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俺の身体との対面

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「……何者だ?」

 目覚めたガルアは、俺の顔と俺の声で、俺に警戒を露わにした。自分にそんな風にみられるなんて不思議な感じだな、と俺は呑気にそんなことを思っていた。俺にはここまで鋭い目をすることは出来ないだろう。あの目はガルア自身の性質を物語っているように見えた。

「俺は人探しの旅をしている者だ」
「人探し?」
「ああ。青緑の髪に金の瞳、そして左半身に酷い傷を持つ男だよ」
「……! き、っ貴様……!」

 ベッドに横たわっていたガルアが突然体を起こそうとした。

「ガルア! どうしたの? 急に起きちゃダメよ!」
「放せ、リューン。この男は危険だ!」

 リューンがガルアの身体を気遣ってか慌てて諫めたが、ガルアは聞く耳を持たなかった。やっぱり遮音魔術をかけておいて正解だったなと思う。

「あ~もう、落ち着けって。何も取って食おうなんて思っちゃいないんだから」
「貴様っ!」
「ほら、リューンが心配するだろうが。落ち着けって」
「ガルア! ルークさんの言う通りよ。お願いだから落ち着いて!」
「リューン! 騙されるな! こいつは敵だ!」

 リューンが必死に諫めるが、ガルアにはリューンの声は届いていなかった。仕方がない。ここで暴れられても困るし。俺は拘束魔術でガルアを戒めた。

「ぐっ! き、貴様、やはり……!」

 今にも射殺さんばかりの視線を向けられたけど、どうやら魔術を使って反撃するとかは出来ないらしい。大人しく拘束されてくれた。これでようやく会話が出来そうだ。

「だから落ち着けって。無駄に体力使うとリューンを守れねぇぞ」
「ぐっ!」

 一応声が出ないようにもした。こっちの話を聞く気になったら解除すればいいだろう。それまではまずはこっちの話を聞かせないと始まりそうにない。

「俺の要求は質問に答えてもらうことだけだ。危害を加える気はない。だから落ち着け。話を聞いたらあの小屋に戻してやってもいい。いいか?」

 最後にガルアを真っすぐに見て尋ねた。暫くの間俺を睨みつけていたが、リューンがガルアと呼びかけると、少し迷った後で小さく頷いた。

「話が分かる奴で助かったよ。まずは質問だ。お前さんは誰だ? どうしてその姿を取っている?」
「何のことだ?」
「しらばっくれる必要はねぇよ。俺もまどろっこしいことは好きじゃないからはっきり言おう。その身体は俺が探していた奴のものだ」

 俺の言葉にガルアの顔に驚きが広がった。どうやら俺が言いたい事が伝わったらしい。暫くして驚きの波が引くと、悔しそうな、いや、忌々しそうな表情に変わった。

「ブルードラゴン」
「な!」
「え?」

 俺が一言そう言うと、明らかにガルアとリューンの表情が変わった。それだけで十分だろう。

「どうやら図星だったらしいな。ああ、お前らの想像通り、俺の今の身体はブルードラゴンだ」
「まさか! ドラゴンが人間の姿になどなれるはずが……!」
「それが出来ちゃってるんだよな。人間が使う変装の魔術だ。ほら」

 そう言うと俺は、サイズはそのままに人化を解除した。人間サイズのブルードラゴンの出来上がりだ。

「ば、馬鹿な……! そんなことが……!」

 どうやらガルアには理解出来ない状況らしい。絶望というか、この世の終わりのような表情になっていた。いや、そこまでショックを受けなくてもいいと思うんだが……

「この姿、元々はガルア、あんたのだろう?」
「っ」
「なぁ、どうして俺たち入れ替わたんだ? そこの事情を知りたいんだ。俺にも知る権利はあると思わないか?」
「それは……」
「ま、待ってください! ルークさん! わ、私のせいなんです! 私がガルアに無理を言ったから!」
「まて、リューン。そなたのせいではない。私が望んだことだ!」
「ううん、私のせいよ。だって私が……」

 あ~、これ、放っておいたら終わらないパターンだよな。仲がいいのはいいんだけど、俺の姿で女の子といちゃつくの、ちょっとやめて欲しい。なんていうか、すげー惨めな気分になるし。いや、俺に恋人がいなかったからとかっていう訳じゃない。ないけど……

「あ~はいはい。痴話げんかは後でやってくれ。今は俺の質問に答えて欲しいんだけど?」

 俺が呆れながらもそう言うと、二人がようやく口を閉じた。何だよ、二人して顔を赤くしているの。俺、お邪魔虫みたいじゃねぇか……




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