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心臓が大忙しです
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「そう言われても、仕方ありませんね」
そう言ってリシャール様は淡い笑みを浮かべられ、私は口から心臓が飛び出しそうな気がして慌てました。それはちょっと困ったというか、ばつが悪そうな笑みにも見えましたが、こんな風に緊張感のない柔らかい笑みを向けて下さったのは初めてだったからです。い、一体どうしたというのでしょうか…
「…今になって何をとお思いでしょうね。確かに最初の頃の私の態度は、決して褒められるものではありませんでしたから」
「い、いえ、そんな事は…」
「あえて一線を引いていた事は認めます。申し訳ございませんでした」
突然謝られてしまい、私はどう答えていいのかわかりませんでした。一線引かれているのは自覚していましたが…それもリシャール様が求婚を良しと思っていなかったからで、それは仕方がないと思っていました。だってリシャール様は私と出会ったあの時の事を覚えていなかったのです。急に結婚してと高位貴族に言われたら、誰だって警戒するだろうという事くらいは私にもわかります。
「あの、その事は仕方ないと言いますか…突然知らない人から求婚されたら驚かれると思いますので、お気になさらないで下さい」
私がそう言うとリシャール様は、益々困ったような表情をされました。そんな表情も素敵だと思ってしまうなんて、私ったら不謹慎ですわね…
「そう、ですね。気にしない事にします。ですからラフォン嬢もどうか気になさらないで下さい」
「え?」
「私は明日にはファリエール伯爵家の一員となるでしょう。これからは婚約者として、お互いを知っていきたいと思いますが、如何ですか?」
(如何ですかって…そ、そんなの…)
こ、これは本当に婚約者になって下さるという事なのですね。な、何て事でしょうか…これが夢でなければいいのですが…
「もっ、勿論です。どうかよろしくお願いしますわ!」
思わず立ち上がって大きな声を出してしまいましたが…はっ、わ、私ったらまた勢い余って淑女らしからぬ振る舞いを…!今度こそは失敗しないと誓いましたのに、が、学習能力がない自分が情けないです…
「ふふっ、ラフォン嬢はお可愛らしい方ですね」
「…っ」
これまでに見た事がないような柔らかくて力の抜けた笑みに、今度は心臓を鷲掴みにされるのを感じました。私の心臓、先ほどから大忙しですが大丈夫でしょうか…でも、なんて尊い笑みのでしょう、こんなお姿を見ることが出来るなんて、感無量です。じわじわと婚約者になって頂けたとの実感が湧き上がり、身体中の血が沸騰しそうですわ…
「あ、あのっ!わ、私の事は、レティシアとお呼びください。何ならレティでもいいですっ!」
「そ、そうですか?でしたらレティ様と…」
「さ、様はいりませんわ!何卒レティとおよびくださいませっ!」
「…そうですか。ではレティ…これからよろしくお願いします」
「はいっ!」
あ、愛称呼び、頂きましたわ!一歩どころか十歩は前進した気がします。
(リシャール様がレティって呼んでくださった…レティって…)
ど、どうしましょうか…今夜は眠れそうにありませんわ。
そう言ってリシャール様は淡い笑みを浮かべられ、私は口から心臓が飛び出しそうな気がして慌てました。それはちょっと困ったというか、ばつが悪そうな笑みにも見えましたが、こんな風に緊張感のない柔らかい笑みを向けて下さったのは初めてだったからです。い、一体どうしたというのでしょうか…
「…今になって何をとお思いでしょうね。確かに最初の頃の私の態度は、決して褒められるものではありませんでしたから」
「い、いえ、そんな事は…」
「あえて一線を引いていた事は認めます。申し訳ございませんでした」
突然謝られてしまい、私はどう答えていいのかわかりませんでした。一線引かれているのは自覚していましたが…それもリシャール様が求婚を良しと思っていなかったからで、それは仕方がないと思っていました。だってリシャール様は私と出会ったあの時の事を覚えていなかったのです。急に結婚してと高位貴族に言われたら、誰だって警戒するだろうという事くらいは私にもわかります。
「あの、その事は仕方ないと言いますか…突然知らない人から求婚されたら驚かれると思いますので、お気になさらないで下さい」
私がそう言うとリシャール様は、益々困ったような表情をされました。そんな表情も素敵だと思ってしまうなんて、私ったら不謹慎ですわね…
「そう、ですね。気にしない事にします。ですからラフォン嬢もどうか気になさらないで下さい」
「え?」
「私は明日にはファリエール伯爵家の一員となるでしょう。これからは婚約者として、お互いを知っていきたいと思いますが、如何ですか?」
(如何ですかって…そ、そんなの…)
こ、これは本当に婚約者になって下さるという事なのですね。な、何て事でしょうか…これが夢でなければいいのですが…
「もっ、勿論です。どうかよろしくお願いしますわ!」
思わず立ち上がって大きな声を出してしまいましたが…はっ、わ、私ったらまた勢い余って淑女らしからぬ振る舞いを…!今度こそは失敗しないと誓いましたのに、が、学習能力がない自分が情けないです…
「ふふっ、ラフォン嬢はお可愛らしい方ですね」
「…っ」
これまでに見た事がないような柔らかくて力の抜けた笑みに、今度は心臓を鷲掴みにされるのを感じました。私の心臓、先ほどから大忙しですが大丈夫でしょうか…でも、なんて尊い笑みのでしょう、こんなお姿を見ることが出来るなんて、感無量です。じわじわと婚約者になって頂けたとの実感が湧き上がり、身体中の血が沸騰しそうですわ…
「あ、あのっ!わ、私の事は、レティシアとお呼びください。何ならレティでもいいですっ!」
「そ、そうですか?でしたらレティ様と…」
「さ、様はいりませんわ!何卒レティとおよびくださいませっ!」
「…そうですか。ではレティ…これからよろしくお願いします」
「はいっ!」
あ、愛称呼び、頂きましたわ!一歩どころか十歩は前進した気がします。
(リシャール様がレティって呼んでくださった…レティって…)
ど、どうしましょうか…今夜は眠れそうにありませんわ。
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