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鶯を炙る(翠嵐回想)
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紅葉狩りが終わると、日が暮れそうになっていたので、翠嵐は慌てて飯室の僧正の庵で飼っている鶯の元へ駆けつけた。
鶯は商人から買った際よりわずかに大きくなっていた。
羽の色は見栄えのしない砂のような色のままで少し翠嵐をガッカリさせたが、ケキョケキョと高く美しい声で時折鳴いた。
前面を引き上げることのできる桐でできた箱の中にさらにカゴが入っており、その中に詰め込まれている。引き上げた前面のそばにある行燈に火を入れると餌を求めてか「ピピ」と鳴いた。
鶯の鳴くのは暖かくなった繁殖期であるため、冬のまだ寒い頃を春だと錯覚させる必要がある。
紅葉狩りの頃から箱の前面を開け、燈火に当ててやる必要があった。
火の灯った蝋燭を箱の前に持っていくと、狭い籠の中で鶯は首を傾げてじっと火を見つめる。何をされているかわからないといった鶯の様子を翠嵐も無心で見つめていた。
「翠嵐」
飯室の僧正の声にはっとなる。
「鶯を私にも見せておくれ」
手を引き、籠の前に僧正を導くと、
ケッキョ、ケッキョ、と鶯が声を上げる。
「時折可愛い声で鳴くようになったね」
抱き寄せられ、膝の上に乗せて髪を優しく撫でられる。
「初春の頃が楽しみだ」
心地の良さに笑顔を浮かべて翠嵐は頷いた。
初春の頃寺の中では鶯の声を競わせる「鳴き合わせ」が行われる予定だった。この鶯を出して評価が高ければ僧正も喜んでくれるだろう。
鶯は商人から買った際よりわずかに大きくなっていた。
羽の色は見栄えのしない砂のような色のままで少し翠嵐をガッカリさせたが、ケキョケキョと高く美しい声で時折鳴いた。
前面を引き上げることのできる桐でできた箱の中にさらにカゴが入っており、その中に詰め込まれている。引き上げた前面のそばにある行燈に火を入れると餌を求めてか「ピピ」と鳴いた。
鶯の鳴くのは暖かくなった繁殖期であるため、冬のまだ寒い頃を春だと錯覚させる必要がある。
紅葉狩りの頃から箱の前面を開け、燈火に当ててやる必要があった。
火の灯った蝋燭を箱の前に持っていくと、狭い籠の中で鶯は首を傾げてじっと火を見つめる。何をされているかわからないといった鶯の様子を翠嵐も無心で見つめていた。
「翠嵐」
飯室の僧正の声にはっとなる。
「鶯を私にも見せておくれ」
手を引き、籠の前に僧正を導くと、
ケッキョ、ケッキョ、と鶯が声を上げる。
「時折可愛い声で鳴くようになったね」
抱き寄せられ、膝の上に乗せて髪を優しく撫でられる。
「初春の頃が楽しみだ」
心地の良さに笑顔を浮かべて翠嵐は頷いた。
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