20 / 88
ドラゴンは危険がいっぱい
しおりを挟む
(うう、頭痛ぇ……)
ガンガン痛む頭に目が覚めた。経験した事のない痛みに吐き気までしている。何でこうなっているのかよくわからないが、余りの痛さに目が覚めたことを恨めしく思った。
「目が覚めたか?!」
「うぐっ!」
痛む頭を抱えながらものそりと身体を興すと、直ぐ近くから大きな声が聞こえて、思わず変な悲鳴が出た。そんな大きな声を出さないで欲しい……いや、マジで。そして自分の声でダメージを食らう自分がいた。どうなっているんだよ、おい……
「おい、ルーク! 大丈夫か?!」
「……じゃ、ない……」
「ああ?!」
「大丈夫じゃ、ないです、から、声、小さくして……」
そう言うのが精一杯だった。頭にガンガン声が響いて、頭蓋骨の内側から叩かれている感じだ。
「あ、ああ……すまん……」
どうやらわかってくれたらしいことに安堵した。ここにきてようやく、声をかけたのがネイトさんだと気付いた。そう言えば……ネイトさんと酒盛りしていたんだっけ……
(あれ、それから、どうしたっけ?)
その疑問はネイトさんが答えてくれた。俺はあの時、マダ酒を飲んで意識を失ったらしい。というのも……
「すまなかった。マダ酒は別名ドラゴンキラーと言われていたんだ」
土下座の勢いで謝るネイトさんだったが、俺はドラゴンに禁忌と言われているマダの実で作った酒を飲んだせいでこうなっていた。ドラゴンキラーって、今の俺はドラゴンだから飲んだら死ぬ代物だったのだ。アレを飲んだ直後、俺は血を吐いてぶっ倒れたらしい。それから今までの十日間、意識がなかったとネイトさんが言った
(危っぶねぇ……また死にかけていたのかよ……)
動けるようになったらドラゴンが食べたらダメなものを調べないと。それも最優先で。こんなことで死んだら浮かばれない。
「幸いというか、あの後フィンって娘が訪ねてきて。お前が倒れたと聞いたら治癒魔法をかけてくれたんだ。それがなかったら、死んでいたかもしれん……」
「フィンが。そうか」
それは相当に幸運だったと言えるだろう。聖属性持ちは珍しいし、その中でも治癒魔法が使えるのは更に少ないのだ。そりゃあ、魔術師になれば大半の者は治癒魔法を使えるようになるけど、属性持ちに比べたらその効果は比にもならない。
(元気になったら、礼をしなきゃならないな)
命の恩人だし、彼女が望んでいた魔道具作りくらいは叶えてやりたい。そもそも元凶はネイトさんだし、彼にとってもフィンは恩人だ。そうなればネイトさんだって否やとは言わないだろう。
そのフィンは毎日ここに治癒魔法を掛けに通っているらしい。初対面の相手に律儀な奴だ。いや、魔道具のことで必死なのかもしれないけど。
「ルークさん、意識が戻ったんですね!」
それから半日後、フィンがルゼと共に現れた。相変わらず声が頭に響くので、音量を下げて貰った。それでも目覚めた時よりは随分マシだ。
「ああ。ありがとな。毎日治癒魔法を掛けてくれたんだって」
「ええ。私、冒険者としては殆ど役に立たないけれど、治癒魔法だけは人よりは出来るので。誰かのお役に立てるの、これくらいですし」
そういってフィンが力なく笑った。確かに若い娘が冒険者をするのは難しいだろう。男ですら誰でも出来ることじゃない。それにフィンは背も小さいし、腕なんかみると骨が細い。鍛えても筋肉がつくタイプじゃなさそうだ。
「どうでしょう?」
その日もいつも通りに治癒魔法をかけて貰った。人に治癒魔法をかけて貰うのは久しぶりだ。魔術師やっていた時は、自分で掛ける方が多かったから。その前に、後衛の魔術師が傷を負うことは滅多になかったけど。
「ああ。すげぇな。凄く楽になったよ」
お世辞ではなく、本当に身体が楽になるのを感じた。聖属性のない俺がかける治癒魔法と聖属性持ちのそれでは、想像以上に大きな差があった。属性の相性もあるんだろうけど、これはフィンの聖属性が強いからだろう。確かに瞳は混じりなしの銀色だ。これが属性の違いってやつか。これを十日連続でやって貰って今の状態って、俺って実は相当やばかったんだろう。
(ドラゴンキラー、マジでその通りだったな)
そう言えば、彼らに俺がドラゴンだってことは気付かれなかったんだろうか。そんな疑問が浮かんだけど、直ぐに消えた。もしドラゴンだって知れたらこんなに好意的な態度はとられないだろうから。
ガンガン痛む頭に目が覚めた。経験した事のない痛みに吐き気までしている。何でこうなっているのかよくわからないが、余りの痛さに目が覚めたことを恨めしく思った。
「目が覚めたか?!」
「うぐっ!」
痛む頭を抱えながらものそりと身体を興すと、直ぐ近くから大きな声が聞こえて、思わず変な悲鳴が出た。そんな大きな声を出さないで欲しい……いや、マジで。そして自分の声でダメージを食らう自分がいた。どうなっているんだよ、おい……
「おい、ルーク! 大丈夫か?!」
「……じゃ、ない……」
「ああ?!」
「大丈夫じゃ、ないです、から、声、小さくして……」
そう言うのが精一杯だった。頭にガンガン声が響いて、頭蓋骨の内側から叩かれている感じだ。
「あ、ああ……すまん……」
どうやらわかってくれたらしいことに安堵した。ここにきてようやく、声をかけたのがネイトさんだと気付いた。そう言えば……ネイトさんと酒盛りしていたんだっけ……
(あれ、それから、どうしたっけ?)
その疑問はネイトさんが答えてくれた。俺はあの時、マダ酒を飲んで意識を失ったらしい。というのも……
「すまなかった。マダ酒は別名ドラゴンキラーと言われていたんだ」
土下座の勢いで謝るネイトさんだったが、俺はドラゴンに禁忌と言われているマダの実で作った酒を飲んだせいでこうなっていた。ドラゴンキラーって、今の俺はドラゴンだから飲んだら死ぬ代物だったのだ。アレを飲んだ直後、俺は血を吐いてぶっ倒れたらしい。それから今までの十日間、意識がなかったとネイトさんが言った
(危っぶねぇ……また死にかけていたのかよ……)
動けるようになったらドラゴンが食べたらダメなものを調べないと。それも最優先で。こんなことで死んだら浮かばれない。
「幸いというか、あの後フィンって娘が訪ねてきて。お前が倒れたと聞いたら治癒魔法をかけてくれたんだ。それがなかったら、死んでいたかもしれん……」
「フィンが。そうか」
それは相当に幸運だったと言えるだろう。聖属性持ちは珍しいし、その中でも治癒魔法が使えるのは更に少ないのだ。そりゃあ、魔術師になれば大半の者は治癒魔法を使えるようになるけど、属性持ちに比べたらその効果は比にもならない。
(元気になったら、礼をしなきゃならないな)
命の恩人だし、彼女が望んでいた魔道具作りくらいは叶えてやりたい。そもそも元凶はネイトさんだし、彼にとってもフィンは恩人だ。そうなればネイトさんだって否やとは言わないだろう。
そのフィンは毎日ここに治癒魔法を掛けに通っているらしい。初対面の相手に律儀な奴だ。いや、魔道具のことで必死なのかもしれないけど。
「ルークさん、意識が戻ったんですね!」
それから半日後、フィンがルゼと共に現れた。相変わらず声が頭に響くので、音量を下げて貰った。それでも目覚めた時よりは随分マシだ。
「ああ。ありがとな。毎日治癒魔法を掛けてくれたんだって」
「ええ。私、冒険者としては殆ど役に立たないけれど、治癒魔法だけは人よりは出来るので。誰かのお役に立てるの、これくらいですし」
そういってフィンが力なく笑った。確かに若い娘が冒険者をするのは難しいだろう。男ですら誰でも出来ることじゃない。それにフィンは背も小さいし、腕なんかみると骨が細い。鍛えても筋肉がつくタイプじゃなさそうだ。
「どうでしょう?」
その日もいつも通りに治癒魔法をかけて貰った。人に治癒魔法をかけて貰うのは久しぶりだ。魔術師やっていた時は、自分で掛ける方が多かったから。その前に、後衛の魔術師が傷を負うことは滅多になかったけど。
「ああ。すげぇな。凄く楽になったよ」
お世辞ではなく、本当に身体が楽になるのを感じた。聖属性のない俺がかける治癒魔法と聖属性持ちのそれでは、想像以上に大きな差があった。属性の相性もあるんだろうけど、これはフィンの聖属性が強いからだろう。確かに瞳は混じりなしの銀色だ。これが属性の違いってやつか。これを十日連続でやって貰って今の状態って、俺って実は相当やばかったんだろう。
(ドラゴンキラー、マジでその通りだったな)
そう言えば、彼らに俺がドラゴンだってことは気付かれなかったんだろうか。そんな疑問が浮かんだけど、直ぐに消えた。もしドラゴンだって知れたらこんなに好意的な態度はとられないだろうから。
44
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる