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第二部
出産◆
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何があろうと日は過ぎていく。暗示のない生活は心許なく、感情の揺れに不快感が募った。ヴィムに暗示をかけるように言うと、妻がつわりを我慢していたのだからお前もそれくらい我慢しろと返された。確かにイルーゼは苦しんでいるが同列に語られるものでもないだろうに。
ゾルガーの存続を最優先とする奴がこの状態をよしとしているのが不可解だが消される心配はないらしい。イルーゼにも手を出さないと約束させた。急に変わった態度に不信感は拭えないが奴も後継を強く望んでいた。だったら今は何もしないのだろう。子が一人では足りないと言ったのだから。
イルーゼが出産するだろうと言われた十日ほど前、五侯爵家の会議があった。会議があるのは謁見の間の隣にある貴賓室だ。王と王太子、そして五侯爵家の当主だけの気心は知れないが顔見知りの会合は会議というよりも懇談会に近い。国の政策や運営は各々の大臣と各部署の仕事だ。俺たちはその方針を決めて各貴族家をその方針通りに動かすのが仕事だ。
今日に議題はグレシウスとの婚姻だった。王太子の息子は十二になり、グレシウス王太子の娘との婚約が本格的に結ばれることになった。そうとなれば周辺国が動き出すだろう。外交は俺の管轄外だが国内の貴族が浮足立ってよからぬことを考えぬように目を光らせる必要がある。五侯爵家と辺境の六侯爵家の監視は俺の仕事だが、何があろうとやることに変わりはない。
「失礼します」
重要な話も終わり世間話へと話題が向かった頃、侍従が入ってきた。室内を見渡した視線は俺で止まった。その後ろにはアベルがいる。何かあったか? アベルが深々と礼をすると当主らを避けて俺の元へとやってきた。
「旦那様、奥様が産気付いたと」
耳元で囁かれた言葉に不快感が湧いた。出産はまだ先ではなかったか。初産だと予定よりも遅くなるとも聞いた。早過ぎないか?
「侯爵、どうした?」
声をかけたのはすぐ隣にいた王太子だった。こいつは何かと俺の近くにいる。
「大したことではない。妻が産気付いたそうだ」
「な! イル、夫人がか?」
「おお、だったら早く戻ってやれ」
王太子が声を上げ、その横で王が退出の許可を出した。有り難く言われた通りに王宮を後にする。予定より早いが大丈夫なのか? 馬で駆りたい気持ちを抑えての移動はやけに長く感じた。
屋敷に着くとティオが出迎えた。
「ティオ、あれの様子は?」
「陣痛が始まったと。今は治まっていてゆったりお過ごしです」
詳しく話を聞くとシーズーらと家政の話をしていたところで腹が痛くなったという。先週から屋敷に泊まり込んでいるルーザーや産婆たちが直ぐに対応して、今は出産するための部屋にいるという。直ぐに向かおうとしたところ、ティオに止められた。
「お子が生まれるのです。湯あみをして着替えをなさってからがよろしいかと」
病を貰って儚くなる幼子は少なくない。尤もだと自分の部屋に向かうと既に湯あみの準備は終わっていた。出産まではまだ時間がかかると言われたが気が急く。早々に湯を浴びて着替えを済ませ、イルーゼの元へ向かった。
「ヴォルフ様?」
貴族院はどうしたのかと目を丸くする姿はいつもと変わらなかった。聞けばまだ痛みは弱く、これから強くなっていくのだという。ルーザーや産婆は半日から一日はかかると言った。それは本で読んだ通りだから驚きはない。先ほど食事をとり終えたところで、スージーは眠れるなら眠った方がいいと勧めていた。
「ヴォルフ様、待っていてくださいね。必ずお子と一緒に生き延びますから」
そう言って笑みを浮かべた。そこには不安などなく、ただ子が生まれることへの喜びが見えた。そうだな、お前は強い。痛みが酷いと、死ぬこともあると言われても、そうじゃないことの方が多いのだから大丈夫だと言って笑みを浮かべていた。
「ああ、待っている」
お前と子が揃ってこの出産を乗り切ることを。丸くなった頬に手を当てると気持ちよさそうに目を細めて俺の手の上から手を重ねて擦り寄った。お前は不安を感じていないのだな。だったら俺もそう言うお前を信じるだけだ。
お産の場に医師以外の男が入るものではないとスージーが言うので、俺は執務室で待つことになった。気にはなるが幸い仕事もあるし気は紛れる。何もせずに待つ方が苦痛だろう。届いていた報告書に目を通し、日記に今日の貴族院であったことを記す。夕食はどうするかと聞かれたが、食堂で食べる気になれず簡単なものでいいと部屋に運ばせた。
夜が更けて日付が変わっても、朝を迎えてもまだ子は産まれなかった。産気付いたのは昼過ぎだから長引いているのは間違いなかった。定期的にスージーが様子を伝えに来てくれるが、陣痛が弱く中々子が出る程にならないのだという。それを聞いてフィリーネのことを思い出した。あの娘の時もそんな話だったように思う。ルーザーが付いているから大丈夫だとは思うが……感じたことのない焦燥は胸中を焼かれているようだった。
「叔父上」
全く頭に入ってこない報告書に目を通しているとフレディがやってきた。イルーゼのことを案じてだろう、表情は暗く眠れなかったのか疲れた目をしていた。
「大丈夫だ。あれは強い」
「そうですが……」
「必ず生き延びると言っていた。信じろ」
「……はい」
不安そうに瞳を揺らした。半年前に伯爵家の若夫人が産後に亡くなっているから余計に心配なのだろう。必ずしも無事に産めるわけではないのだ。だが俺たちに出来ることなど何もなかった。
「子が生まれたらお前が導くんだ。しっかりしろ」
「は、はい」
ザーラの前では頼もしく見えたが根が繊細なのは変わらないか。だがそれは長所でもあるのだろう。ザーラはフレディの気遣いの細やかさに絆されたと聞く。
動きがあったのは昼を過ぎて日暮れが始まる頃だった。廊下を行き交う足音が急に騒がしくなった。とっくに仕事は手に付いていなかった。執務机に肘をつき、目を閉じて周囲の音を拾う。もっと湯を、布が足りないなど女たちの慌ただしい声が上がる中、子が生まれそうだとの声を拾った。そろそろ始まるのか。長かった。心配だが行けば邪魔になるかもしれない。お産で苦しむ姿を見られたい女性はいないとスージーが言っていた。
それからの時間は泥の中を進むように長く感じた。長引けば長引くほど命の危険も増すという。早く終われと、死ぬなと願う時間は今までに感じたことがないほど不快だった。こうも何かに気を取られたのは初めてだ。じりじりと身を焼くような感覚を全身で感じながらその時が早く来いと願った。
その時だった。足早に近づく足音に緊張が走った。
「旦那様!」
飛び込んできたのはティオだった。昨夜から一睡もしていないのだろう。皴の増えた顔には疲れが滲むがそれ以上のものが露わになっていた。
「お、お生まれになりました! 嫡男のご誕生です!」
感極まった声は初めて聞くものだったが、その言葉に深く息を吐いている自分がいた。腹の底に溜まっていた力みを今になって自覚する。かなり緊張していたらしい。どんなに際どい場面でもここまでだったことはなかっただろう。子が生まれるのがこんなにも緊張を強いられるものだとは思わなかった。
許可が出たというので産室に向かった。室内には嗅ぎ慣れた臭いが満ちていた。出血が多かったのだろうか。その濃さに不安が増す。ベッドに近付くと胸に子を乗せたイルーゼが横たわっていた。顔色は青褪めていたが目には力があった。
「イルーゼ、よく頑張った」
ありきたりな言葉しかかけられなかったが、労わるように頭を撫でると泣きだした。気が強いこれでもお産は苦しかったのだろう。その上で子は腹を満たしたのか眠ってしまった。銀か……俺の出自を疑う者も黙るだろうが、どうせならお前と同じ色がよかった。いや、無事に生まれてくれたなら何色でもいい。眠った子はスージーに抱かれて子のための部屋へと向かい、俺はイルーゼを抱き上げて夫婦の寝室に向かった。産後のためにと改装した、以前よりは守りやすい部屋へ。抱き上げた身体は思った以上に軽かった。子が腹から出たせいもあるだろうが……以前よりも痩せただろう。
軽く食事をすると眠ってしまった。規則正しく繰り返される寝息に途方もない安堵が広がる。子よりもお前が無事でよかったと思ってしまう。言えばお前は怒るだろうから言わないが。だがそれが本音だ。未知の子よりも共にあったお前を失いたくないと思ってしまう。
「俺から離れるな」
耳元でそう命じたが返事はなかった。柔い身体を抱きしめる。嗅ぎ慣れた匂いと胸に広がる安堵が眠気を誘った。
ゾルガーの存続を最優先とする奴がこの状態をよしとしているのが不可解だが消される心配はないらしい。イルーゼにも手を出さないと約束させた。急に変わった態度に不信感は拭えないが奴も後継を強く望んでいた。だったら今は何もしないのだろう。子が一人では足りないと言ったのだから。
イルーゼが出産するだろうと言われた十日ほど前、五侯爵家の会議があった。会議があるのは謁見の間の隣にある貴賓室だ。王と王太子、そして五侯爵家の当主だけの気心は知れないが顔見知りの会合は会議というよりも懇談会に近い。国の政策や運営は各々の大臣と各部署の仕事だ。俺たちはその方針を決めて各貴族家をその方針通りに動かすのが仕事だ。
今日に議題はグレシウスとの婚姻だった。王太子の息子は十二になり、グレシウス王太子の娘との婚約が本格的に結ばれることになった。そうとなれば周辺国が動き出すだろう。外交は俺の管轄外だが国内の貴族が浮足立ってよからぬことを考えぬように目を光らせる必要がある。五侯爵家と辺境の六侯爵家の監視は俺の仕事だが、何があろうとやることに変わりはない。
「失礼します」
重要な話も終わり世間話へと話題が向かった頃、侍従が入ってきた。室内を見渡した視線は俺で止まった。その後ろにはアベルがいる。何かあったか? アベルが深々と礼をすると当主らを避けて俺の元へとやってきた。
「旦那様、奥様が産気付いたと」
耳元で囁かれた言葉に不快感が湧いた。出産はまだ先ではなかったか。初産だと予定よりも遅くなるとも聞いた。早過ぎないか?
「侯爵、どうした?」
声をかけたのはすぐ隣にいた王太子だった。こいつは何かと俺の近くにいる。
「大したことではない。妻が産気付いたそうだ」
「な! イル、夫人がか?」
「おお、だったら早く戻ってやれ」
王太子が声を上げ、その横で王が退出の許可を出した。有り難く言われた通りに王宮を後にする。予定より早いが大丈夫なのか? 馬で駆りたい気持ちを抑えての移動はやけに長く感じた。
屋敷に着くとティオが出迎えた。
「ティオ、あれの様子は?」
「陣痛が始まったと。今は治まっていてゆったりお過ごしです」
詳しく話を聞くとシーズーらと家政の話をしていたところで腹が痛くなったという。先週から屋敷に泊まり込んでいるルーザーや産婆たちが直ぐに対応して、今は出産するための部屋にいるという。直ぐに向かおうとしたところ、ティオに止められた。
「お子が生まれるのです。湯あみをして着替えをなさってからがよろしいかと」
病を貰って儚くなる幼子は少なくない。尤もだと自分の部屋に向かうと既に湯あみの準備は終わっていた。出産まではまだ時間がかかると言われたが気が急く。早々に湯を浴びて着替えを済ませ、イルーゼの元へ向かった。
「ヴォルフ様?」
貴族院はどうしたのかと目を丸くする姿はいつもと変わらなかった。聞けばまだ痛みは弱く、これから強くなっていくのだという。ルーザーや産婆は半日から一日はかかると言った。それは本で読んだ通りだから驚きはない。先ほど食事をとり終えたところで、スージーは眠れるなら眠った方がいいと勧めていた。
「ヴォルフ様、待っていてくださいね。必ずお子と一緒に生き延びますから」
そう言って笑みを浮かべた。そこには不安などなく、ただ子が生まれることへの喜びが見えた。そうだな、お前は強い。痛みが酷いと、死ぬこともあると言われても、そうじゃないことの方が多いのだから大丈夫だと言って笑みを浮かべていた。
「ああ、待っている」
お前と子が揃ってこの出産を乗り切ることを。丸くなった頬に手を当てると気持ちよさそうに目を細めて俺の手の上から手を重ねて擦り寄った。お前は不安を感じていないのだな。だったら俺もそう言うお前を信じるだけだ。
お産の場に医師以外の男が入るものではないとスージーが言うので、俺は執務室で待つことになった。気にはなるが幸い仕事もあるし気は紛れる。何もせずに待つ方が苦痛だろう。届いていた報告書に目を通し、日記に今日の貴族院であったことを記す。夕食はどうするかと聞かれたが、食堂で食べる気になれず簡単なものでいいと部屋に運ばせた。
夜が更けて日付が変わっても、朝を迎えてもまだ子は産まれなかった。産気付いたのは昼過ぎだから長引いているのは間違いなかった。定期的にスージーが様子を伝えに来てくれるが、陣痛が弱く中々子が出る程にならないのだという。それを聞いてフィリーネのことを思い出した。あの娘の時もそんな話だったように思う。ルーザーが付いているから大丈夫だとは思うが……感じたことのない焦燥は胸中を焼かれているようだった。
「叔父上」
全く頭に入ってこない報告書に目を通しているとフレディがやってきた。イルーゼのことを案じてだろう、表情は暗く眠れなかったのか疲れた目をしていた。
「大丈夫だ。あれは強い」
「そうですが……」
「必ず生き延びると言っていた。信じろ」
「……はい」
不安そうに瞳を揺らした。半年前に伯爵家の若夫人が産後に亡くなっているから余計に心配なのだろう。必ずしも無事に産めるわけではないのだ。だが俺たちに出来ることなど何もなかった。
「子が生まれたらお前が導くんだ。しっかりしろ」
「は、はい」
ザーラの前では頼もしく見えたが根が繊細なのは変わらないか。だがそれは長所でもあるのだろう。ザーラはフレディの気遣いの細やかさに絆されたと聞く。
動きがあったのは昼を過ぎて日暮れが始まる頃だった。廊下を行き交う足音が急に騒がしくなった。とっくに仕事は手に付いていなかった。執務机に肘をつき、目を閉じて周囲の音を拾う。もっと湯を、布が足りないなど女たちの慌ただしい声が上がる中、子が生まれそうだとの声を拾った。そろそろ始まるのか。長かった。心配だが行けば邪魔になるかもしれない。お産で苦しむ姿を見られたい女性はいないとスージーが言っていた。
それからの時間は泥の中を進むように長く感じた。長引けば長引くほど命の危険も増すという。早く終われと、死ぬなと願う時間は今までに感じたことがないほど不快だった。こうも何かに気を取られたのは初めてだ。じりじりと身を焼くような感覚を全身で感じながらその時が早く来いと願った。
その時だった。足早に近づく足音に緊張が走った。
「旦那様!」
飛び込んできたのはティオだった。昨夜から一睡もしていないのだろう。皴の増えた顔には疲れが滲むがそれ以上のものが露わになっていた。
「お、お生まれになりました! 嫡男のご誕生です!」
感極まった声は初めて聞くものだったが、その言葉に深く息を吐いている自分がいた。腹の底に溜まっていた力みを今になって自覚する。かなり緊張していたらしい。どんなに際どい場面でもここまでだったことはなかっただろう。子が生まれるのがこんなにも緊張を強いられるものだとは思わなかった。
許可が出たというので産室に向かった。室内には嗅ぎ慣れた臭いが満ちていた。出血が多かったのだろうか。その濃さに不安が増す。ベッドに近付くと胸に子を乗せたイルーゼが横たわっていた。顔色は青褪めていたが目には力があった。
「イルーゼ、よく頑張った」
ありきたりな言葉しかかけられなかったが、労わるように頭を撫でると泣きだした。気が強いこれでもお産は苦しかったのだろう。その上で子は腹を満たしたのか眠ってしまった。銀か……俺の出自を疑う者も黙るだろうが、どうせならお前と同じ色がよかった。いや、無事に生まれてくれたなら何色でもいい。眠った子はスージーに抱かれて子のための部屋へと向かい、俺はイルーゼを抱き上げて夫婦の寝室に向かった。産後のためにと改装した、以前よりは守りやすい部屋へ。抱き上げた身体は思った以上に軽かった。子が腹から出たせいもあるだろうが……以前よりも痩せただろう。
軽く食事をすると眠ってしまった。規則正しく繰り返される寝息に途方もない安堵が広がる。子よりもお前が無事でよかったと思ってしまう。言えばお前は怒るだろうから言わないが。だがそれが本音だ。未知の子よりも共にあったお前を失いたくないと思ってしまう。
「俺から離れるな」
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読んで下さってありがとうございます。
感想・お気に入り登録・エールも励みになります。
また誤字脱字を報告して下さる皆様に感謝申し上げます。
新たに「黒茨の魔女と金眼の下僕」の連載も始めました。
こちらもよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/687112907/698925653
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