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前当主の退場
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「次期後継はヴォルフと夫人の間に生まれた子になるだろう」
陛下が違えようもない確とした声でそう仰せられた。
「そ、そんなことが認められますか!! 正当なゾルガーの血を引くフレディ様がいらっしゃるのに!!」
前当主の悲鳴のような声が会場に響いた。彼がそれを望んでいるのは誰もが知るところだけど、血の繋がりもない彼がそこまで必死になる理由については社交界では長年の謎だった。そのせいで並々ならぬ事情があるのではないかとの噂も広がっていた。
「その私が、後継を辞退すると申し上げたのです」
激高する前当主を止めたのは、彼が何としてでも当主にしようと画策していたフレディ様だった。深緑の盛装を難なく着こなす彼は厳しい表情で前当主を見据えていた。私の視線に気付くと困ったような笑みを浮かべ、ヴォルフ様と視線が合うと表情を引き締めて小さく、でも力強く頷いた。
「フ、フレディ様、今、何と……」
「アウグスト卿、もう一度言おう。私はゾルガー家の当主の座など欲していない。私にその能力がないことは私が一番理解している。私は叔父上に願い出た。後継の座は叔父上のお子に譲りたい、私自身は叶うなら叔父上の補佐として支えていきたいと」
フレディ様がご自身の今後について、公の場ではっきりさせたのは今回が初めてだった。元より夜会などを苦手とされていた方だし交友関係も狭いのもあって知る人は少なかった。世間ではヴォルフ様が一方的に廃嫡にしたなどとの噂も流れていただけに、今の宣言に驚きの声が上がった。
「そ、そんな……! そんな筈はございません! フレディ様は優秀で十分ゾルガーの後継に相応しいお方だ! 足りない部分は周りが支えて……ああ、爺が、この爺がお支えしましょうぞ!」
杖を放り投げて転がるようにフレディ様の元に駆けつけ、膝をついてフレディ様に縋りついた。どうしてそこまで出来るのかと、何も知らない人たちが怪訝な表情で様子を伺っている。
「フレディ様はナディア様のご令孫様。尊い血を継ぐお方です」
「それなら叔父上でいいだろう。叔父上は国王ご夫妻の実子だ。私は確かに王女を祖母に持つが母は貧しい子爵家の出なのだからな」
「フレディ様っ!!」
そう言うとフレディ様はやんわりと前当主の手を振り払って身を離した。
「フレディ様!! そのようなこと、気になさる必要はございません! お考え直しを!! どうか、どうかっ!!」
「何を言われても私の意志は変わりません。部外者のあなたに口を挟まれたくない」
尚もしつこく食い下がろうとする前当主に、フレディ様が嫌悪感を露わにして言い捨てた。穏やかな彼にしては珍しいわ。でも、フレディ様はヴォルフ様を尊敬して実の父のように兄のように慕っている。そのヴォルフ様を狙っていると噂の前当主にいい感情を持つはずがないのよね。
「部外者だなどと……! そんな風に仰らないで下され。爺は、爺はあなた様のことだけを案じて……」
「何を仰っている? あなたは私とは赤の他人。あなたに気遣われる理由はない」
「いいえ! 理由は……! 理由ならあります!! あなた様はわしの――」
「黙れ」
その先の言葉を遮るように前当主の声を鋭く遮ったのはヴォルフ様だった。私から僅かに離れ、近くにいた護衛騎士の剣を抜いてその切先を前当主の首筋に当てていた。余りの早業に前当主も会場内にいる人たちも動きを止めてその状況に見入っていた。離れた手が寂しい……
「それ以上一言でも発してみろ。切先が喉を突き破るぞ」
「ぅ……」
「何が幸せかは本人が決めることだ。フレディの意志を尊重しろ」
ヴォルフ様の氷のような冷え冷えとした空気にさすがの前当主も膝をついたまま喘ぐような呼吸を繰り返していた。その度に剣の先端が喉に食い込んで今にも皮膚を破りそうで、見ているこちらの方が息を止めたくなった。
「一つ答えろ。父の第二夫人のメリアとその子の殺害を命じたのは、お前か?」
その言葉に会場内が再び息を呑んだ。私だってこうも直球でそれを問うとは思わなかったわ。そんなことを問うても答えないと思うのだけど、ヴォルフ様からは殺気ともとれる強い怒りが感じられて前当主はすっかりそれに吞まれていた。その周りだけ温度が一気に下がったような気がして鳥肌が立ったわ。
「……わ、わしは……」
「答えろ!」
「わ、わしは……わしが命じ、た……」
抗いがたく鋭すぎるヴォルフ様の声に対して、前当主は掠れて聞きとるのがやっとの声で是と答えた。目に映る誰もが驚愕に目を見開くのが見えた。その中で平然としていたのはヴォルフ様と国王ご夫妻、そして王太子殿下だった。こんな時なのにさすがだと感心してしまった。
「陛下、お聞きになられたか」
「ああ、手間をかけたな、ヴォルフ卿。アウグスト卿よ、その話、別室で詳しく聞かせて貰おうか」
陛下が護衛に前当主を貴族牢に連れて行くように命じると、騎士が人の間から現れて前当主を囲った。前当主が拘束されるとヴォルフ様が切先を前当主の首から放し、近くにいた騎士に剣を返した。
「……ち、違う……! い、今のは……! 今のは違う!!」
「お前が殺せと命じたのだろう?」
「そうだ! ち、違う……私は、私は……違う! 違う! 今のは違うのじゃ!!」
両腕を騎士に抑えられた前当主が狂ったように叫び始めた。その様子が尋常ではなく、近くにいた五侯爵家の当主たちも驚きの表情を浮かべている。ミュンターの当主は父の証言に衝撃を受けて固まっていたけれど、証言の内容が理解出来たからか、豹変した態度に恐れをなしたのか顔色を一層青くしていた。
前当主は騎士らに半ば抱えられるようにして会場を去った。最後まで違うと叫び続けている様は異様で、何かに取り付かれたようにも見えた。前当主の叫び声が遠ざかると、ミュンター侯爵家の方々にも控室に下がるよう命が下された。騎士には厳重に見張るようにとの指示が出て、彼らは項垂れながら静かに騎士たちと共に会場を後にした。その後をハリマン様と共にいたアルビーナ様が追いかけていく。彼女を巻き込んでしまったわ。原因は前当主とは言え彼女とはいい関係を築けていたから申し訳ないけれど、こればかりはどうしようもない。彼女を助ける手段がないかヴォルフ様に相談してみよう。
私は側に戻ってこられたヴォルフ様の腕に掴まってその様子を見守った。最大の仇敵を負傷者の一人も出さずに排除出来たことに胸が熱くなる。もしかしたらこの会場にも暗殺者が紛れ込んでいるかもしれないと思っていたけれど、これでヴォルフ様の命を狙う者も減るかしら。もちろんまだ油断は出来ないし、王族と知れれば別の危険を呼び寄せる可能性もあるけれど。それでも、長年ヴォルフ様の命を明確に狙っていた前当主が自身の罪を告白したのだ。これだけの人がその様子を見ていたのだから、今更なかったことには出来ないわ。
「皆の者、せっかく祝いに出向いてくれたのにつまらないことに巻き込んですまなかった。だが先王の代からの懸案がようやく取り除かれた。まだやらねばならないこともあるがそれは明日以降のこと。今日はそれも祝ってほしい」
陛下は続けて王家秘蔵のワインを配るように指示を出すと、会場内は戸惑いを含みながらもワッと歓声に沸いた。多くの人が長年ゾルガー家とミュンター前当主との確執を知っていただけに安堵もあったかもしれない。とばっちりを懸念していた家も多かっただろうと思う。また不仲説が流れていたフレディ様の意志も明らかになり、ヴォルフ様との関係が実はかなり良好なことも明らかになった。ゾルガー家の長年の憂いはミュンター前当主と共に消えたと言っていいかもしれない。
陛下が違えようもない確とした声でそう仰せられた。
「そ、そんなことが認められますか!! 正当なゾルガーの血を引くフレディ様がいらっしゃるのに!!」
前当主の悲鳴のような声が会場に響いた。彼がそれを望んでいるのは誰もが知るところだけど、血の繋がりもない彼がそこまで必死になる理由については社交界では長年の謎だった。そのせいで並々ならぬ事情があるのではないかとの噂も広がっていた。
「その私が、後継を辞退すると申し上げたのです」
激高する前当主を止めたのは、彼が何としてでも当主にしようと画策していたフレディ様だった。深緑の盛装を難なく着こなす彼は厳しい表情で前当主を見据えていた。私の視線に気付くと困ったような笑みを浮かべ、ヴォルフ様と視線が合うと表情を引き締めて小さく、でも力強く頷いた。
「フ、フレディ様、今、何と……」
「アウグスト卿、もう一度言おう。私はゾルガー家の当主の座など欲していない。私にその能力がないことは私が一番理解している。私は叔父上に願い出た。後継の座は叔父上のお子に譲りたい、私自身は叶うなら叔父上の補佐として支えていきたいと」
フレディ様がご自身の今後について、公の場ではっきりさせたのは今回が初めてだった。元より夜会などを苦手とされていた方だし交友関係も狭いのもあって知る人は少なかった。世間ではヴォルフ様が一方的に廃嫡にしたなどとの噂も流れていただけに、今の宣言に驚きの声が上がった。
「そ、そんな……! そんな筈はございません! フレディ様は優秀で十分ゾルガーの後継に相応しいお方だ! 足りない部分は周りが支えて……ああ、爺が、この爺がお支えしましょうぞ!」
杖を放り投げて転がるようにフレディ様の元に駆けつけ、膝をついてフレディ様に縋りついた。どうしてそこまで出来るのかと、何も知らない人たちが怪訝な表情で様子を伺っている。
「フレディ様はナディア様のご令孫様。尊い血を継ぐお方です」
「それなら叔父上でいいだろう。叔父上は国王ご夫妻の実子だ。私は確かに王女を祖母に持つが母は貧しい子爵家の出なのだからな」
「フレディ様っ!!」
そう言うとフレディ様はやんわりと前当主の手を振り払って身を離した。
「フレディ様!! そのようなこと、気になさる必要はございません! お考え直しを!! どうか、どうかっ!!」
「何を言われても私の意志は変わりません。部外者のあなたに口を挟まれたくない」
尚もしつこく食い下がろうとする前当主に、フレディ様が嫌悪感を露わにして言い捨てた。穏やかな彼にしては珍しいわ。でも、フレディ様はヴォルフ様を尊敬して実の父のように兄のように慕っている。そのヴォルフ様を狙っていると噂の前当主にいい感情を持つはずがないのよね。
「部外者だなどと……! そんな風に仰らないで下され。爺は、爺はあなた様のことだけを案じて……」
「何を仰っている? あなたは私とは赤の他人。あなたに気遣われる理由はない」
「いいえ! 理由は……! 理由ならあります!! あなた様はわしの――」
「黙れ」
その先の言葉を遮るように前当主の声を鋭く遮ったのはヴォルフ様だった。私から僅かに離れ、近くにいた護衛騎士の剣を抜いてその切先を前当主の首筋に当てていた。余りの早業に前当主も会場内にいる人たちも動きを止めてその状況に見入っていた。離れた手が寂しい……
「それ以上一言でも発してみろ。切先が喉を突き破るぞ」
「ぅ……」
「何が幸せかは本人が決めることだ。フレディの意志を尊重しろ」
ヴォルフ様の氷のような冷え冷えとした空気にさすがの前当主も膝をついたまま喘ぐような呼吸を繰り返していた。その度に剣の先端が喉に食い込んで今にも皮膚を破りそうで、見ているこちらの方が息を止めたくなった。
「一つ答えろ。父の第二夫人のメリアとその子の殺害を命じたのは、お前か?」
その言葉に会場内が再び息を呑んだ。私だってこうも直球でそれを問うとは思わなかったわ。そんなことを問うても答えないと思うのだけど、ヴォルフ様からは殺気ともとれる強い怒りが感じられて前当主はすっかりそれに吞まれていた。その周りだけ温度が一気に下がったような気がして鳥肌が立ったわ。
「……わ、わしは……」
「答えろ!」
「わ、わしは……わしが命じ、た……」
抗いがたく鋭すぎるヴォルフ様の声に対して、前当主は掠れて聞きとるのがやっとの声で是と答えた。目に映る誰もが驚愕に目を見開くのが見えた。その中で平然としていたのはヴォルフ様と国王ご夫妻、そして王太子殿下だった。こんな時なのにさすがだと感心してしまった。
「陛下、お聞きになられたか」
「ああ、手間をかけたな、ヴォルフ卿。アウグスト卿よ、その話、別室で詳しく聞かせて貰おうか」
陛下が護衛に前当主を貴族牢に連れて行くように命じると、騎士が人の間から現れて前当主を囲った。前当主が拘束されるとヴォルフ様が切先を前当主の首から放し、近くにいた騎士に剣を返した。
「……ち、違う……! い、今のは……! 今のは違う!!」
「お前が殺せと命じたのだろう?」
「そうだ! ち、違う……私は、私は……違う! 違う! 今のは違うのじゃ!!」
両腕を騎士に抑えられた前当主が狂ったように叫び始めた。その様子が尋常ではなく、近くにいた五侯爵家の当主たちも驚きの表情を浮かべている。ミュンターの当主は父の証言に衝撃を受けて固まっていたけれど、証言の内容が理解出来たからか、豹変した態度に恐れをなしたのか顔色を一層青くしていた。
前当主は騎士らに半ば抱えられるようにして会場を去った。最後まで違うと叫び続けている様は異様で、何かに取り付かれたようにも見えた。前当主の叫び声が遠ざかると、ミュンター侯爵家の方々にも控室に下がるよう命が下された。騎士には厳重に見張るようにとの指示が出て、彼らは項垂れながら静かに騎士たちと共に会場を後にした。その後をハリマン様と共にいたアルビーナ様が追いかけていく。彼女を巻き込んでしまったわ。原因は前当主とは言え彼女とはいい関係を築けていたから申し訳ないけれど、こればかりはどうしようもない。彼女を助ける手段がないかヴォルフ様に相談してみよう。
私は側に戻ってこられたヴォルフ様の腕に掴まってその様子を見守った。最大の仇敵を負傷者の一人も出さずに排除出来たことに胸が熱くなる。もしかしたらこの会場にも暗殺者が紛れ込んでいるかもしれないと思っていたけれど、これでヴォルフ様の命を狙う者も減るかしら。もちろんまだ油断は出来ないし、王族と知れれば別の危険を呼び寄せる可能性もあるけれど。それでも、長年ヴォルフ様の命を明確に狙っていた前当主が自身の罪を告白したのだ。これだけの人がその様子を見ていたのだから、今更なかったことには出来ないわ。
「皆の者、せっかく祝いに出向いてくれたのにつまらないことに巻き込んですまなかった。だが先王の代からの懸案がようやく取り除かれた。まだやらねばならないこともあるがそれは明日以降のこと。今日はそれも祝ってほしい」
陛下は続けて王家秘蔵のワインを配るように指示を出すと、会場内は戸惑いを含みながらもワッと歓声に沸いた。多くの人が長年ゾルガー家とミュンター前当主との確執を知っていただけに安堵もあったかもしれない。とばっちりを懸念していた家も多かっただろうと思う。また不仲説が流れていたフレディ様の意志も明らかになり、ヴォルフ様との関係が実はかなり良好なことも明らかになった。ゾルガー家の長年の憂いはミュンター前当主と共に消えたと言っていいかもしれない。
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