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護身術は大事

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 あの後、街に戻ったカリュンがアンザさん達を連れて戻ってきた。魔馬は普通の馬よりも体が大きいのもあって、カリュンはアンザさんとガルアを乗せてやってきた。
 ガルアはリューンが攫われたと聞いて死にそうな顔をしていたから、無事な姿を見て泣き出しそうなほどだった。いや、最後は泣いていた。自分の姿でああも取り乱されると、何と言うか複雑な気分だ。そしてリューンと抱き合って無事を確認している様も、何というか、なぁ……いや、仲がよくて何よりなんだけど。

「あ~お二人さん、そういうことは二人きりの時にやってくれ」

 アンザさんがニヤニヤしながらそう言った。カリュンもいるし、確かに目のやり場に困るから助かった。なんか、俺が言うと僻んでいると思われそうな気がして声をかけづらかったのだ。

 リューンたちを攫った男たちは、あの後俺が転移で街に連れ帰った。犯罪者を野放しにするのは危険だし、背後関係もしっかり調べておきたいのもある。また同じことをされても迷惑だ。他に仲間がいるかと思っていたが、あの四人だけだった。
 男たちの動機は至って簡単、金だった。聖属性持ちは人身売買で高く売れるのだという。確かにリューンは聖属性持ちで、銀髪だから目立つ。しかも光属性のステラも一緒だったから尚更だろう。

 翌日、この地を治める行政官に連絡すると、三日ほどしてから騎士がやって来た。あの四人の男を引き渡すと、彼らはこの辺の村や旅人、商人たちを襲っている破落戸グループだと教えてくれた。どうやら余罪が山ほどあるらしく、騎士達も行方を追っていたらしい。お陰で非常に感謝された。いい意味で繋がりが出来たのは収穫だろう。

「協力に感謝する」
「いや、こっちも若い娘が攫われそうになったから助かった」

 若い娘は売れるから狙われやすいので十分注意するようにと、騎士から念を押された。確かに女子供だけで街の外に出たのは迂闊だった。今度からはガルアをつける事にしよう。

(ついでにガルアにも、魔術を教えた方がいいかも)

 ガルアはドラゴンだった頃の意識が未だに強く残っているのがずっと気になっていた。ドラゴンは脳筋で、力業でなんでも解決する種族だ。ドラゴンだった頃はそれでもよかっただろうが、人間の今は戦闘力はかなり低い。

「ガルア、魔術を使えるようになりたくないか?」
「魔術?」
「ああ。今の祖の身体ではドラゴンのようにリューンを守れないだろう?」
「……そ、それは……」

 どうやら自覚はあったらしい。ドラゴンならブレス一つで大抵のことは片付くが、人間ではそうはいかない。

「しかし、我にそんなことが出来るのか?」
「俺の身体は魔術師になれるだけの魔力があるからな。魔力の使い方を覚えれば出来るだろう」
「そうなのか?」
「ああ。訓練すれば簡単な護身用の魔術くらいは使える筈だ」
「そうか! だ、だったら頼む。この身体は力がなさ過ぎて心許なかったのだ。これではリューンを守れぬ」

 予想以上に食いついてきたガルアだったが……

(悪かったな、力がなさ過ぎて。俺の身体は筋肉が付きにくいんだよ……)

 人の身体を奪っておいて、その言い方はないだろう。ない筈だ。相変わらず無神経というか、人間じゃないからか、その辺の機微がわからないのも不安要素だったりする。気を付けないと相手に恨まれそうなんだよな。まぁ、今のところ街人とは仲良くやっているんだけど。

 思うところは色々あったけど、こんな感じでガルアに魔術を仕込むことになった。リューンも一緒だ。聖属性が強いけど水属性も持っているリューンなら、水を使った魔術も操れる。ちょっとした暴漢から身を守るくらいは出来るだろう。
 慣れというものは怖いもので、俺の身体を返せと思う気持ちは随分薄れていた。不便を感じていないし、前よりも出来る事が増えて快適だからだろうか。
 だからと言ってあの身体への愛着が消えたわけじゃない。出来るだけ大事に、長生き出来るように使って欲しいし、これ以上傷を増やして欲しくないとも思う。最初は偉そうで好きになれそうになかったガルアだったが、妙な親しみを持つようになったのもまた事実だった。

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