184 / 262
第二部
一目惚れ?
しおりを挟む
「実はこのゲオルグはイルーゼ嬢に一目惚れしたようでしてね。先日お会いしてからずっとあなたのことばかり気にかけているのですよ」
ゲオルグ様と初めて会ったのは豊穣祭の後、陛下から晩餐に招かれた時だった。その帰りに王宮の廊下でヴォルフ様と歩いていたところで声をかけてきたのが公爵でゲオルグ様もご一緒だった。その時は軽い挨拶をしただけなのに、あの場面で一目惚れ? ゲオルグ様に視線を向けると目があった途端顔を背けられた。
「ははっ、ゲオルグ、恥ずかしがっていては何も始まらないぞ?」
公爵が楽しそうに今度はゲオルグ様の肩を叩いたが、ゲオルグ様は気まずそうにそっぽを向いたままだった。既婚の私に何を言っているのかしら……夫人たちの三人に向ける視線が益々冷え込んだ。
「ラファエル、失礼にもほどがありますよ」
地の底に溜まった冷気のような声が響いた。王妃様が青い瞳に冴え冴えとした怒りを乗せて公爵を見ていた。こんな王妃様を見たことがないわ。尋常ではないその様子に公爵が息を呑んだ音が耳に届いた。
「ゲオルグのどこがゾルガー侯爵と同等なのです? 爵位もないのに」
「私の持つ伯爵位を渡しますよ」
「それは領地のないものでしょう?」
「ええ、でも王太子殿下の側近ですからね。将来性は十分です。それにゾルガー侯爵だってゲオルグの年はまだ爵位も継いでいませんでしたよ」
確かにそうかもしれないけれど、なんだか論点をずらされている気がするわ。
「ゲオルグがお気に召さなければ別の者も紹介出来ますよ。いくらでも伝手はありますから」
それはつまり、現時点では特に当てがあるわけではないってことね。
「話にならないわね。あなたは経験していないからわからないでしょうけれど、知り合いもいない他国に単身嫁ぐのはとても孤独で辛いものよ。王女だった私ですらそうなのに、一貴族の令嬢にはあまりにも酷だわ。クラリッサ、あなたはどう? 両親も兄弟も友人もいない土地にたった一人よ、耐えられるの?」
押し黙った公爵を無視して王妃様がクラリッサ様にそう問いかけた。そうね、たった一人で他国に嫁ぐなど想像以上に孤独で苦しいでしょうね。
「あら、伯母様ったら大丈夫ですわ。侍女たちを連れていきますから。それにお父様やお母様、お兄様も会いに来て下さると仰っているわ」
王妃様の懸念を意に介することなくクラリッサ様が鈴を転がすような声で無邪気に答えたけれど……それは無理じゃないかしら。ゾルガー邸に連れていける侍女は一人か二人だと思うのだけど……他国の人間を屋敷に入れる危険性をヴォルフ様は軽視されないと思うわ。
「侍女ね……一人か二人なら認めて貰えるかもしれないけれど……」
「え?」
「ゾルガー侯爵は警戒心が強いのよ。ええ、とてもね。そうよね、イルーゼ様?」
「はい。私もお願いして一人だけお許し頂きました」
まぁ、私の場合、実家の扱いをご存じだったから認めて下さったけれど、クラリッサ様はどうかしら? 他国の王族に連なるとなれば警戒一択でしょうし、だったら認めない可能性が高いわ。
「そんな……で、でも、私がお願いすればお優しいヴォルフ様はきっと叶えて下さいますわ!」
クラリッサ様の言葉に公爵も笑顔で同意し、一方で王妃様は大きくため息をついた。その自信はどこから……って家格と美貌はこれ以上ないほど極上よね。でも、ゾルガー家は干渉を嫌って王家や家格の高い家との婚姻を避けている。彼女の強みはこの場合不利にならないかしら? それに…お優しいヴォルフ様って……隠し子の件といい、十年前はヴォルフ様の偽物がいたのかしら。
「これ以上話をしても無駄のようね。ラファエル、ごきげんよう」
「あ、姉上?」
「私は陛下の決定に従います。イルーゼ様は?」
「はい、私も陛下と夫に従いますわ」
王妃様の取り付く島もない様子に、公爵親子は渋々ながらも去って行った。姿が見えなくなると空気がほっと緩むのを感じた。
「ごめんなさいね、イルーゼ様」
三人の姿が見えなくなると、王妃様は力なく椅子に腰を下ろして消え入りそうな声で謝罪された。いつもはちゃん付けなのに様付けで呼ばれるのは、それだけ申し訳なく思っている証。
「全く……昔と変わらないわね……関税のことがあるからきつく言わなかったけれど……」
呟かれた言葉は掠れて疲労の色が深かった。公爵のあの態度は王妃様が母国で冷遇されていたとの噂を裏付けるものだった。前国王は正妃よりも国一の美女と謳われた側妃を寵愛し、唯一正妃のお子だった王妃様は地味だの華がないのとのくだらない理由で差を付けられたのだとか。聡明な王妃様を疎ましく思われたという話もあったわね。
「王妃様に謝って頂くことなどありませんわ。幼子ならともかく成人した大人がしたことですから」
嫁して三十年以上経つ王妃様。隣国出身だからと未だに敵意に似た視線を向ける人もいるけれど、我が国のために有益な政策を数多く提案し、女性の地位向上にも貢献していらっしゃる。とっくに我が国の要として必要なお方だわ。
「イルーゼ様の仰る通りですわ」
「王妃様はローゼンベルクの一員でいらっしゃいます。それに姉弟として過ごしたのは遠い昔のこと。公爵様のことで王妃様が謝罪なさる理由はありませんわ」
ギーゼラ様が王妃様の手を優しく取って慰め、他の方も同調して下さった。
「ありがとう、皆様」
声を詰まらせる王妃様の姿に、あの三人への怒りが湧いてきた。いくら王族とはいえ礼儀に欠いた態度は我が国を軽んじている証拠。王族なら王妃様の立場を考えるべきよ。それに私に一目惚れだなんて、息子に嘘までつかせて私を追い出そうだなんて信じられないわ。
その後のお茶会は今ひとつ盛り上がりに欠けたまま終わりを迎えた。馬車乗り場までエルマ様と連れ立って歩く。
「イルーゼ様、大丈夫ですか?」
気遣って下さったエルマ様に大丈夫だと笑顔を向けたけれど、心配は消えてくれなかったみたいね。暫く王都を離れる時に余計な心配をかけてしまったかしら。
「大丈夫ですわ、エルマ様。事前にヴォルフ様から断ったと伺っています。今更公爵が何を言ってきても決定は変わりませんわ」
「そう、ご存じだったのね。なら大丈夫かしら」
「ヴォルフ様は色んな可能性を考えた上でそう決められたはずです。変わることはないと思いますわ」
そういうとエルマ様がやっと強張りを解いてくれたわ。心配してくれる存在が嬉しい。どう考えてもゲオルグ様と共にアーレントへ、なんてあり得ないわね。それくらいなら実家でお義姉様を支えていた方がずっとマシだわ。馬車乗り場でエルマ様と別れてザーラと共に馬車に乗ると、馬は静かに走り出した。
王族の住む奥宮はゾルガー邸から近い。王族と我が家くらいしか許されない道を進むと、奥宮とは反対側の表に面した庭に公爵家の三人の姿が見えた。侍女や護衛だけでなくどこかの貴族らしい人物も一緒だけど距離があるから顔までは見えないわね。誰と話しているのかしら? そのうち報告があるとは思うけれど、公爵と親しくしている方は要注意ね。窓から視線を外し、背を預けて目を閉じた。
ヴォルフ様への求婚の真相は意外なものだった。あれは両国の交易を更に潤滑にするため、そして両国の関係強化のためだと書面には書かれていた。アーレントは国境を接するグレシウスとの関係が悪化しつつあるから、その対策のためのものだと思っていたけれど、まさか一令嬢の一目惚れが理由だったなんて……ゲオルグ様も私に一目惚れしたと言っていたけれど、あの家系はどうなっているのかしら。理解出来ないわ。もしその私が性悪で利用する気だったらどうするつもりなのよ。危機意識がなさ過ぎるわ。
それにしても面倒なことになったわね。あの傍若無人な態度ではどんな手を使ってくるかわからないわ。公爵が関税に関する協議の責任者という点も厄介だし。あの様子ではクラリッサ様との婚姻を条件に加えてきそう。先ずはヴォルフ様に報告だわ。クラリッサ様を受け容れるなんて……そんなことはなさらないわよね。
ゲオルグ様と初めて会ったのは豊穣祭の後、陛下から晩餐に招かれた時だった。その帰りに王宮の廊下でヴォルフ様と歩いていたところで声をかけてきたのが公爵でゲオルグ様もご一緒だった。その時は軽い挨拶をしただけなのに、あの場面で一目惚れ? ゲオルグ様に視線を向けると目があった途端顔を背けられた。
「ははっ、ゲオルグ、恥ずかしがっていては何も始まらないぞ?」
公爵が楽しそうに今度はゲオルグ様の肩を叩いたが、ゲオルグ様は気まずそうにそっぽを向いたままだった。既婚の私に何を言っているのかしら……夫人たちの三人に向ける視線が益々冷え込んだ。
「ラファエル、失礼にもほどがありますよ」
地の底に溜まった冷気のような声が響いた。王妃様が青い瞳に冴え冴えとした怒りを乗せて公爵を見ていた。こんな王妃様を見たことがないわ。尋常ではないその様子に公爵が息を呑んだ音が耳に届いた。
「ゲオルグのどこがゾルガー侯爵と同等なのです? 爵位もないのに」
「私の持つ伯爵位を渡しますよ」
「それは領地のないものでしょう?」
「ええ、でも王太子殿下の側近ですからね。将来性は十分です。それにゾルガー侯爵だってゲオルグの年はまだ爵位も継いでいませんでしたよ」
確かにそうかもしれないけれど、なんだか論点をずらされている気がするわ。
「ゲオルグがお気に召さなければ別の者も紹介出来ますよ。いくらでも伝手はありますから」
それはつまり、現時点では特に当てがあるわけではないってことね。
「話にならないわね。あなたは経験していないからわからないでしょうけれど、知り合いもいない他国に単身嫁ぐのはとても孤独で辛いものよ。王女だった私ですらそうなのに、一貴族の令嬢にはあまりにも酷だわ。クラリッサ、あなたはどう? 両親も兄弟も友人もいない土地にたった一人よ、耐えられるの?」
押し黙った公爵を無視して王妃様がクラリッサ様にそう問いかけた。そうね、たった一人で他国に嫁ぐなど想像以上に孤独で苦しいでしょうね。
「あら、伯母様ったら大丈夫ですわ。侍女たちを連れていきますから。それにお父様やお母様、お兄様も会いに来て下さると仰っているわ」
王妃様の懸念を意に介することなくクラリッサ様が鈴を転がすような声で無邪気に答えたけれど……それは無理じゃないかしら。ゾルガー邸に連れていける侍女は一人か二人だと思うのだけど……他国の人間を屋敷に入れる危険性をヴォルフ様は軽視されないと思うわ。
「侍女ね……一人か二人なら認めて貰えるかもしれないけれど……」
「え?」
「ゾルガー侯爵は警戒心が強いのよ。ええ、とてもね。そうよね、イルーゼ様?」
「はい。私もお願いして一人だけお許し頂きました」
まぁ、私の場合、実家の扱いをご存じだったから認めて下さったけれど、クラリッサ様はどうかしら? 他国の王族に連なるとなれば警戒一択でしょうし、だったら認めない可能性が高いわ。
「そんな……で、でも、私がお願いすればお優しいヴォルフ様はきっと叶えて下さいますわ!」
クラリッサ様の言葉に公爵も笑顔で同意し、一方で王妃様は大きくため息をついた。その自信はどこから……って家格と美貌はこれ以上ないほど極上よね。でも、ゾルガー家は干渉を嫌って王家や家格の高い家との婚姻を避けている。彼女の強みはこの場合不利にならないかしら? それに…お優しいヴォルフ様って……隠し子の件といい、十年前はヴォルフ様の偽物がいたのかしら。
「これ以上話をしても無駄のようね。ラファエル、ごきげんよう」
「あ、姉上?」
「私は陛下の決定に従います。イルーゼ様は?」
「はい、私も陛下と夫に従いますわ」
王妃様の取り付く島もない様子に、公爵親子は渋々ながらも去って行った。姿が見えなくなると空気がほっと緩むのを感じた。
「ごめんなさいね、イルーゼ様」
三人の姿が見えなくなると、王妃様は力なく椅子に腰を下ろして消え入りそうな声で謝罪された。いつもはちゃん付けなのに様付けで呼ばれるのは、それだけ申し訳なく思っている証。
「全く……昔と変わらないわね……関税のことがあるからきつく言わなかったけれど……」
呟かれた言葉は掠れて疲労の色が深かった。公爵のあの態度は王妃様が母国で冷遇されていたとの噂を裏付けるものだった。前国王は正妃よりも国一の美女と謳われた側妃を寵愛し、唯一正妃のお子だった王妃様は地味だの華がないのとのくだらない理由で差を付けられたのだとか。聡明な王妃様を疎ましく思われたという話もあったわね。
「王妃様に謝って頂くことなどありませんわ。幼子ならともかく成人した大人がしたことですから」
嫁して三十年以上経つ王妃様。隣国出身だからと未だに敵意に似た視線を向ける人もいるけれど、我が国のために有益な政策を数多く提案し、女性の地位向上にも貢献していらっしゃる。とっくに我が国の要として必要なお方だわ。
「イルーゼ様の仰る通りですわ」
「王妃様はローゼンベルクの一員でいらっしゃいます。それに姉弟として過ごしたのは遠い昔のこと。公爵様のことで王妃様が謝罪なさる理由はありませんわ」
ギーゼラ様が王妃様の手を優しく取って慰め、他の方も同調して下さった。
「ありがとう、皆様」
声を詰まらせる王妃様の姿に、あの三人への怒りが湧いてきた。いくら王族とはいえ礼儀に欠いた態度は我が国を軽んじている証拠。王族なら王妃様の立場を考えるべきよ。それに私に一目惚れだなんて、息子に嘘までつかせて私を追い出そうだなんて信じられないわ。
その後のお茶会は今ひとつ盛り上がりに欠けたまま終わりを迎えた。馬車乗り場までエルマ様と連れ立って歩く。
「イルーゼ様、大丈夫ですか?」
気遣って下さったエルマ様に大丈夫だと笑顔を向けたけれど、心配は消えてくれなかったみたいね。暫く王都を離れる時に余計な心配をかけてしまったかしら。
「大丈夫ですわ、エルマ様。事前にヴォルフ様から断ったと伺っています。今更公爵が何を言ってきても決定は変わりませんわ」
「そう、ご存じだったのね。なら大丈夫かしら」
「ヴォルフ様は色んな可能性を考えた上でそう決められたはずです。変わることはないと思いますわ」
そういうとエルマ様がやっと強張りを解いてくれたわ。心配してくれる存在が嬉しい。どう考えてもゲオルグ様と共にアーレントへ、なんてあり得ないわね。それくらいなら実家でお義姉様を支えていた方がずっとマシだわ。馬車乗り場でエルマ様と別れてザーラと共に馬車に乗ると、馬は静かに走り出した。
王族の住む奥宮はゾルガー邸から近い。王族と我が家くらいしか許されない道を進むと、奥宮とは反対側の表に面した庭に公爵家の三人の姿が見えた。侍女や護衛だけでなくどこかの貴族らしい人物も一緒だけど距離があるから顔までは見えないわね。誰と話しているのかしら? そのうち報告があるとは思うけれど、公爵と親しくしている方は要注意ね。窓から視線を外し、背を預けて目を閉じた。
ヴォルフ様への求婚の真相は意外なものだった。あれは両国の交易を更に潤滑にするため、そして両国の関係強化のためだと書面には書かれていた。アーレントは国境を接するグレシウスとの関係が悪化しつつあるから、その対策のためのものだと思っていたけれど、まさか一令嬢の一目惚れが理由だったなんて……ゲオルグ様も私に一目惚れしたと言っていたけれど、あの家系はどうなっているのかしら。理解出来ないわ。もしその私が性悪で利用する気だったらどうするつもりなのよ。危機意識がなさ過ぎるわ。
それにしても面倒なことになったわね。あの傍若無人な態度ではどんな手を使ってくるかわからないわ。公爵が関税に関する協議の責任者という点も厄介だし。あの様子ではクラリッサ様との婚姻を条件に加えてきそう。先ずはヴォルフ様に報告だわ。クラリッサ様を受け容れるなんて……そんなことはなさらないわよね。
3,339
お気に入りに追加
10,298
あなたにおすすめの小説
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
【完結】恋の終焉~愛しさあまって憎さ1000倍~
つくも茄子
恋愛
五大侯爵家、ミネルヴァ・リゼ・ウォーカー侯爵令嬢は第二王子の婚約者候補。それと同時に、義兄とも婚約者候補の仲という複雑な環境に身を置いていた。
それも第二王子が恋に狂い「伯爵令嬢(恋人)を妻(正妃)に迎えたい」と言い出したせいで。
第二王子が恋を諦めるのが早いか。それとも臣籍降下するのが早いか。とにかく、選ばれた王子の婚約者候補の令嬢達にすれば迷惑極まりないものだった。
ミネルヴァは初恋の相手である義兄と結婚する事を夢見ていたというに、突然の王家からの横やりに怒り心頭。それでも臣下としてグッと堪えた。
そんな中での義兄の裏切り。
愛する女性がいる?
その相手と結婚したい?
何を仰っているのでしょうか?
混乱するミネルヴァを置き去りに義兄はどんどん話を続ける。
「お義兄様、あなたは婿入りのための養子縁組ですよ」と言いたいのをグッと堪えたミネルヴァであった。義兄を許す?許さない?答えは一つ。
私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】
青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。
そして気付いてしまったのです。
私が我慢する必要ありますか?
※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定!
コミックシーモア様にて12/25より配信されます。
コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。
リンク先
https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
王子様は王妃の出産後すぐ離縁するつもりです~貴方が欲しいのは私の魔力を受け継ぐ世継ぎだけですよね?~
五月ふう
恋愛
ここはロマリア国の大神殿。ロマリア歴417年。雪が降りしきる冬の夜。
「最初から……子供を奪って……離縁するつもりだったのでしょう?」
ロマリア国王子エドワーズの妃、セラ・スチュワートは無表情で言った。セラは両手両足を拘束され、王子エドワーズの前に跪いている。
「……子供をどこに隠した?!」
質問には答えず、エドワーズはセラを怒鳴りつけた。背が高く黒い髪を持つ美しい王子エドワードの顔が、醜く歪んでいる。
「教えてあげない。」
その目には何の感情も浮かんでいない。セラは魔導士達が作る魔法陣の中央に座っていた。魔法陣は少しずつセラから魔力を奪っていく。
(もう……限界ね)
セラは生まれたときから誰よりも強い魔力を持っていた。その強い魔力は彼女から大切なものを奪い、不幸をもたらすものだった。魔力が人並み外れて強くなければ、セラはエドワーズの妃に望まれることも、大切な人と引き離されることもなかったはずだ。
「ちくしょう!もういいっ!セラの魔力を奪え!」
「良いのかしら?魔力がすべて失われたら、私は死んでしまうわよ?貴方の探し物は、きっと見つからないままになるでしょう。」
「魔力を失い、死にたくなかったら、子供の居場所を教えろ!」
「嫌よ。貴方には……絶対見つけられない場所に……隠しておいたから……。」
セラの体は白く光っている。魔力は彼女の生命力を維持するものだ。魔力がなくなれば、セラは空っぽの動かない人形になってしまう。
「もういいっ!母親がいなくなれば、赤子はすぐに見つかるっ。さあ、この死にぞこないから全ての魔力を奪え!」
広い神殿にエドワーズのわめき声が響いた。耳を澄ませば、ゴゴオオオという、吹雪の音が聞こえてくる。
(ねえ、もう一度だけ……貴方に会いたかったわ。)
セラは目を閉じて、大切な元婚約者の顔を思い浮かべる。彼はセラが残したものを見つけて、幸せになってくれるだろうか。
「セラの魔力をすべて奪うまで、あと少しです!」
魔法陣は目を開けていられないほどのまばゆい光を放っている。セラに残された魔力が根こそぎ奪われていく。もはや抵抗は無意味だった。
(ああ……ついに終わるのね……。)
ついにセラは力を失い、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
「ねえ、***…………。ずっと貴方を……愛していたわ……。」
彼の傍にいる間、一度も伝えたことのなかった想いをセラは最後にそっと呟いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる