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逃げ出した姉の恋人
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翌日、私はゾルガー邸のサロンでエルマ様を迎えていた。エルマ様の手紙には至急会って話がしたい、詳細は会って話すとだけ書かれていたわ。よほど重要なことなのだろうと、翌日の午後の夫人教育を後日に回して貰った。
「どうされましたの? エルマ様がそこまで慌てるなんてお珍しい」
「ええ、既に侯爵様はご存じだとは思いますが、念のためにと思いまして。イルーゼ様、クラウス様が姿を消したそうですわ」
「クラウス様って……確かアルトナーの領に送られたのでは……」
「ええ。ですが数日前に姿を消したそうですわ」
「数日前に?」
クラウス様が領地に向かったのはランベルツ侯爵家の夜会の前で、かれこれ一月は経っているわ。そりゃあ、そのまま領地にいてもその先にあるのは死だから逃げ出したくなるでしょうけど……
「イルーゼ様、気を付けてくださいね。ただ死を恐れて逃げ出したのならいいのですが、腹に一物抱えている可能性もありますわ」
「つまり私を害しようと?」
「それは何とも。クラウス様が復讐をと考える相手は他にもいます。リシェル様が王領に幽閉になったのでそちらを救い出そうとされるかもしれません。彼の意識がイルーゼ様に向かう可能性は小さいと思いますが……」
エルマ様の言う通りで確かにクラウス様の関心が私に向く可能性は少ないと思うわ。行くとしたら姉のところじゃないかしら? その姉もクラウス様にとっては何人もいる相手の一人にすぎないけれど。彼が逮捕されたのは騎士団が押収した麻薬を横領していたことが発覚したからで、告発したのは騎士団よね。リシェル様が幽閉になったのだって私が何かをしたわけじゃない。私が狙われる理由は小さいと思うのだけど……
「……ヴォルフ様、ですか?」
エルマ様が疲れた顔で頷いたけれどため息しか出ないわ。
「クラウス様は昔から侯爵様に対抗意識をお持ちでしたわ。侯爵様はお強いので簡単に手が出せませんでしょう? そうなれば……」
そんな理由でと思うけれどエルマ様の言う通りなのよね。だったら正面からヴォルフ様に向かえばいいのに。そうは思うけれどヴォルフ様はクラウス様なんて素手で倒してしまわれそうよ。ロジーナ様は王宮だから手を出すのは簡単じゃないし。そうね、この場合私も狙うなら私にするわ。
「ふふ、私を狙ったところでヴォルフ様は何とも思われませんのにね」
「イルーゼ様ったら……侯爵様に大事にされているではありませんか」
「それは、まぁ……」
それは横槍が入らないようそう見せているだけで私たちの間に愛があるわけじゃないわ。ランベルツの夜会でダンスを続けて踊ったのもあの場に現れたリシェル様への牽制だったもの。
「リシェル様は……何がしたかったのかしら?」
「イルーゼ様?」
「だって、ヴォルフ様の妻になりたいなら陛下にお願いするのが一番でしょう? 国のために十年を異国で費やしたのならその見返りにと願い出ればよかったのに」
「確かにそうですわね。侯爵様も陛下のご命令だったら無下にはなさらないでしょうし」
陛下にとっては唯一残った王女。しかも国のために嫁いで務めを果たしたのなら、その後は多少の希望を叶えて下さったのではないかしら。ヴォルフ様の相手は私である必要はないのだから陛下を説得すれば済んだ話よ。
「ヴォルフ様に気があるように思ったけれど熱がないというか……振り返ってみると好意があったようには見えなくて」
「ではゾルガー侯爵夫人の座を?」
「その方がまだしっくりきますわ。ヴォルフ様にだって利があると示せば可能性はあったと思いますわ」
私のようにね。それに王女という立場は十分に利があると思うわ。子どもは出来ないかもしれないけれどフレディ様がいるし何とでもなるわ。王家との繋がりを強化すればゾルガー家の立場は一層強くなる。
「確かにそうですわね。だったらクラウス様とのお付き合いも控えるべきでしたわ。お薬の件も……そうそう、あのリシェル様がサロンで配っていたお薬、国がグレシウスから輸入するそうですわ」
「国が?」
「ええ。王妃様の母国でも随分前から使われているものなんですって。安全性に問題はないからと」
「ちゃんとしたものだったのですね。だったらサロンで配らなければよかったのに」
「ええ、そう思いますわ。麻薬が問題になっている時期に重なって怪しい薬と噂されてしましたから」
やっぱりリシェル様の考えることはわからないわ。王女としてお生まれになったのなら世間の評判は一番に気にするところでしょうに。
「もう少し慎重に行動されていらっしゃったら、王太后様の葬儀にも出られたでしょうに」
「そうですわね」
王太后様は数日前に儚くなられたと発表があった。ご高齢で随分長い間公の場には出て来られなかったし、ご本人のご意向もあって国葬はしないという。リシェル様のことはご存じだったのかしら? 具合が悪かったのなら最期まで伏せられたかもしれないわね。王太后様が孫である王女殿下を可愛がっていたのは有名な話。なのにお別れも出来なかったなんて……
「それにしてもエルマ様は情報が早いですわね。やはりベルトラム侯爵様の?」
「ええ、父の情報屋のお陰です。これもバルドリック様のものになってしまいますけどね」
寂しそうにエルマ様が笑った。女では当主になれないし、せっかく手にしたものも結婚したら手放さなければならないなんて理不尽だわ。
「今は私独自の情報網を作っている最中ですわ。社交界でも伝手は多い方が何かと便利ですし」
「そうですのね。私も始めてみましたけれど、情報を集めるのは難しいですわ……」
元々姉のせいで社交界ではよく思われていなかったから知り合いも少ないし、信頼出来ない人を使う気になれない。どうしたら信用出来る人を集められるのかしら。
「エルマ様はどうやって人を選んでいますの? 私は中々信用出来る人が見つけられなくて……」
「まぁイルーゼ様、情報を集める相手は信用出来なくてもいいのですわ」
「そういうものですの?」
意外なことを聞いたわよ。信頼出来なくてもいいってどういうこと?
「ええ。信用出来なくても裏切らない相手であれば十分です。例えばお金で動く者はお金が得られるうちは仕事をしてくれます。そういう相手には裏切れば損をすると思わせればいいのですわ」
「裏切れば損を……」
それはそれで難しくない? どうすればそんな風に思わせられるのかしら。
「情報は多ければ多いほどいいのです。そうすれば虚言はある程度見えてきますわ。イルーゼ様だって噂を鵜呑みにはしないでしょう?」
「ええ」
「それと同じですわ。情報は今後に備えるため、集めた情報を整理すればその先が予想出来るものですわ。信用出来る者を使うのはその情報に間違いがないか裏を取る時です。情報自体は誰から得ても構いませんのよ」
なるほど、随分ドライな関係なのね。信用出来ない人の情報は意味がないと思っていたけれど確かに裏まで取っていたら手が回らないわね。
エルマ様が帰った後、ヴォルフ様にクラウス様のことを尋ねたら既にご存じだったわ。
「王家に報告があったのは三日前だ」
「三日前ですか。行方は……」
「見つかったという知らせはまだない。心配するな、お前の警備は強化してある。姉の方もだ」
「……ありがとうございます」
さすがというべきか行動が早いわ。情報を得られるから次の手を打てるのよね。相手に後れをとれば襲われる未来があったかもしれないと。仮に嘘だったとしても警戒することは出来るし、こんな場合は一々裏を取る必要はないわね。
「どうされましたの? エルマ様がそこまで慌てるなんてお珍しい」
「ええ、既に侯爵様はご存じだとは思いますが、念のためにと思いまして。イルーゼ様、クラウス様が姿を消したそうですわ」
「クラウス様って……確かアルトナーの領に送られたのでは……」
「ええ。ですが数日前に姿を消したそうですわ」
「数日前に?」
クラウス様が領地に向かったのはランベルツ侯爵家の夜会の前で、かれこれ一月は経っているわ。そりゃあ、そのまま領地にいてもその先にあるのは死だから逃げ出したくなるでしょうけど……
「イルーゼ様、気を付けてくださいね。ただ死を恐れて逃げ出したのならいいのですが、腹に一物抱えている可能性もありますわ」
「つまり私を害しようと?」
「それは何とも。クラウス様が復讐をと考える相手は他にもいます。リシェル様が王領に幽閉になったのでそちらを救い出そうとされるかもしれません。彼の意識がイルーゼ様に向かう可能性は小さいと思いますが……」
エルマ様の言う通りで確かにクラウス様の関心が私に向く可能性は少ないと思うわ。行くとしたら姉のところじゃないかしら? その姉もクラウス様にとっては何人もいる相手の一人にすぎないけれど。彼が逮捕されたのは騎士団が押収した麻薬を横領していたことが発覚したからで、告発したのは騎士団よね。リシェル様が幽閉になったのだって私が何かをしたわけじゃない。私が狙われる理由は小さいと思うのだけど……
「……ヴォルフ様、ですか?」
エルマ様が疲れた顔で頷いたけれどため息しか出ないわ。
「クラウス様は昔から侯爵様に対抗意識をお持ちでしたわ。侯爵様はお強いので簡単に手が出せませんでしょう? そうなれば……」
そんな理由でと思うけれどエルマ様の言う通りなのよね。だったら正面からヴォルフ様に向かえばいいのに。そうは思うけれどヴォルフ様はクラウス様なんて素手で倒してしまわれそうよ。ロジーナ様は王宮だから手を出すのは簡単じゃないし。そうね、この場合私も狙うなら私にするわ。
「ふふ、私を狙ったところでヴォルフ様は何とも思われませんのにね」
「イルーゼ様ったら……侯爵様に大事にされているではありませんか」
「それは、まぁ……」
それは横槍が入らないようそう見せているだけで私たちの間に愛があるわけじゃないわ。ランベルツの夜会でダンスを続けて踊ったのもあの場に現れたリシェル様への牽制だったもの。
「リシェル様は……何がしたかったのかしら?」
「イルーゼ様?」
「だって、ヴォルフ様の妻になりたいなら陛下にお願いするのが一番でしょう? 国のために十年を異国で費やしたのならその見返りにと願い出ればよかったのに」
「確かにそうですわね。侯爵様も陛下のご命令だったら無下にはなさらないでしょうし」
陛下にとっては唯一残った王女。しかも国のために嫁いで務めを果たしたのなら、その後は多少の希望を叶えて下さったのではないかしら。ヴォルフ様の相手は私である必要はないのだから陛下を説得すれば済んだ話よ。
「ヴォルフ様に気があるように思ったけれど熱がないというか……振り返ってみると好意があったようには見えなくて」
「ではゾルガー侯爵夫人の座を?」
「その方がまだしっくりきますわ。ヴォルフ様にだって利があると示せば可能性はあったと思いますわ」
私のようにね。それに王女という立場は十分に利があると思うわ。子どもは出来ないかもしれないけれどフレディ様がいるし何とでもなるわ。王家との繋がりを強化すればゾルガー家の立場は一層強くなる。
「確かにそうですわね。だったらクラウス様とのお付き合いも控えるべきでしたわ。お薬の件も……そうそう、あのリシェル様がサロンで配っていたお薬、国がグレシウスから輸入するそうですわ」
「国が?」
「ええ。王妃様の母国でも随分前から使われているものなんですって。安全性に問題はないからと」
「ちゃんとしたものだったのですね。だったらサロンで配らなければよかったのに」
「ええ、そう思いますわ。麻薬が問題になっている時期に重なって怪しい薬と噂されてしましたから」
やっぱりリシェル様の考えることはわからないわ。王女としてお生まれになったのなら世間の評判は一番に気にするところでしょうに。
「もう少し慎重に行動されていらっしゃったら、王太后様の葬儀にも出られたでしょうに」
「そうですわね」
王太后様は数日前に儚くなられたと発表があった。ご高齢で随分長い間公の場には出て来られなかったし、ご本人のご意向もあって国葬はしないという。リシェル様のことはご存じだったのかしら? 具合が悪かったのなら最期まで伏せられたかもしれないわね。王太后様が孫である王女殿下を可愛がっていたのは有名な話。なのにお別れも出来なかったなんて……
「それにしてもエルマ様は情報が早いですわね。やはりベルトラム侯爵様の?」
「ええ、父の情報屋のお陰です。これもバルドリック様のものになってしまいますけどね」
寂しそうにエルマ様が笑った。女では当主になれないし、せっかく手にしたものも結婚したら手放さなければならないなんて理不尽だわ。
「今は私独自の情報網を作っている最中ですわ。社交界でも伝手は多い方が何かと便利ですし」
「そうですのね。私も始めてみましたけれど、情報を集めるのは難しいですわ……」
元々姉のせいで社交界ではよく思われていなかったから知り合いも少ないし、信頼出来ない人を使う気になれない。どうしたら信用出来る人を集められるのかしら。
「エルマ様はどうやって人を選んでいますの? 私は中々信用出来る人が見つけられなくて……」
「まぁイルーゼ様、情報を集める相手は信用出来なくてもいいのですわ」
「そういうものですの?」
意外なことを聞いたわよ。信頼出来なくてもいいってどういうこと?
「ええ。信用出来なくても裏切らない相手であれば十分です。例えばお金で動く者はお金が得られるうちは仕事をしてくれます。そういう相手には裏切れば損をすると思わせればいいのですわ」
「裏切れば損を……」
それはそれで難しくない? どうすればそんな風に思わせられるのかしら。
「情報は多ければ多いほどいいのです。そうすれば虚言はある程度見えてきますわ。イルーゼ様だって噂を鵜呑みにはしないでしょう?」
「ええ」
「それと同じですわ。情報は今後に備えるため、集めた情報を整理すればその先が予想出来るものですわ。信用出来る者を使うのはその情報に間違いがないか裏を取る時です。情報自体は誰から得ても構いませんのよ」
なるほど、随分ドライな関係なのね。信用出来ない人の情報は意味がないと思っていたけれど確かに裏まで取っていたら手が回らないわね。
エルマ様が帰った後、ヴォルフ様にクラウス様のことを尋ねたら既にご存じだったわ。
「王家に報告があったのは三日前だ」
「三日前ですか。行方は……」
「見つかったという知らせはまだない。心配するな、お前の警備は強化してある。姉の方もだ」
「……ありがとうございます」
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