないような…?
アイザック=ローウェル様については、ご使者が釣書みたいなものを持ってきたので、それである程度の経歴は知った。経歴なんかは概ねあのお茶会の令嬢たちが言っていた通りで、侯爵家当主で黒晶騎士団長、ついでに国王陛下の甥だった。陛下の姉君がご降嫁されたのがローウェル侯爵家で、アイザック様はその妹王女の息子だった。
や~びっくりだよね?国王陛下の甥が、子爵家の娘を嫁に…なんて。せめて上位貴族の伯爵家以上にしようよ…と思ったんだけど、今まで何度か婚約者候補が上がったらしいけど、悉く辞退されているらしい。
原因はその恐ろし気な容貌と極悪非常な内容の噂で、中には姿を見ただけで卒倒した令嬢もいたんだとか。さすがにそうなると陛下とて無理強いも出来ず、今に至る…んだそうだ。
だったら私も卒倒してもいいだろうか?見た目だけなら儚げで庇護欲をそそるから、そうなっても誰も責めないと思うし…
「おお、待たせたな」
そう言って入ってきたのは…恰幅のいい壮年の男性だった。身につけている物が他の誰とも全く違うところからして…もしかして国王陛下…なのだろうか?いくら甥の結婚とは言っても、子爵家相手に陛下が出てくるとは思わなかった私は…背に嫌な汗が流れるのを感じた。マジか…?
その後に続いて入ってきたのは…同じ年頃のこれまた凛とした気品溢れる女性で、もしかして王妃様だろうか?それともローウェル様の母君の元王女殿下とか?どっちにしても私には雲の上の人過ぎて直視していいのか迷うレベルだ…
「ああ、すまんな。ハットン子爵、忙しいのに」
「いえ、陛下のお呼び出しでございますれば」
「はは、そなたは忠義者よのう。レイトン侯爵からもそちの有能さは聞き及んでおる」
「勿体ないお言葉にございます」
ひゃ~これが王族との会話なのね~と思いながら、私は緊張のあまり会話の内容は殆ど頭に入っていなかった。着慣れないドレスも苦しいし、空気が重くて息をするのも憚られる気がする…
「ところでセラフィーナ嬢よ」
「ひ、ひゃいっ!」
い、いきなりこっちに振ってこないで~!思いっきり噛んじゃったじゃない!
「ふふ、中々初々しいご令嬢のようじゃの」
「ええ、本当に」
「そなた、アイザックの妻に…と立候補したとか」
「え…あ、あの…」
いいえ、立候補していません!強制的に無条件でそうされたんです!とは思ったけれど…さすがに国王陛下に向かって言えなかった。そんな事言ったら不敬罪で牢へまっしぐら…な気がする。相手は国王の甥だからね、下手すりゃ処刑されるかもしんない。だから言っていないなんて絶対に言えないんだけど…違うんですぅ~~~
だって、国王陛下が私を呼び出したって事は…ローウェル様との婚約はほぼ本決まりなんでしょ?内示出たんだよね?転勤だって内示が出たらもう変更不可だよ?嫌なら内示が出る前に阻止しなきゃいけないんだから…
時間がなかったので、ドレスなどの用意が間に合いません!と断ってやろうと思ったのに、お使いが来た翌日にはレイトン侯爵からドレスが数着と、それに合わせた装飾品一式が届いた。しかもサイズがピッタリだ。
どうして?何で?この世界の貴族の服ってオーダーメイドだよね?それを翌日には届けるって…
もしかしてこれ、前々から仕組まれてたの?
あのお茶会での断罪は最初から決まっていたとか?
いや、ドレスを作る時間を入れるとその前から?
だからドレスも事前に準備されていたわけ?
クリフォードさんとシンシアさんの背中を追いかけながら、私はそんな事を考えていた。この用意周到さは偶然じゃあり得ないよね?
頭の中を流れるのは、もちろんドナドナだ。可愛~い子牛、売られて行~く~よ~…ってあれね。しかもピッタリ昼下がりだし。荷馬車じゃないだけよかったのか?いや、今はセルフ突っ込みしている場合じゃないんだけど…
通されたのは王宮内にある客間だった。ハットン子爵家なんぞ目じゃないくらいに高級で立派な部屋に通された私は、長椅子でクリフォードさんとシンシアさんの間に座ったけど、落ち着かなかった。いや、この状況で落ち着ける人なんているの?売られているのは自分なんだよ?
「セラフィーナ、今日は顔合わせだけだから気楽にな」
「そうよ、最初から仲のいい夫婦なんて少数派ですからね」
「ああ、私達もそうだったからな」
「そうですわね、あなた」
二人はそう言って私を安心させるつもりだったみたいだけど…その口ぶりじゃどう見ても婚約じゃなくて結婚がほぼ確定じゃないだろうか…顔合わせしてタイプじゃないからごめんなさい…は通じない気がするし、そもそもそんな選択肢は私にはないような…?
アイザック=ローウェル様については、ご使者が釣書みたいなものを持ってきたので、それである程度の経歴は知った。経歴なんかは概ねあのお茶会の令嬢たちが言っていた通りで、侯爵家当主で黒晶騎士団長、ついでに国王陛下の甥だった。陛下の姉君がご降嫁されたのがローウェル侯爵家で、アイザック様はその妹王女の息子だった。
や~びっくりだよね?国王陛下の甥が、子爵家の娘を嫁に…なんて。せめて上位貴族の伯爵家以上にしようよ…と思ったんだけど、今まで何度か婚約者候補が上がったらしいけど、悉く辞退されているらしい。
原因はその恐ろし気な容貌と極悪非常な内容の噂で、中には姿を見ただけで卒倒した令嬢もいたんだとか。さすがにそうなると陛下とて無理強いも出来ず、今に至る…んだそうだ。
だったら私も卒倒してもいいだろうか?見た目だけなら儚げで庇護欲をそそるから、そうなっても誰も責めないと思うし…
「おお、待たせたな」
そう言って入ってきたのは…恰幅のいい壮年の男性だった。身につけている物が他の誰とも全く違うところからして…もしかして国王陛下…なのだろうか?いくら甥の結婚とは言っても、子爵家相手に陛下が出てくるとは思わなかった私は…背に嫌な汗が流れるのを感じた。マジか…?
その後に続いて入ってきたのは…同じ年頃のこれまた凛とした気品溢れる女性で、もしかして王妃様だろうか?それともローウェル様の母君の元王女殿下とか?どっちにしても私には雲の上の人過ぎて直視していいのか迷うレベルだ…
「ああ、すまんな。ハットン子爵、忙しいのに」
「いえ、陛下のお呼び出しでございますれば」
「はは、そなたは忠義者よのう。レイトン侯爵からもそちの有能さは聞き及んでおる」
「勿体ないお言葉にございます」
ひゃ~これが王族との会話なのね~と思いながら、私は緊張のあまり会話の内容は殆ど頭に入っていなかった。着慣れないドレスも苦しいし、空気が重くて息をするのも憚られる気がする…
「ところでセラフィーナ嬢よ」
「ひ、ひゃいっ!」
い、いきなりこっちに振ってこないで~!思いっきり噛んじゃったじゃない!
「ふふ、中々初々しいご令嬢のようじゃの」
「ええ、本当に」
「そなた、アイザックの妻に…と立候補したとか」
「え…あ、あの…」
いいえ、立候補していません!強制的に無条件でそうされたんです!とは思ったけれど…さすがに国王陛下に向かって言えなかった。そんな事言ったら不敬罪で牢へまっしぐら…な気がする。相手は国王の甥だからね、下手すりゃ処刑されるかもしんない。だから言っていないなんて絶対に言えないんだけど…違うんですぅ~~~
応援ありがとうございます!
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