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ステラ復活?
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「な……! 割れ、た?」
「ルークさん、外れてます……」
デルに言われた通りに魔道具を触ったら、綺麗に真っ二つになった。こんなに簡単に外れるとは思わなかった。これまでの苦労は何だったんだ……?
「何で割れたんだよ、これ」
「理屈は簡単。今まで散々光属性の魔力を流したところに、わしの闇属性の魔力を流したからじゃろう」
「デルの魔力を?」
「わしは闇に特化している。光と闇は相反する性質を持つから、それが同時に流れて耐え切れなくなったのじゃろう」
そうなのか? その辺はよくわからないが、でも割れたのならデルの言う通りなのだろう。まさかこんなに呆気なく割れるとは思わなかったけど。
「デルミーラさん、ありがとうございます! これで私も魔術が使えます!」
ステラが感極まって泣きそうになりながらデルにお礼を言っていた。魔術師が魔術を使えないのって、結構辛いんだよな。当り前のことが出来ないって感じで。例えば聞き手が仕えないとか、そういう感じなのだ。
「そうかそうか、恩に着るのじゃ」
「勿論です! 私に出来ることならなんで……」
「ステラ、待て! 早まるな!」
皆まで言い切る前にステラの言葉を遮った。何でもするなんて言ったら何を要求されるかわかったもんじゃない。そう思ったからだ。
「何じゃ、ルークは。急に大声を出して」
「ステラが危険だと感じただけだ」
「何じゃ、それは。まるでわしが危険人物のようではないか」
「自覚がないのが一番怖えんだよ……」
がめついデル相手じゃ、ステラなんかあっという間に搾取されて抜け殻になりそうで怖い。知り合いがそういう目に遭うのはさすがに見たくなかった。
翌日、ネイトさんが気になった俺は、デルとステラと共にネイトさんの家に向かった。何か手掛かりがあればと思ったし、もしかしたら帰ってきているかと思ったからだ。
「……どうやら、まだ戻っていなさそうじゃな」
「だな」
家の前で呼んだが、誰も出てこなかった。さすがに家に勝手に入るわけにはいかないが、家の中にネイトさんの魔力は感じなかったから、家にはいないのだろう。そう思ったんだけど……
「何だか、家の中に魔力の反応を感じます」
そう言い出したのはステラだった。俺もデルも何も感じなかったが、彼女は何かを感じ取ったらしい。これは魔力の属性によるものだろうか。
「どうする? 勝手に入ってもいいのか?」
「どうであろうな。それなら恋人に立ち会わせよう」
そう言うとデルは、魔術で鳥を作り出して放った。鳥は一直線にどこかへと飛んでいった。
「まぁまぁ、デルミーラ様。お久しぶりです」
小一時間ほど経っただろうか。ネイトさんよりも少し若そうな上品な女性が現れた。控えめで優しそうな女性だ。なるほど、ネイトさんの好みはこんな感じか。
「すまぬな、ロリーヌ。仕事中だったのだろう?」
「いいえ。デルミーラ様のご用でしたら何をおいても参りますわ」
にこにこと笑顔のロリーヌさんは、幼年学校の寮母さんを思い出させた。優しくてみんなの母親代わりのような人だった。あの頃既におばあちゃんだったから、今は生きているのかさえ分からないけど、元気でいるだろうか。
「じゃ、開けますね。ネイトー? いるのー? 入るわよー!」
念のためにと声をかけて中に入ると……家の中は真っ暗だった。人のいる気配もない。
「あらら、やっぱりいないみたいですね」
一応寝室なども見て貰ったけど、ネイトさんの姿はなかった。
「ロリーヌ、ネイトの行き先に心当たりは?」
「そうでぅねぇ……最近は会っていなかったので何とも。もうじき監査があるので私も休みが取れなくて……」
「そう、か」
どうやらロリーヌさんが文官なのは間違いなかったらしい。こんなにおっとりした感じの人なのに、ちょっと意外だった。俺の中の文官は、切れ者で笑顔とは無縁だったからだ。
「あの……これって何でしょう?」
周囲を見渡していたステラが指さしたのは、小さな四角い箱の中で眠る小さな……猫、だった。茶色の毛並みが随分と萎れているように見えた。
「やだ、あの人ったら猫なんか飼っていたの? 動物なんか嫌いだって言っていたのに」
「うむ。確かにその通りじゃな」
ロリーヌさんとデルがしみじみとそう言った。ネイトさんは動物嫌いだったのか。そう言えば俺のドラゴン姿を見た時も、驚き過ぎだろうってくらい驚いていたけど、あれって動物が苦手だったからかもしれない。
「あの……この猫から、何というか、魔力を感じるんですけど……」
「は?」
「この猫から?」
俺もデルも気づかない何かをステラが気付いたらしい。
「もしかして、外で感じた魔力ってのは……」
「ええ。この猫ちゃん、だと思います」
「「はぁああつ?!」」
俺はデルと顔を見合わせた。この茶色の猫が、ネイトさんだと? 一体どういうことだ?
「ルークさん、外れてます……」
デルに言われた通りに魔道具を触ったら、綺麗に真っ二つになった。こんなに簡単に外れるとは思わなかった。これまでの苦労は何だったんだ……?
「何で割れたんだよ、これ」
「理屈は簡単。今まで散々光属性の魔力を流したところに、わしの闇属性の魔力を流したからじゃろう」
「デルの魔力を?」
「わしは闇に特化している。光と闇は相反する性質を持つから、それが同時に流れて耐え切れなくなったのじゃろう」
そうなのか? その辺はよくわからないが、でも割れたのならデルの言う通りなのだろう。まさかこんなに呆気なく割れるとは思わなかったけど。
「デルミーラさん、ありがとうございます! これで私も魔術が使えます!」
ステラが感極まって泣きそうになりながらデルにお礼を言っていた。魔術師が魔術を使えないのって、結構辛いんだよな。当り前のことが出来ないって感じで。例えば聞き手が仕えないとか、そういう感じなのだ。
「そうかそうか、恩に着るのじゃ」
「勿論です! 私に出来ることならなんで……」
「ステラ、待て! 早まるな!」
皆まで言い切る前にステラの言葉を遮った。何でもするなんて言ったら何を要求されるかわかったもんじゃない。そう思ったからだ。
「何じゃ、ルークは。急に大声を出して」
「ステラが危険だと感じただけだ」
「何じゃ、それは。まるでわしが危険人物のようではないか」
「自覚がないのが一番怖えんだよ……」
がめついデル相手じゃ、ステラなんかあっという間に搾取されて抜け殻になりそうで怖い。知り合いがそういう目に遭うのはさすがに見たくなかった。
翌日、ネイトさんが気になった俺は、デルとステラと共にネイトさんの家に向かった。何か手掛かりがあればと思ったし、もしかしたら帰ってきているかと思ったからだ。
「……どうやら、まだ戻っていなさそうじゃな」
「だな」
家の前で呼んだが、誰も出てこなかった。さすがに家に勝手に入るわけにはいかないが、家の中にネイトさんの魔力は感じなかったから、家にはいないのだろう。そう思ったんだけど……
「何だか、家の中に魔力の反応を感じます」
そう言い出したのはステラだった。俺もデルも何も感じなかったが、彼女は何かを感じ取ったらしい。これは魔力の属性によるものだろうか。
「どうする? 勝手に入ってもいいのか?」
「どうであろうな。それなら恋人に立ち会わせよう」
そう言うとデルは、魔術で鳥を作り出して放った。鳥は一直線にどこかへと飛んでいった。
「まぁまぁ、デルミーラ様。お久しぶりです」
小一時間ほど経っただろうか。ネイトさんよりも少し若そうな上品な女性が現れた。控えめで優しそうな女性だ。なるほど、ネイトさんの好みはこんな感じか。
「すまぬな、ロリーヌ。仕事中だったのだろう?」
「いいえ。デルミーラ様のご用でしたら何をおいても参りますわ」
にこにこと笑顔のロリーヌさんは、幼年学校の寮母さんを思い出させた。優しくてみんなの母親代わりのような人だった。あの頃既におばあちゃんだったから、今は生きているのかさえ分からないけど、元気でいるだろうか。
「じゃ、開けますね。ネイトー? いるのー? 入るわよー!」
念のためにと声をかけて中に入ると……家の中は真っ暗だった。人のいる気配もない。
「あらら、やっぱりいないみたいですね」
一応寝室なども見て貰ったけど、ネイトさんの姿はなかった。
「ロリーヌ、ネイトの行き先に心当たりは?」
「そうでぅねぇ……最近は会っていなかったので何とも。もうじき監査があるので私も休みが取れなくて……」
「そう、か」
どうやらロリーヌさんが文官なのは間違いなかったらしい。こんなにおっとりした感じの人なのに、ちょっと意外だった。俺の中の文官は、切れ者で笑顔とは無縁だったからだ。
「あの……これって何でしょう?」
周囲を見渡していたステラが指さしたのは、小さな四角い箱の中で眠る小さな……猫、だった。茶色の毛並みが随分と萎れているように見えた。
「やだ、あの人ったら猫なんか飼っていたの? 動物なんか嫌いだって言っていたのに」
「うむ。確かにその通りじゃな」
ロリーヌさんとデルがしみじみとそう言った。ネイトさんは動物嫌いだったのか。そう言えば俺のドラゴン姿を見た時も、驚き過ぎだろうってくらい驚いていたけど、あれって動物が苦手だったからかもしれない。
「あの……この猫から、何というか、魔力を感じるんですけど……」
「は?」
「この猫から?」
俺もデルも気づかない何かをステラが気付いたらしい。
「もしかして、外で感じた魔力ってのは……」
「ええ。この猫ちゃん、だと思います」
「「はぁああつ?!」」
俺はデルと顔を見合わせた。この茶色の猫が、ネイトさんだと? 一体どういうことだ?
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