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久しぶりの帰宅
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翌々日、私はロッテやザーラたちと共に実家に向かっていた。両親や兄と一度ちゃんと話をしてみたいと思っていたけれど、婚姻前の今がその時期だと思ったから。仮にお前など実子ではないと言われても婚姻してしまえばもうどうでもいい。二度と両親や兄とは関わらなければいいだけだもの。もちろん今後のこともあるからお義姉様との関係は続けるけれどそれはそれ。
それに、あの家を今後どうするかを見極めるために彼らの考えや思いを知っておきたいというのもある。ただの娘、妹のイルーゼとしてでなければきっと彼らの本音は引き出せない。彼らの答えはある程度予想出来ているから気持ちが暗くなるのはどうしようもないけれど今更それで傷つくことはないわ。
「お帰りなさい、イルーゼ様」
「お帰りなさいませ、お嬢様」
出迎えてくれたのはお義姉様とバナン、そして我が家の使用人が何人か。両親も兄も出てこなかったわ。予想通り過ぎて思わず笑いが込み上げてきた。
「お義姉様、お会いしたかったですわ。久しぶりねバナン。お父様たちはお元気?」
「はい、皆さま恙なくお過ごしでいらっしゃいます」
恙なく過ごしているのに出迎えもしないなんて。特に父と兄、これからヴォルフ様のお力を借りなければいけないのにその夫人になる私にこの態度、本気で立て直す気があるのかしらと疑ってしまう。まぁ、お陰でこれからやることに心が痛まないから幸いなのかしら。
十数年を過ごした自室は家を出た時のまま残されていた。掃除もされているし何かが欠けているわけではなさそうね。もっとも大事なものは全てゾルガー邸に持っていっているから無くなって困ることはないけれど。
暫くするとお義姉様からお茶のお誘いを頂いたのでこちらに来て貰う様にお願いしたわ。私には毒見が付いている。お義姉様を疑うつもりはないけれど気を悪くさせてしまいたくないから。それにあの計画のこともあるから今はこの家の使用人に会話を聞かれたくないのよね。
「両親も兄も相変わらずですのね」
マルガが淹れてくれたお茶は花に似た甘い香りが特徴のもの。他国の品で滅多に手に入らないものだからお義姉様へのお土産としても持ってきたものの一つ。
「そう簡単に人は変われませんわ」
そう言ってお義姉様は困ったような笑みを浮かべた。変われる人ならとっくに変わっているわよね。残念ながらお義姉様の労力は無駄になりそう。それでも出来ることは全てしておきたいとお義姉様は言う。縁あって夫婦になったのだからと。こんなにも寄り添おうとしてくれるお義姉様にあの兄には勿体なさ過ぎるわ。
「最後まで足掻いてはみますけれど、徒労に終わりそうですわ」
「そうですか。でもその方が後悔が少なくて済みますわ」
「イルーゼ様ったら……でも、その通りですわね。微かに残っていた情も綺麗さっぱり消せそうですわ」
そんな言葉がお義姉様から出てくるとは思わなかったわ。少し寂しそうな困ったような笑みの理由はあの兄なの?
「ふふっ、意外かしら? でも、関係が良好な時期もありましたのよ。婚約者になったばかりの頃でしたけれどね」
そういうものなのかしら? 確かに最初はお互いに遠慮もあって兄も礼儀正しくしていたのかもしれないけれど。私が知らない顔が兄にもあったのね。身内だからか一緒に過ごした年数のせいか兄のことはお義姉様よりも知っているような気がしていたわ。
「お義姉様、迷うようなら仰って下さい。今ならまだ別の方法に変えることも出来ますから」
「ありがとう。でも……もういいわ。実はね、私、夫なのにレイモンド様を生理的に受け付けなくなってしまったのよ」
「生理的に?」
「ええ。触れられるのが気持ち悪くて……未婚のイルーゼ様に言うことじゃないのだけど、閨が苦痛で仕方ないの」
確かに兄は美男とは言い難い。ちゃんと湯あみなどもしているのに所作が雑なせいか清潔感がないし、平気で女性に体型のことを指摘するデリカシーのない人。それ以外でもそう言わせる心当たりがあり過ぎる。申し訳ないわ……
「だからイルーゼ様からの提案を聞いて、ほっとしたっていうのが正直な気持ちなの」
穏やかな声に嘘は感じられないわ。お義姉様にとって利があったのなら罪悪感も薄れるわね。
「何が起きても決して悪いようには致しませんわ。これからのガウス家を背負うのはお義姉様です。私も協力しますから困ったとこがあったらどんなことでも仰って下さい」
これは本心だった。兄との婚姻は家同士の決めごとだからお義姉様に選択肢なんかなかった。婚約が成ったのは姉がフレディ様の婚約者に決まって、ギーゼン伯爵家が我が家を通じてゾルガー家との繋がりを望んだから。
「イルーゼ様がそう言って下さると心強いわ。ふふ、実はこのお話を頂いてからわくわくしているの。自分の力をどれだけ試せるかって」
そう語る目はさっきとは一転して生き生きしていた。
「お義姉様なら何の心配も要りませんわ。どうか存分におやりになって」
「まぁ、そんなことを言ったら本当に遠慮しませんわよ?」
「むしろそうしていただける方が嬉しいですわ」
お義姉様は大丈夫ね。とっくに先を見据えているわ。学園でも才女として有名だったしご友人が多くて人望もあるもの。兄なんかよりもずっと頼りになるわ。
「お義母様はどうなさるの?」
「母は……話を聞いてから考えようと思っていますの。母の人物像が思っていたものと違う気がするので……」
父と兄は一線から引いてもらうけれど、母のことは特に決めていなかった。父が一線を退けば母も付いていくと思っていたから。でも、そんな母は実はいないのではないかとの思いが強まっている。
「お義母様……そうね、お義父様に従順でいかにも貴族夫人って方だと思っていたけれど、何と言うか掴みどころがないわよね。お義父様どころかレイモンド様にも愛情があるのかしらと思うことは何度もあったわ」
「ええ、私も同じように感じていますの」
母は貴族の夫人として夫を立てる妻であり子どもを慈しむ母という典型的なタイプに見える。私は慈しまれた記憶が薄いけれど世間から見る母はそんな感じなのよね。父のことを慕っていると思っていたけれど、最近それが揺らいでいる。父や兄姉よりも得体が知れないと言った方がいいかもしれない。
「お義母様があの子のことを知ったらどうなさるのかしらって、私もずっと考えていたのよ。だけど……想像出来ないのよね。お義母様がどうなさるのか」
「私もそう感じていますわ」
母は本当に父を愛していたのかしら? 自分の実姉に未だに執着する男なのに? 実子よりも伯母の子を溺愛する夫を? そう思うと答えは常に「否」としか出てこない。私だったら全く愛せないし気持ち悪いと思ってしまうわ。そんな相手に触れられるのも悍ましいとすら感じてしまうかもしれない。
その日の夕食は久しぶりに姉以外の家族が揃ったわ。兄夫婦と食事を共にするなんて何年振りかしら。
「イルーゼ、ゾルガー侯爵は何か言っていたか?」
食事が始まって早々に兄が居丈高にそう言ってきた。言っていたかじゃないでしょうと思ったけれどそれを指摘すると食事が一層不味くなるから飲み込んだわ。全くお義姉様が生理的に受け付けないといった意味がそれだけでも解るわ。
「特には何も。ヴォルフ様はお忙しい方ですから」
「チッ、何だよ、役に立たねぇ……」
本人は声を抑えたつもりらしいけれど、舌打ちもその声はしっかり私に届いていたわよ。あんなことをしておいてそんなことが言える立場だと思っているのが腹立たしいわ。
「役に立たない? そんな風に仰るならヴォルフ様のお力は必要ありませんわね?」
「な……!」
「レイモンド!」
兄が言葉を詰まらせ、父の諫める声が飛んだ。よかったわ、父は現状を理解しているみたいね。
「お、っ女のくせに生意気だぞっ!!」
あっという間に激高したけれど、この程度のことで我を忘れるようでは貴族社会ではやっていけないわよ。
「レイモンド、言葉を慎め」
「そうですわあなた、イルーゼ様はゾルガー侯爵夫人になりますのよ」
「うるさいっ!!
お義姉様のとりなしに兄は怒鳴り声で答えた。父の制止すらも耳に入らないらしい。
「うるさいのはお兄様ですわ。廃嫡されたいのですか?」
それに、あの家を今後どうするかを見極めるために彼らの考えや思いを知っておきたいというのもある。ただの娘、妹のイルーゼとしてでなければきっと彼らの本音は引き出せない。彼らの答えはある程度予想出来ているから気持ちが暗くなるのはどうしようもないけれど今更それで傷つくことはないわ。
「お帰りなさい、イルーゼ様」
「お帰りなさいませ、お嬢様」
出迎えてくれたのはお義姉様とバナン、そして我が家の使用人が何人か。両親も兄も出てこなかったわ。予想通り過ぎて思わず笑いが込み上げてきた。
「お義姉様、お会いしたかったですわ。久しぶりねバナン。お父様たちはお元気?」
「はい、皆さま恙なくお過ごしでいらっしゃいます」
恙なく過ごしているのに出迎えもしないなんて。特に父と兄、これからヴォルフ様のお力を借りなければいけないのにその夫人になる私にこの態度、本気で立て直す気があるのかしらと疑ってしまう。まぁ、お陰でこれからやることに心が痛まないから幸いなのかしら。
十数年を過ごした自室は家を出た時のまま残されていた。掃除もされているし何かが欠けているわけではなさそうね。もっとも大事なものは全てゾルガー邸に持っていっているから無くなって困ることはないけれど。
暫くするとお義姉様からお茶のお誘いを頂いたのでこちらに来て貰う様にお願いしたわ。私には毒見が付いている。お義姉様を疑うつもりはないけれど気を悪くさせてしまいたくないから。それにあの計画のこともあるから今はこの家の使用人に会話を聞かれたくないのよね。
「両親も兄も相変わらずですのね」
マルガが淹れてくれたお茶は花に似た甘い香りが特徴のもの。他国の品で滅多に手に入らないものだからお義姉様へのお土産としても持ってきたものの一つ。
「そう簡単に人は変われませんわ」
そう言ってお義姉様は困ったような笑みを浮かべた。変われる人ならとっくに変わっているわよね。残念ながらお義姉様の労力は無駄になりそう。それでも出来ることは全てしておきたいとお義姉様は言う。縁あって夫婦になったのだからと。こんなにも寄り添おうとしてくれるお義姉様にあの兄には勿体なさ過ぎるわ。
「最後まで足掻いてはみますけれど、徒労に終わりそうですわ」
「そうですか。でもその方が後悔が少なくて済みますわ」
「イルーゼ様ったら……でも、その通りですわね。微かに残っていた情も綺麗さっぱり消せそうですわ」
そんな言葉がお義姉様から出てくるとは思わなかったわ。少し寂しそうな困ったような笑みの理由はあの兄なの?
「ふふっ、意外かしら? でも、関係が良好な時期もありましたのよ。婚約者になったばかりの頃でしたけれどね」
そういうものなのかしら? 確かに最初はお互いに遠慮もあって兄も礼儀正しくしていたのかもしれないけれど。私が知らない顔が兄にもあったのね。身内だからか一緒に過ごした年数のせいか兄のことはお義姉様よりも知っているような気がしていたわ。
「お義姉様、迷うようなら仰って下さい。今ならまだ別の方法に変えることも出来ますから」
「ありがとう。でも……もういいわ。実はね、私、夫なのにレイモンド様を生理的に受け付けなくなってしまったのよ」
「生理的に?」
「ええ。触れられるのが気持ち悪くて……未婚のイルーゼ様に言うことじゃないのだけど、閨が苦痛で仕方ないの」
確かに兄は美男とは言い難い。ちゃんと湯あみなどもしているのに所作が雑なせいか清潔感がないし、平気で女性に体型のことを指摘するデリカシーのない人。それ以外でもそう言わせる心当たりがあり過ぎる。申し訳ないわ……
「だからイルーゼ様からの提案を聞いて、ほっとしたっていうのが正直な気持ちなの」
穏やかな声に嘘は感じられないわ。お義姉様にとって利があったのなら罪悪感も薄れるわね。
「何が起きても決して悪いようには致しませんわ。これからのガウス家を背負うのはお義姉様です。私も協力しますから困ったとこがあったらどんなことでも仰って下さい」
これは本心だった。兄との婚姻は家同士の決めごとだからお義姉様に選択肢なんかなかった。婚約が成ったのは姉がフレディ様の婚約者に決まって、ギーゼン伯爵家が我が家を通じてゾルガー家との繋がりを望んだから。
「イルーゼ様がそう言って下さると心強いわ。ふふ、実はこのお話を頂いてからわくわくしているの。自分の力をどれだけ試せるかって」
そう語る目はさっきとは一転して生き生きしていた。
「お義姉様なら何の心配も要りませんわ。どうか存分におやりになって」
「まぁ、そんなことを言ったら本当に遠慮しませんわよ?」
「むしろそうしていただける方が嬉しいですわ」
お義姉様は大丈夫ね。とっくに先を見据えているわ。学園でも才女として有名だったしご友人が多くて人望もあるもの。兄なんかよりもずっと頼りになるわ。
「お義母様はどうなさるの?」
「母は……話を聞いてから考えようと思っていますの。母の人物像が思っていたものと違う気がするので……」
父と兄は一線から引いてもらうけれど、母のことは特に決めていなかった。父が一線を退けば母も付いていくと思っていたから。でも、そんな母は実はいないのではないかとの思いが強まっている。
「お義母様……そうね、お義父様に従順でいかにも貴族夫人って方だと思っていたけれど、何と言うか掴みどころがないわよね。お義父様どころかレイモンド様にも愛情があるのかしらと思うことは何度もあったわ」
「ええ、私も同じように感じていますの」
母は貴族の夫人として夫を立てる妻であり子どもを慈しむ母という典型的なタイプに見える。私は慈しまれた記憶が薄いけれど世間から見る母はそんな感じなのよね。父のことを慕っていると思っていたけれど、最近それが揺らいでいる。父や兄姉よりも得体が知れないと言った方がいいかもしれない。
「お義母様があの子のことを知ったらどうなさるのかしらって、私もずっと考えていたのよ。だけど……想像出来ないのよね。お義母様がどうなさるのか」
「私もそう感じていますわ」
母は本当に父を愛していたのかしら? 自分の実姉に未だに執着する男なのに? 実子よりも伯母の子を溺愛する夫を? そう思うと答えは常に「否」としか出てこない。私だったら全く愛せないし気持ち悪いと思ってしまうわ。そんな相手に触れられるのも悍ましいとすら感じてしまうかもしれない。
その日の夕食は久しぶりに姉以外の家族が揃ったわ。兄夫婦と食事を共にするなんて何年振りかしら。
「イルーゼ、ゾルガー侯爵は何か言っていたか?」
食事が始まって早々に兄が居丈高にそう言ってきた。言っていたかじゃないでしょうと思ったけれどそれを指摘すると食事が一層不味くなるから飲み込んだわ。全くお義姉様が生理的に受け付けないといった意味がそれだけでも解るわ。
「特には何も。ヴォルフ様はお忙しい方ですから」
「チッ、何だよ、役に立たねぇ……」
本人は声を抑えたつもりらしいけれど、舌打ちもその声はしっかり私に届いていたわよ。あんなことをしておいてそんなことが言える立場だと思っているのが腹立たしいわ。
「役に立たない? そんな風に仰るならヴォルフ様のお力は必要ありませんわね?」
「な……!」
「レイモンド!」
兄が言葉を詰まらせ、父の諫める声が飛んだ。よかったわ、父は現状を理解しているみたいね。
「お、っ女のくせに生意気だぞっ!!」
あっという間に激高したけれど、この程度のことで我を忘れるようでは貴族社会ではやっていけないわよ。
「レイモンド、言葉を慎め」
「そうですわあなた、イルーゼ様はゾルガー侯爵夫人になりますのよ」
「うるさいっ!!
お義姉様のとりなしに兄は怒鳴り声で答えた。父の制止すらも耳に入らないらしい。
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