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嫌われたのです…

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「ちょっと。それってどういう事なの?」

 リシャール様にフラれたと言った私に、間髪入れずベルティーユ様が突っ込んできました。その顔には困惑がはっきりと浮かんでいます。

「だから、嫌われちゃったのよ、リシャール様に…」
「なっ?ど、どうして?」
「どうしてかなんて、わからないけど…」
「何言っているのよ、あなた。詐欺から守ったのにそれはないでしょう?」
「でも、お店であんな騒ぎを起こしたのよ?騎士団まで呼んで。そのせいできっとお店に悪い噂が立ったんだわ…それで…」

 あの場で怒りが抑えられず、しかも役者が揃ったために問い詰めた結果、詐欺集団を捕らえてしまいましたが…場が悪かったのです。よりにもよってリシャール様の店でやらかしてしまったのですから。騎士団がお店に来るなんて、何か犯罪行為があったと周りに思われるのは確実です。リシャール様のお店に良からぬ影響が出たのは間違いないのでしょう…

「…騎士団を呼んだのはあの三男でしょう。貴女のせいじゃないわ」
「でも…」
「まぁ、確かに他にやり様はあっただろうけど、結果として犯人は全員捕まったわ。あなたが責められる謂れはないわよ」
「でも…あの後リシャール様に店に来るなって言われたのよ!もしかしたらあの男に蹴りを入れたのがいけなかったのかも…はしたないって呆れられたのよ…」

 そう、あの捕り物の後、私はリシャール様から暫く店には来ない様にと言われたのです。その理由も詳しくは聞いていませんし、恐ろしくて聞く勇気もありません。お店はあれからお休みしているというし…きっと事件のせいでお店と商会に不都合があって、営業出来なくなっているのでしょう…それに、あの男に肘鉄と蹴りを入れたのもよくなかったでしょう。女性があんな事をするなんて普通はあり得ません。きっと暴力的な女だと思われてしまったのですわ…

「ああもう、そんな筈ないわよ。悪い方に考えすぎだわ」

 励まそうとしてくれる心遣いはとても嬉しいのですが、現実は出入り禁止なのです。それのどこにプラスに考えられる要素がありましょうか…

「そんなに気になるなら、手紙を送るなり店に行くなりして、聞いてみればいいじゃない」
「…む、無理よ…そんな恐ろしい事、出来ないわ…」
「はぁ?自分からプロポーズした人が何言っているのよ?」
「だって…あの時はまだ嫌われてはいなかったもの…」
「まだ嫌われたわけじゃないでしょう?」
「じゃ、どうしてお店に来るなと言うの?そうでなかったらそんな事言わないでしょう?」
「そ、それは…」

 ほら、ベルティーユ様も答えられないじゃないですか…やっぱり嫌われたのです。

(うう、こうなったら商会を立ち上げて、仕事に生きるわ!リシャール様への思いを胸に、一生独身でいるんだから…!)

 悲しいけれど、本当は嫌だけど、振られたら諦めると誓ったのです。好きじゃない相手から迫られる辛さは私にも少しはわかりますし、周りだって心配するし、誰も幸せになんかならないのです。だったら大人しく身を引いて、草葉の陰からリシャール様の幸せを祈りますわ。


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