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舞踏会が始まりました
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今年の創世祭は、お兄様が大国の王太子殿下の婚約者に選ばれるという、国にとっては明るい兆しの中での開催となりました。これまで交流が薄かった大国と縁を結ぶのは、想像以上に期待が大きいもののようです。勿論、エルネスト様がアドリエンヌ様に婿入りする事も内定しているので、国としては二重の意味で慶事です。まぁ、エルネスト様達の方はあまり喜べる話ではありませんが、それでも国の王族同士の婚姻となれば交流も増すので、国としては有難いのですよね。
「初めての参加なので…圧倒されますね」
「そうですか?でも、リシャール様は負けていませんわ。とても…素敵です」
「…ありがとうございます」
創世祭の舞踏会は最も華やかで煌びやかですが、リシャール様だってよその子息たちに負けていませんわ。落ち着きもあって堂々としていますもの。こう言っては何ですが、エルネスト様の十倍以上は素敵です。
そのエルネスト様ですが、今日はアドリエンヌ様をエスコートして参加されていました。お二人は共に金の髪をお持ちなので、今日の衣装はシャンパンゴールドで合わせていて、瞳の色の青と翡翠色が差し色として入っています。並ぶと美男美女でお似合いではありますが…あんな事があったせいか警戒心が消えないのはあの二人故、でしょうか。
「本当に納得したのかしら…」
お母様が疑わしそうにそう言いましたが、ものすごく同感ですわ。
「そうでなければここにはおらんだろう。だが、そう思う気持ちはわかるな」
お父様もまだ一安心とは思えないようです。このまま何事もなく終わって欲しいと思うのはそんなに途方もない願いではない筈ですが、あの二人が絡むととんでもなく難しい事の様に思えてしまうのですよね。
そんな中、特に人が集まっていたのはセレスティーヌ様の周りでした。大国の王太子ともなれば、縁を結びたいと願う人が我こそはと押しかけるのも無理はないでしょう。お兄様はセレスティーヌ様の隣で笑みを浮かべていますが、アドリエンヌ様が近づかないかと冷や冷やしてしまいますわ。理性で抑えていても、お兄様を見たら箍が外れて一直線に突撃しそうなのですよね。これまでがこれまでですし、「奇天烈姫」や「狂犬姫」の二つ名がその事実を物語っていますから。
「近づけないように人を配置しているが…我々も気を付けて見守るしかあるまい」
お父様の言葉通りですわね。今まではエルネスト様の隣が苦痛で早く終わらないかと思っていましたが…彼らが何かしでかさないかと冷や冷やしながら見守るのは別の意味でスリリングで、別の意味で早く無事に終わって欲しいですわ。
私達の不安をよそに、舞踏会は華やかに進んでいきます。懸念はありましたが、せっかくの舞踏会です。今日は三度もリシャール様と踊ることが出来た私は大満足です。エルネスト様とは義務の一つとして義務感だけで踊っていましたが、実は私、ダンスは好きなのですよね。以前はお父様やお兄様とよく踊っていましたから。リシャール様はダンスもお上手な上、私を気遣って下さるので凄く踊りやすいのです。
「リシャール様、ダンスがお上手ですよね」
「そんな事はありませんよ。レティが上手なのですよ」
「いいえ、リシャール様のリードのお陰ですわ」
婚約者と踊るダンスがこんなにも心まで踊るものだったなんて…それにこんな時でもないとリシャール様に触れるなんて恥ずかしくて出来ないのですよね。そういう意味でもダンスを好きな人と踊るのは、特別感に溢れていますわ。
(このまま何もなく終わってくれないかしら)
せっかくの楽しく満ち足りた気分に、私はこのまま何事もなく舞踏会が終わってくれないかと思っていましたが…残念ながらそんな期待はバッサリと裏切られるのでした。
「初めての参加なので…圧倒されますね」
「そうですか?でも、リシャール様は負けていませんわ。とても…素敵です」
「…ありがとうございます」
創世祭の舞踏会は最も華やかで煌びやかですが、リシャール様だってよその子息たちに負けていませんわ。落ち着きもあって堂々としていますもの。こう言っては何ですが、エルネスト様の十倍以上は素敵です。
そのエルネスト様ですが、今日はアドリエンヌ様をエスコートして参加されていました。お二人は共に金の髪をお持ちなので、今日の衣装はシャンパンゴールドで合わせていて、瞳の色の青と翡翠色が差し色として入っています。並ぶと美男美女でお似合いではありますが…あんな事があったせいか警戒心が消えないのはあの二人故、でしょうか。
「本当に納得したのかしら…」
お母様が疑わしそうにそう言いましたが、ものすごく同感ですわ。
「そうでなければここにはおらんだろう。だが、そう思う気持ちはわかるな」
お父様もまだ一安心とは思えないようです。このまま何事もなく終わって欲しいと思うのはそんなに途方もない願いではない筈ですが、あの二人が絡むととんでもなく難しい事の様に思えてしまうのですよね。
そんな中、特に人が集まっていたのはセレスティーヌ様の周りでした。大国の王太子ともなれば、縁を結びたいと願う人が我こそはと押しかけるのも無理はないでしょう。お兄様はセレスティーヌ様の隣で笑みを浮かべていますが、アドリエンヌ様が近づかないかと冷や冷やしてしまいますわ。理性で抑えていても、お兄様を見たら箍が外れて一直線に突撃しそうなのですよね。これまでがこれまでですし、「奇天烈姫」や「狂犬姫」の二つ名がその事実を物語っていますから。
「近づけないように人を配置しているが…我々も気を付けて見守るしかあるまい」
お父様の言葉通りですわね。今まではエルネスト様の隣が苦痛で早く終わらないかと思っていましたが…彼らが何かしでかさないかと冷や冷やしながら見守るのは別の意味でスリリングで、別の意味で早く無事に終わって欲しいですわ。
私達の不安をよそに、舞踏会は華やかに進んでいきます。懸念はありましたが、せっかくの舞踏会です。今日は三度もリシャール様と踊ることが出来た私は大満足です。エルネスト様とは義務の一つとして義務感だけで踊っていましたが、実は私、ダンスは好きなのですよね。以前はお父様やお兄様とよく踊っていましたから。リシャール様はダンスもお上手な上、私を気遣って下さるので凄く踊りやすいのです。
「リシャール様、ダンスがお上手ですよね」
「そんな事はありませんよ。レティが上手なのですよ」
「いいえ、リシャール様のリードのお陰ですわ」
婚約者と踊るダンスがこんなにも心まで踊るものだったなんて…それにこんな時でもないとリシャール様に触れるなんて恥ずかしくて出来ないのですよね。そういう意味でもダンスを好きな人と踊るのは、特別感に溢れていますわ。
(このまま何もなく終わってくれないかしら)
せっかくの楽しく満ち足りた気分に、私はこのまま何事もなく舞踏会が終わってくれないかと思っていましたが…残念ながらそんな期待はバッサリと裏切られるのでした。
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