聖騎士墜落

煮卵

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終幕

逃亡

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アンゼルが朝目覚めると、部屋の中に人気がなかった。
「レナート?」
アンゼルは不安になりながら、レナートを探し始める。
クローゼットの裏にも、ベッドの影にもいない。
仕方なく着替えをクローゼットから引っ張り出し、自分で着る。
「疲れて別の部屋に寝てしまったのかな・・・」
自分で着替えられないわけではないが、毎朝レナートが優しく
自分の指を動かす必要がないほど丁寧に着替えさせてくるので調子が狂う。
部屋を出て、屋敷の中を探すと、地下に鎖で繋がれているレナートがいた。
「アンゼル様……」
「何があった? これは一体どういうことだ!」
アンゼルは怒りをあらわにして言う。
「どういうことか、教えて欲しいのはこちらの方だ。捕虜であるお前が見張りも鎖もつけずに
ふらついているのはどういうことなのかをな」
するとそこに一人の男が現れる。その男はアンゼルの兄アベル・フォン・ルブランだった。妻帯と共に聖騎士団を引退し、
今は地方の領主をしているはずだった。
「兄上……どうしてここに」
「お前を迎えに来たんだ。さぁ帰ろう」
そう言って、手を差し出す。
「嫌です! 私は帰りません!」
アンゼルは断固として拒否した。
しかし、それは許されないことだった。
「そうか……。では仕方がない。力ずくでも連れて行くぞ」
アベルは剣を抜き、アンゼルに斬りかかる。
「くっ!」
アンゼルは何とかそれをかわすが、すぐに次の攻撃が来る。
(強い)
アンゼルは必死になって避け続ける。壁にかかっていた装飾用の剣を取ると、
振り回す。
だが、簡単に避けられてしまう。
「弱いな」
アベルはその一言だけ言い放つと、再び攻撃を仕掛ける。
アンゼルはギリギリでそれを避ける。
アベルの一撃で棚が崩れ、天井から鎖や皿が落ちてくる。
「しまった!」
落下物がアベルの進行を防いでいる間にアンゼルはレナートのもとに戻り
拘束を解く。
「大丈夫か?」
「はい。なんとか……」
「とりあえずここから出るぞ」
アンゼルたちは出口に向かって走る。
馬に乗り、館の塀を越えて飛び出す。館を出てしばらく走り続け森に入る。

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