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回想
回想4
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アンゼルが明け方目を覚ました時、レナートはまだ眠っていた。
窓の外は薄暗くまだ夜明け前だ。
裸のまま寝ていたようで少し肌寒い。
昨夜の出来事を思い出して顔が赤くなるのを感じた。
(あんなことまでして……)
アンゼルにとって初めてだったのだ。もちろん女性とも男性とも経験などない。
しかしレナートはおそらく違うのだろう…
(既に秘跡魔法が使えないということは誰かと関係を持ったということか…?)
アンゼルの心の奥底がチクリと痛んだ。
「ん……」レナートが小さく身じろぎした。
されたことを考えれば今すぐこの腕を振り払って逃げるべきなんだろうが、
何故かそうできなかった。
そっとレナートの顔を覗き見る。
普段は気難しそうな表情を浮かべている整った眉間からは力が抜け、穏やかな表情をしている。薄目を開けて眠る癖は昔から変わらない。
(可愛い…)
自分よりも頭ひとつ大きくなっても、肩幅が大きくなってもあの雪の日に抱いていた子供の頃の面影が残っているような気がした。
じっと見つめていたが、その瞼が再び開くことはなく規則正しい呼吸音だけが聞こえてくる。
レナートを孤児院に入れずに引き留めておくことを誰よりも咎めたのはアンゼルの母親だった
「彼は犬猫ではないのです。自由意志を持った人間なのですよ。その時が来たら彼の手を放してやらなければなりません」そう言ってアンゼルに言い聞かせた。母親の言うことが全て正しいとは思わないが、この件に関してはその通りだと思う。レナート…いや、セバスチャンと呼ぶべきか、彼の母親はそう名付けたのだから…彼自身の生き方は彼自身が決めるべきだ。このまま自分の手元に置いていこうと思えばそれもできるだろう。だがそれはレナートの幸せに繋がるとは思えなかった。アンゼルはそっとベッドから抜け出すと服を着た。
屋敷自体は小さなもののようだったがもう幾つか部屋があるようだった。
自分がレナートのために用意したのもこれくらいの家だった。
(誰かと住んでいるのかもな)
窓の外は薄暗くまだ夜明け前だ。
裸のまま寝ていたようで少し肌寒い。
昨夜の出来事を思い出して顔が赤くなるのを感じた。
(あんなことまでして……)
アンゼルにとって初めてだったのだ。もちろん女性とも男性とも経験などない。
しかしレナートはおそらく違うのだろう…
(既に秘跡魔法が使えないということは誰かと関係を持ったということか…?)
アンゼルの心の奥底がチクリと痛んだ。
「ん……」レナートが小さく身じろぎした。
されたことを考えれば今すぐこの腕を振り払って逃げるべきなんだろうが、
何故かそうできなかった。
そっとレナートの顔を覗き見る。
普段は気難しそうな表情を浮かべている整った眉間からは力が抜け、穏やかな表情をしている。薄目を開けて眠る癖は昔から変わらない。
(可愛い…)
自分よりも頭ひとつ大きくなっても、肩幅が大きくなってもあの雪の日に抱いていた子供の頃の面影が残っているような気がした。
じっと見つめていたが、その瞼が再び開くことはなく規則正しい呼吸音だけが聞こえてくる。
レナートを孤児院に入れずに引き留めておくことを誰よりも咎めたのはアンゼルの母親だった
「彼は犬猫ではないのです。自由意志を持った人間なのですよ。その時が来たら彼の手を放してやらなければなりません」そう言ってアンゼルに言い聞かせた。母親の言うことが全て正しいとは思わないが、この件に関してはその通りだと思う。レナート…いや、セバスチャンと呼ぶべきか、彼の母親はそう名付けたのだから…彼自身の生き方は彼自身が決めるべきだ。このまま自分の手元に置いていこうと思えばそれもできるだろう。だがそれはレナートの幸せに繋がるとは思えなかった。アンゼルはそっとベッドから抜け出すと服を着た。
屋敷自体は小さなもののようだったがもう幾つか部屋があるようだった。
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(誰かと住んでいるのかもな)
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