296 / 332
第三部
ガーゲルン侯爵家の秘密
しおりを挟む
殊更に穏やかな声で笑顔を添えてそう告げると、ガーゲルン侯爵家の三人は三様に表情を強張らせた。何を思ってかは知らないけれど、他家の婚姻式で新郎に迫り、その婚姻の証人を侮辱するなど到底許されないわ。
妻子に無関心な侯爵と、奔放な夫人、夫人の価値観を受け継いだらしい令嬢。そういえば次男が見当たらないわね。出来ることならこの式に招待したくなかったけれど、辺境六侯爵家の一家を招かなければ無用な思惑を生むと招待状を送った。まさかここまで非常識な振る舞いをするとは思わなかったわ。このままお引き取り願った方がいいかしら。その時だった。
「何事です? 父上? 何をしていらっしゃるのです?」
焦りを含んだ表情で割り入ってきたのはくすんだ金髪の青年だった。この方は……ガーゲルン侯爵家の次男のランドルフ様かしら? 招待したのは嫡男の長男だったけれど、出席は次男にとの連絡があったから記憶に残っていた。変更した理由は長男が前妻の子だからで、夫人は実子のランドルフ様を後継に望んでいるから。
「この小娘が我らを、ガーゲルン侯爵家を侮辱したのだ!」
「このって……相手はゾルガー侯爵夫人ではありませんか。どうせ姉上がつまらぬことをしたのではありませんか?」
意外だわ、妹を擁護するかと思ったから。もしかしてランドルフ様は真っ当な感性をお持ちなのかしら?
「酷いわ、ランドルフ!」
「姉上の悪評はあちこちで聞いています。いい加減にしてください」
ガーゲルン侯爵家にもまともな方はいたのね。長男は夫人らに冷遇されていると聞いていたから次代は大丈夫かとも思っていたけれど、次男も常識のある方ならまだ希望はあるかしら? そうは言っても今日はもう退場願いたいわ。つ、と一歩を踏み出してガーゲルン侯爵の正面に立った。まさか自ら近付いて来るとは思わなかったのか侯爵が怯んで半歩ほど下がった。
「そうそう、ガーゲルン侯爵。モーリッツ様はまだ見つかりませんの?」
「……モッ!! な、なに、を……」
赤かった顔が一瞬で白くなった。まさかその名前が出てくるとは思わなかったみたいね。ここまで動揺するとは思わなかったけれど。
「先日、市井でデシレア様にとってもよく似た女性を見かけましたの。あまりにそっくりだから、もしかしてモーリッツ様のお子かしらと思って」
「ば、ばかな……モッ、モーリッツは……」」
「ああ、失礼しましたわ。そんな筈ありませんわよね」
でも、本当に似ていたのですわと重ねて告げると、侯爵の顔から色に続いて表情も抜け落ちた。身体も小刻みに震えているようにも見える。
「し、失礼する!」
侯爵が力なくそれだけを口にすると、踵を返して扉の方へと歩き始めてしまった。
「父上?」
「あなた!?」
「お父様!? ちょっと!!」
突然の夫の、父の態度の変容に妻子がそれぞれの表情で声をかけて追いかけた。思った以上に効いたみたいね。
「義姉上、今のは一体……」
「侯爵の弟君のことを尋ねたのだけど……気分を害されたみたいね」
「弟って……」
「私も詳しくは。もし知りたいのでしたらヴォルフ様からお聞きになってください」
さすがにこの場では話せないわ。モーリッツ様はガーゲルン侯爵の異母弟で、二十年前に行方不明になった方。好いた女性がいて駆け落ちしたとも、実らぬ恋に絶望して出奔したとも言われているけれど、それは表向きの話。
実際は異母兄に命じられて妻との子作りを強要され、子が出来ると破落戸を雇って口封じをした。これが真実。侯爵は誰にも知られることなく事を成したと思っていたのでしょうね。そして、たった今までそのことすらも忘れていた。でも、彼は生きているわ。ガーゲルン侯爵が見けることは出来ないけれど。
瀕死の傷を負ったモーリッツ様を見つけてゾルガー領に連れて帰ったのはお義父様。傷が癒えた彼は騎士として我が家に仕えることを望んだわ。もちろん我が身に起きたことを全て話して。その後使用人の一人と結婚し、一人娘はゾルガー邸で働いている。その娘がデシレア様にとてもよく似てたから、デシレア様を見た後、気になって調べたのだ。まさかこんな闇が隠れているとは思わなかったわ。
「終わったか」
ガーゲルン侯爵家の四人が去るとヴォルフ様が戻ってこられた。ランベルツ侯爵の姿はないわね。お話は終わったのかしら。
「ええ。あれでよろしかったでしょうか?」
本当はヴォルフ様が諫めるはずだったのに……もしかしてわざと離れられました? いえ、声をかけてきたのはランベルツ侯爵だったけれど。
「ああ。あれでいい」
……やっぱりわざとですのね。でも、いつもヴォルフ様はこんな風に嫌な役目を負っていらっしゃるのね。だったら私もそのお手伝いがしたい。そのためなら人に何と思われても構わないもの。
「叔父上」
会場にまだ騒きが残る中、フレディがザーラを伴ってやってきた。二人とも背が高くて、こうして並ぶと本当にお似合いだわ。
「すみません、ついカッとなって……」
ガーゲルン嬢に厳しい言葉をかけたことを謝っているのね。
「構わん」
「フレディの怒りは当然だわ。こんな席で第二夫人の話なんか出されたら私だって許せないもの」
「ああ。イルーゼが釘を刺したから次はないだろう」
「イルーゼが? 何をしたんだ?」
どういう意味かしら? なんだか私が問題を起こしたように聞こえるけれど。
「侯爵の弟君のお話をしただけよ」
それだけを言うと侯爵に弟がいたのかとフレディが首を傾げていたけれど、彼はあの日記を読んでいないのかしら? ヴォルフ様を仰ぎ見ると「お前だけだ」と小声で言われた。嬉しいなんて思ってしまったわ。信用されているのだと。いやだわ、顔が熱くなってきた。赤くなっていないわよね。
それにしても、ああいう手はあまり好きじゃないけれど効果は絶大なのね。私が知っているということはヴォルフ様も知っているということで、それはいつ世間に、王家に知られるかわからないのだから。情報一つで相手を抑えられるのだから凄いわ。
その後は招待客への挨拶が延々と続いた。ガーゲルン侯爵家のことが気になっているようだけど誰もそのことを口にはしなかった。それだけ令嬢の振る舞いは反感を買っていたのね。でも仕方ないわ。実際に付き纏われて婚約者と揉めた令息もいたというのだから。それでも六侯爵家の令嬢だからと拒絶出来なくて困っていたというし。
「イルーゼ様、随分とお優しかったですわね」
声をかけてくれたのはエルマ様だった。
「エルマ様。それにバルドリック様も。来てくださって嬉しいわ」
「ふふ、フレディ様のご成婚おめでとうございます。一安心ですわね」
「ありがとうございます。ええ、ホッとしましたわ」
エルマ様に会うのは久しぶりだわ。少しこけていた頬が丸くなって印象が柔らかくなった。そして今日もバルドリック様がしっかり寄り添って周りを警戒している。警戒し過ぎじゃないかと思うのだけど……ちょっと束縛が過ぎる気がするわ。
「ガーゲルン侯爵家ね。色々と叩けば出てきそうよねぇ」
「まぁ、エルマ様ったら。憶測でそのようなことを仰ってはいけませんわ」
「あら、だってあの方、バルに色目を使っていたそうですわよ」
「ああ、エルマ。俺があんなのに引っかかると思っていないよね? 君と比べることすら悍ましいよ」
酷い言い様ね。バルドリック様が必死に弁明しているけれど、誰もバルドリック様が引っかかるなんて思わないわよ。きっと害虫を見るような目で一蹴されたのでしょうね。
「そうそう、マヌエル様にお子が出来たそうよ。先日当主から連絡を頂いたわ」
「まぁ、マヌエル様が」
ベルトラム一門の伯爵家に嫁いだいとこのマヌエル様。今は私よりもエルマ様との付き合いの方が多くなっている。最近姿を見かけなかったし今日のパーティーも欠席とあったからお見舞いにと思っていたけれど、お子が出来ていたのね。よかったわ、これで彼女も気が楽になったわね。
「楽しみだわ。マヌエル様に似て聡明なお子が生まれそうね」
「ええ。彼女、控えめだけど読書家なだけあって色んな事をご存じだもの」
大人しいから伯爵家に馴染めるかと心配だったけれど、夫の令息は穏やかな性格で関係は良好だと聞くし、義母と趣味の刺繍や孤児院の支援などで気が合うらしく仲良くしていると聞く。よかったわ、彼女も姉のせいで理不尽な目に遭った時期もあったから。
「あら、イルーゼ様、あの方って……」
エルマ様の視線の先には亜麻色の髪を綺麗に編み込んで水色のドレスに身を包んだ令嬢が、こちらをじっと見ていた。
妻子に無関心な侯爵と、奔放な夫人、夫人の価値観を受け継いだらしい令嬢。そういえば次男が見当たらないわね。出来ることならこの式に招待したくなかったけれど、辺境六侯爵家の一家を招かなければ無用な思惑を生むと招待状を送った。まさかここまで非常識な振る舞いをするとは思わなかったわ。このままお引き取り願った方がいいかしら。その時だった。
「何事です? 父上? 何をしていらっしゃるのです?」
焦りを含んだ表情で割り入ってきたのはくすんだ金髪の青年だった。この方は……ガーゲルン侯爵家の次男のランドルフ様かしら? 招待したのは嫡男の長男だったけれど、出席は次男にとの連絡があったから記憶に残っていた。変更した理由は長男が前妻の子だからで、夫人は実子のランドルフ様を後継に望んでいるから。
「この小娘が我らを、ガーゲルン侯爵家を侮辱したのだ!」
「このって……相手はゾルガー侯爵夫人ではありませんか。どうせ姉上がつまらぬことをしたのではありませんか?」
意外だわ、妹を擁護するかと思ったから。もしかしてランドルフ様は真っ当な感性をお持ちなのかしら?
「酷いわ、ランドルフ!」
「姉上の悪評はあちこちで聞いています。いい加減にしてください」
ガーゲルン侯爵家にもまともな方はいたのね。長男は夫人らに冷遇されていると聞いていたから次代は大丈夫かとも思っていたけれど、次男も常識のある方ならまだ希望はあるかしら? そうは言っても今日はもう退場願いたいわ。つ、と一歩を踏み出してガーゲルン侯爵の正面に立った。まさか自ら近付いて来るとは思わなかったのか侯爵が怯んで半歩ほど下がった。
「そうそう、ガーゲルン侯爵。モーリッツ様はまだ見つかりませんの?」
「……モッ!! な、なに、を……」
赤かった顔が一瞬で白くなった。まさかその名前が出てくるとは思わなかったみたいね。ここまで動揺するとは思わなかったけれど。
「先日、市井でデシレア様にとってもよく似た女性を見かけましたの。あまりにそっくりだから、もしかしてモーリッツ様のお子かしらと思って」
「ば、ばかな……モッ、モーリッツは……」」
「ああ、失礼しましたわ。そんな筈ありませんわよね」
でも、本当に似ていたのですわと重ねて告げると、侯爵の顔から色に続いて表情も抜け落ちた。身体も小刻みに震えているようにも見える。
「し、失礼する!」
侯爵が力なくそれだけを口にすると、踵を返して扉の方へと歩き始めてしまった。
「父上?」
「あなた!?」
「お父様!? ちょっと!!」
突然の夫の、父の態度の変容に妻子がそれぞれの表情で声をかけて追いかけた。思った以上に効いたみたいね。
「義姉上、今のは一体……」
「侯爵の弟君のことを尋ねたのだけど……気分を害されたみたいね」
「弟って……」
「私も詳しくは。もし知りたいのでしたらヴォルフ様からお聞きになってください」
さすがにこの場では話せないわ。モーリッツ様はガーゲルン侯爵の異母弟で、二十年前に行方不明になった方。好いた女性がいて駆け落ちしたとも、実らぬ恋に絶望して出奔したとも言われているけれど、それは表向きの話。
実際は異母兄に命じられて妻との子作りを強要され、子が出来ると破落戸を雇って口封じをした。これが真実。侯爵は誰にも知られることなく事を成したと思っていたのでしょうね。そして、たった今までそのことすらも忘れていた。でも、彼は生きているわ。ガーゲルン侯爵が見けることは出来ないけれど。
瀕死の傷を負ったモーリッツ様を見つけてゾルガー領に連れて帰ったのはお義父様。傷が癒えた彼は騎士として我が家に仕えることを望んだわ。もちろん我が身に起きたことを全て話して。その後使用人の一人と結婚し、一人娘はゾルガー邸で働いている。その娘がデシレア様にとてもよく似てたから、デシレア様を見た後、気になって調べたのだ。まさかこんな闇が隠れているとは思わなかったわ。
「終わったか」
ガーゲルン侯爵家の四人が去るとヴォルフ様が戻ってこられた。ランベルツ侯爵の姿はないわね。お話は終わったのかしら。
「ええ。あれでよろしかったでしょうか?」
本当はヴォルフ様が諫めるはずだったのに……もしかしてわざと離れられました? いえ、声をかけてきたのはランベルツ侯爵だったけれど。
「ああ。あれでいい」
……やっぱりわざとですのね。でも、いつもヴォルフ様はこんな風に嫌な役目を負っていらっしゃるのね。だったら私もそのお手伝いがしたい。そのためなら人に何と思われても構わないもの。
「叔父上」
会場にまだ騒きが残る中、フレディがザーラを伴ってやってきた。二人とも背が高くて、こうして並ぶと本当にお似合いだわ。
「すみません、ついカッとなって……」
ガーゲルン嬢に厳しい言葉をかけたことを謝っているのね。
「構わん」
「フレディの怒りは当然だわ。こんな席で第二夫人の話なんか出されたら私だって許せないもの」
「ああ。イルーゼが釘を刺したから次はないだろう」
「イルーゼが? 何をしたんだ?」
どういう意味かしら? なんだか私が問題を起こしたように聞こえるけれど。
「侯爵の弟君のお話をしただけよ」
それだけを言うと侯爵に弟がいたのかとフレディが首を傾げていたけれど、彼はあの日記を読んでいないのかしら? ヴォルフ様を仰ぎ見ると「お前だけだ」と小声で言われた。嬉しいなんて思ってしまったわ。信用されているのだと。いやだわ、顔が熱くなってきた。赤くなっていないわよね。
それにしても、ああいう手はあまり好きじゃないけれど効果は絶大なのね。私が知っているということはヴォルフ様も知っているということで、それはいつ世間に、王家に知られるかわからないのだから。情報一つで相手を抑えられるのだから凄いわ。
その後は招待客への挨拶が延々と続いた。ガーゲルン侯爵家のことが気になっているようだけど誰もそのことを口にはしなかった。それだけ令嬢の振る舞いは反感を買っていたのね。でも仕方ないわ。実際に付き纏われて婚約者と揉めた令息もいたというのだから。それでも六侯爵家の令嬢だからと拒絶出来なくて困っていたというし。
「イルーゼ様、随分とお優しかったですわね」
声をかけてくれたのはエルマ様だった。
「エルマ様。それにバルドリック様も。来てくださって嬉しいわ」
「ふふ、フレディ様のご成婚おめでとうございます。一安心ですわね」
「ありがとうございます。ええ、ホッとしましたわ」
エルマ様に会うのは久しぶりだわ。少しこけていた頬が丸くなって印象が柔らかくなった。そして今日もバルドリック様がしっかり寄り添って周りを警戒している。警戒し過ぎじゃないかと思うのだけど……ちょっと束縛が過ぎる気がするわ。
「ガーゲルン侯爵家ね。色々と叩けば出てきそうよねぇ」
「まぁ、エルマ様ったら。憶測でそのようなことを仰ってはいけませんわ」
「あら、だってあの方、バルに色目を使っていたそうですわよ」
「ああ、エルマ。俺があんなのに引っかかると思っていないよね? 君と比べることすら悍ましいよ」
酷い言い様ね。バルドリック様が必死に弁明しているけれど、誰もバルドリック様が引っかかるなんて思わないわよ。きっと害虫を見るような目で一蹴されたのでしょうね。
「そうそう、マヌエル様にお子が出来たそうよ。先日当主から連絡を頂いたわ」
「まぁ、マヌエル様が」
ベルトラム一門の伯爵家に嫁いだいとこのマヌエル様。今は私よりもエルマ様との付き合いの方が多くなっている。最近姿を見かけなかったし今日のパーティーも欠席とあったからお見舞いにと思っていたけれど、お子が出来ていたのね。よかったわ、これで彼女も気が楽になったわね。
「楽しみだわ。マヌエル様に似て聡明なお子が生まれそうね」
「ええ。彼女、控えめだけど読書家なだけあって色んな事をご存じだもの」
大人しいから伯爵家に馴染めるかと心配だったけれど、夫の令息は穏やかな性格で関係は良好だと聞くし、義母と趣味の刺繍や孤児院の支援などで気が合うらしく仲良くしていると聞く。よかったわ、彼女も姉のせいで理不尽な目に遭った時期もあったから。
「あら、イルーゼ様、あの方って……」
エルマ様の視線の先には亜麻色の髪を綺麗に編み込んで水色のドレスに身を包んだ令嬢が、こちらをじっと見ていた。
2,579
読んで下さってありがとうございます。
感想・お気に入り登録・エールも励みになります。
また誤字脱字を報告して下さる皆様に感謝申し上げます。
感想・お気に入り登録・エールも励みになります。
また誤字脱字を報告して下さる皆様に感謝申し上げます。
お気に入りに追加
10,504
あなたにおすすめの小説

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

【完結】私の嘘に気付かず勝ち誇る、可哀想な令嬢
横居花琉
恋愛
ブリトニーはナディアに張り合ってきた。
このままでは婚約者を作ろうとしても面倒なことになると考えたナディアは一つだけ誤解させるようなことをブリトニーに伝えた。
その結果、ブリトニーは勝ち誇るようにナディアの気になっていた人との婚約が決まったことを伝えた。
その相手はナディアが好きでもない、どうでもいい相手だった。


幼なじみで私の友達だと主張してお茶会やパーティーに紛れ込む令嬢に困っていたら、他にも私を利用する気満々な方々がいたようです
珠宮さくら
恋愛
アンリエット・ノアイユは、母親同士が仲良くしていたからという理由で、初めて会った時に友達であり、幼なじみだと言い張るようになったただの顔なじみの侯爵令嬢に困り果てていた。
だが、そんな令嬢だけでなく、アンリエットの周りには厄介な人が他にもいたようで……。

【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
21時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる