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回想
回想2
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孤児を保護した場合、王国にはアンゼルの母親が立てた孤児院がいくつもあり、そこで引き取ってくれる先を探すのが普通だ。
だが、レナートはアンゼルの屋敷にずっといた。
レナートがアンゼルと引き離されることを嫌がったこともあるが、それ以上に大きかったのはアンゼルがレナートを手放すことを拒否したことだ。
生まれてからこの方両親に歯向かうどころか家名に恥じない高貴な振る舞いしかしてこなかったアンゼルの初めての反発に、彼の両親は少しの間戸惑った。だが、アンゼルはこのまま聖職者として生涯を終えれば家族を持つことはおろか誰かと愛し合うことも許されない。せめて心許せる従者をつけてやりたいという親心か、レナートが10歳にならぬうちにアンゼルの身の回りの世話を命じられた。
一度死んだ自分はこのままこの人に影の様に寄り添って生きていけるのだとレナートは信じて疑わなかった。
20歳になったある日、屋敷を訪ねた一人の夫人と面会させられた。全く覚えていなかったが、8歳の時に自分を捨てた母親だという。自分の母親につけられた名前はセバスティアンだったらしいと言うこと以外は得られるものもない面会だった。愛情や憎しみを抱く様な強い思い入れもなかったが、アンゼルからも自分からも金をせびる様なそぶりはなかったことだけは安心できた。
その日の夜、アンゼルの湯浴みをいつも通り手伝っていた。
暖かい湯に身を浸し寛いでいる姿はどこか気怠げで色香を放っているように見える。まだ水滴が残る肌や艶のある髪、濡れた唇から目が離せない。
「どうした?」
熱を帯びた視線に気付いたのかアンゼルが問いかけてくる。
「いえ……湯の加減はいかがですか?」
「とてもいいよ。ありがとう」
ふっと微笑む表情を見て心臓が跳ね上がるがタオルを手に後ろに回り顔を隠す。
「ではお身体をお拭きしますね」
腕の中に収まる背中も胸元も全てが美しいと思う。
抱き寄せて思いを遂げてしまいたい衝動に駆られながら身体を丁寧に拭いて清めていく。不意にアンゼルに声をかけられる。
「もう、今日限りで俺の身の回りの世話はする必要ない」
だが、レナートはアンゼルの屋敷にずっといた。
レナートがアンゼルと引き離されることを嫌がったこともあるが、それ以上に大きかったのはアンゼルがレナートを手放すことを拒否したことだ。
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抱き寄せて思いを遂げてしまいたい衝動に駆られながら身体を丁寧に拭いて清めていく。不意にアンゼルに声をかけられる。
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