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私の紹介のお客様?
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マリアさんから販売員のセリアさんがリシャール様を狙っていると聞いた私は、お二人の関係が気になってしまって気もそぞろでした。セリアさんは大人の雰囲気漂う美人で、天は彼女に二物を与えているようで、出るところが出て引っ込むところは引っ込んでいる羨ましい体形の持ち主です。伯爵家の出なので所作も綺麗ですし、店の花形店員の地位は不動でしょう。お店への貢献度も私とは雲泥の差です。私は相変わらず下働きの雑用係なのですから…
そんな日々が一週間ほど過ぎた頃でしょうか。休日の出勤日、帳簿の確認をしていたところ、階段を上がってくる足音が聞こえました。
「リシャール様!聞いて下さい、大口の注文が入ったんです!」
喜色満面で少し興奮気味のセリアさんが、事務所に入るなりそう告げました。どうやらかなり嬉しいようで、顔も心なしか赤くなっています。
「そうか、よくやったな、セリア。何が売れたんだ?」
「ネックレスとピアスのセット、それもリシャール様が進めている新シリーズですわ」
「なんだって?凄いじゃないか、セリアちゃん!」
「ええ、私もう、嬉しくって…!」
「さすがは家の看板店員だな。あのシリーズだなんて…」
ダニエルさんが笑顔でセリアさんを褒め、セリアさんは相当嬉しいのか涙ぐんでいます。どうやら最近売り出した高額商品が売れたようです。
この店は高位貴族向けの高級アクセサリー店ですが、その中でも特にリシャール様が力を入れているのが単価の高い新しいシリーズなのです。マリアさんの話では、隣国で流行っている商品参考にして我が国風にアレンジしたものだそうで、金額は高いけれどデザイン性が高く、最近社交界でも話題になり始めているのですよね。
「凄いな、ありがとうセリア」
「リシャール様!ありがとうございます!」
その後もセリアさんは、リシャール様に抱きそうな勢いで話しかけていました。よほど嬉しいのでしょうね。好きな人の役に立ちたいという気持ちはわかりますし、実際に役に立てた事が羨ましくも妬ましくも感じます。そりゃあ、その気になれば何セットも買えますが、それじゃ何かが違う気がしますし…
「あ~疲れた!ねぇ、お茶淹れてよ!」
上機嫌でセリアさんがそう言うので、私は直ぐにお茶の用意をしました。今日もクッキーを焼いてきたのですが、出番があってよかったですわ。
「これで今月もセリアが売り上げトップだな。どこの方だ?」
「グラネ伯爵家の若奥様よ」
「グラネ伯爵家って…数か月前から来るようになった?」
「ええ。中々羽振りのよさそうな方だったわ。これもラフォン侯爵令嬢のお陰ね!」
(…え?)
セリアさんの一言に、私はとっさに手にしていたカップを落としそうになりました。視界の片隅ではリシャール様も僅かに驚きの表情を浮かべたように感じましたが…セリアさん達は気付いていないようですが。
「え?ラフォン侯爵令嬢って、あの王子様に婚約破棄された?」
「ああ、あの縦ロールで不細工な氷人形と言われている令嬢だよな?」
「ええ、彼女の紹介だと言っていたわ」
「なるほど。まぁ、不細工な氷人形でも、店の売り上げに貢献してくれるなら女神様ってもんだ!」
マリアさんとダニエルさんが何だか盛り上がっていますが…
(そ、それって、私じゃないですか―――?!!)
そんな日々が一週間ほど過ぎた頃でしょうか。休日の出勤日、帳簿の確認をしていたところ、階段を上がってくる足音が聞こえました。
「リシャール様!聞いて下さい、大口の注文が入ったんです!」
喜色満面で少し興奮気味のセリアさんが、事務所に入るなりそう告げました。どうやらかなり嬉しいようで、顔も心なしか赤くなっています。
「そうか、よくやったな、セリア。何が売れたんだ?」
「ネックレスとピアスのセット、それもリシャール様が進めている新シリーズですわ」
「なんだって?凄いじゃないか、セリアちゃん!」
「ええ、私もう、嬉しくって…!」
「さすがは家の看板店員だな。あのシリーズだなんて…」
ダニエルさんが笑顔でセリアさんを褒め、セリアさんは相当嬉しいのか涙ぐんでいます。どうやら最近売り出した高額商品が売れたようです。
この店は高位貴族向けの高級アクセサリー店ですが、その中でも特にリシャール様が力を入れているのが単価の高い新しいシリーズなのです。マリアさんの話では、隣国で流行っている商品参考にして我が国風にアレンジしたものだそうで、金額は高いけれどデザイン性が高く、最近社交界でも話題になり始めているのですよね。
「凄いな、ありがとうセリア」
「リシャール様!ありがとうございます!」
その後もセリアさんは、リシャール様に抱きそうな勢いで話しかけていました。よほど嬉しいのでしょうね。好きな人の役に立ちたいという気持ちはわかりますし、実際に役に立てた事が羨ましくも妬ましくも感じます。そりゃあ、その気になれば何セットも買えますが、それじゃ何かが違う気がしますし…
「あ~疲れた!ねぇ、お茶淹れてよ!」
上機嫌でセリアさんがそう言うので、私は直ぐにお茶の用意をしました。今日もクッキーを焼いてきたのですが、出番があってよかったですわ。
「これで今月もセリアが売り上げトップだな。どこの方だ?」
「グラネ伯爵家の若奥様よ」
「グラネ伯爵家って…数か月前から来るようになった?」
「ええ。中々羽振りのよさそうな方だったわ。これもラフォン侯爵令嬢のお陰ね!」
(…え?)
セリアさんの一言に、私はとっさに手にしていたカップを落としそうになりました。視界の片隅ではリシャール様も僅かに驚きの表情を浮かべたように感じましたが…セリアさん達は気付いていないようですが。
「え?ラフォン侯爵令嬢って、あの王子様に婚約破棄された?」
「ああ、あの縦ロールで不細工な氷人形と言われている令嬢だよな?」
「ええ、彼女の紹介だと言っていたわ」
「なるほど。まぁ、不細工な氷人形でも、店の売り上げに貢献してくれるなら女神様ってもんだ!」
マリアさんとダニエルさんが何だか盛り上がっていますが…
(そ、それって、私じゃないですか―――?!!)
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