転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない！

転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい！ 第一話

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広間に漂うのは荘厳な静けさと緊張感。石造りの高い天井と、床の冷たい大理石が、宮殿内に漂う厳粛さを一層際立たせていた。俺、リュシアン・ルルワは深く息をつき、視線を正面に据えた。玉座の上に座る国王の姿が、まっすぐ映り込む。
俺の右左前にひざまづく男に国王は厳粛に告げた。

「アーベルよそなたに王国の未来を委ねたい。」

国王の言葉は威厳に満ち、まるで国全体の重みがその一言に込められているかのようだった。アーベルの肩が少し震えたような気がした。冷静を装いながらも、その内側では激しい葛藤が渦巻いているのだろう。

「全てを統べるものの迷宮、その最深部まで足を踏み入れ、その封印を確認するのだ。そなたがこの任務に挑むほかない。」

国王の声は冷たく鋭く、迷いの余地を与えない。アーベルは瞬間、拳を固く握りしめた。彼にとってこの命令は、単なる命令以上の意味を持っていた。それは、家族からの見捨てられた彼に与えられた最後のチャンス。王家からの信頼を取り戻すための、そして自分自身を証明するための試練だった。

「は……仰せの通りに、陛下。」アーベルは静かに頭を垂れる。
婚約破棄をしてから向こう、アーベルは表立って断罪されることはなかったが、王宮で割り当てられる部屋も謁見の間からは遠くなり、
仕事も減らされ、次第に遠ざけられつつあった。ある日突然与えられた命令は、彼にとってまたとないチャンスであると同時に、最後の希望でもあったのだ。
「リュシアン・ルルワ。宮廷内の若き有能な魔術師と聞いておる。どうか、この若い王子を助けてやってほしい。」
国王に名を呼ばれ、リュシアンは深く頭を下げる。

「承知いたしました。陛下のお心に沿うよう尽力いたします。」