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転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!第四話
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(見つかった・・・のか?)
枢機卿はすっと視線を逸らした。
「いつも一緒にいる魔術師、リュシアン・ルルワは?連れてこなかったのですか?」
「ええ」
俺は背中に嫌な汗をかいた。ここでバレれば、俺たちはアーベルをここに置き去りにして逃げ出すしかなくなる。
緊張している俺を再度ちらっと見たが、それ以上枢機卿は突っ込んで聞いて来なかった。
一階の簡易的なソファとテーブルに二人で腰掛ける
「勘違いしないでいただきたいのですが…
私は何もあなたを断罪しようと思ってここを訪ねてきたわけではないのですよ」
「寛大なご処置に感謝します」
枢機卿が微笑む
「これからどうされるおつもりでしょうか?」
「幸い、マリーテレーズ嬢も今回の婚約破棄に賛成してくれています。今回のこの話は無かったことに」
「なるほど、二人の同意があれば、構わないだろうと」
「尽力いただいた猊下には本当に申し訳ないことをしたと思っています」
「この婚姻によってもたらされるのは、なんだと思いますか?」
「え?」
「あなたを前にして言うのも変な話ですが今回のマリーテレーズ様とのご成婚はあなたの幸せを考えてのものではありません。国内にいる新教徒と旧教徒の融和を目的にしたものでした」
「新教と旧教の融和?」
「ええ、新教徒たちの反発は日増しに増えています。根拠のない怒りですが、旧教徒よりも虐げられている。そんなふうに思う輩も増えているようです。そんな中、領地や部下に新教徒が多いマリーテレーズ様と婚姻すれば彼らの不満も解消するでしょう。ですが、今回のご成婚がならなければどうなります?あなたはこの国の民を感情で危険に陥れているのですよ?」
「……」
(アーベルの良心に訴える作戦か)
「僕が犠牲になる必要があるのでしょうか?新教徒と旧教徒の和解の道は他にもあるはずです」
「……貴方のその裕福で何一つ不自由ない生活を支えているのはこの国の民です。自分が犠牲になるのは当然だと思われませんか?」
(あの野郎、何言ってんだ)
体を乗り出そうとして、ゼムクに制止された
「こらえてください。表の兵隊たちを見ましたが皆聖印と武器を持っています。熟練の騎士というわけではなさそうですが、数があれだけいるとなると私とあなたでも敵うかどうか」
館の前の道を通ればマリーテレーズの領土に続く。だが、それだけにかなり堅牢に守りを固めてあるだろう。
俺が躊躇している間に枢機卿が畳み掛ける
「貴方はその境遇の義務として、すべての国民の模範にならなければならない。くだらない恋愛ごっこに興じるのはやめて、自分のお立場を思い出してください」
しんと、静まり返る。長い沈黙ののちにアーベルが口を開いた
「僕を育ててくれたこの国にはとても感謝しています。今僕が愛する人を持って穏やかな生活を送りたいという平和な願望を持つことができるのも、この国の国民が僕の生活を支えてくれていたからだということも理解しているつもりです」
ですが、と続ける
「いえ、だからこそ、僕は自由で幸福であるべきです。今ここで国のために犠牲になってしまったら、国の為に民に犠牲を強いることが当然だと思われてしまう」
枢機卿が眉を上げる。
「僕は国民の模範なんですから。そう思いませんか?」
不気味な笑みを貼り付けていた枢機卿の表情がスッとなくなった。
「……貴方のお相手はリュシアン・ルルワはこの館内にいますね?」
「!」
(やべ、バレてら)
「昨夜この場所を偵察に行ったものがバルコニーに魔法陣を仕掛ける彼を見ています」
「この館の中に二人、います。その二人をハイデルベルグに安全に送り届けてもいいでしょうか?それが終わったら、僕はこのまま王宮に帰ります」
万事休すーーそう思った瞬間だった。
「お待ちください猊下!」
そう言って入ってきたのは、
マリーテレーズだった。
ーーーー
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枢機卿はすっと視線を逸らした。
「いつも一緒にいる魔術師、リュシアン・ルルワは?連れてこなかったのですか?」
「ええ」
俺は背中に嫌な汗をかいた。ここでバレれば、俺たちはアーベルをここに置き去りにして逃げ出すしかなくなる。
緊張している俺を再度ちらっと見たが、それ以上枢機卿は突っ込んで聞いて来なかった。
一階の簡易的なソファとテーブルに二人で腰掛ける
「勘違いしないでいただきたいのですが…
私は何もあなたを断罪しようと思ってここを訪ねてきたわけではないのですよ」
「寛大なご処置に感謝します」
枢機卿が微笑む
「これからどうされるおつもりでしょうか?」
「幸い、マリーテレーズ嬢も今回の婚約破棄に賛成してくれています。今回のこの話は無かったことに」
「なるほど、二人の同意があれば、構わないだろうと」
「尽力いただいた猊下には本当に申し訳ないことをしたと思っています」
「この婚姻によってもたらされるのは、なんだと思いますか?」
「え?」
「あなたを前にして言うのも変な話ですが今回のマリーテレーズ様とのご成婚はあなたの幸せを考えてのものではありません。国内にいる新教徒と旧教徒の融和を目的にしたものでした」
「新教と旧教の融和?」
「ええ、新教徒たちの反発は日増しに増えています。根拠のない怒りですが、旧教徒よりも虐げられている。そんなふうに思う輩も増えているようです。そんな中、領地や部下に新教徒が多いマリーテレーズ様と婚姻すれば彼らの不満も解消するでしょう。ですが、今回のご成婚がならなければどうなります?あなたはこの国の民を感情で危険に陥れているのですよ?」
「……」
(アーベルの良心に訴える作戦か)
「僕が犠牲になる必要があるのでしょうか?新教徒と旧教徒の和解の道は他にもあるはずです」
「……貴方のその裕福で何一つ不自由ない生活を支えているのはこの国の民です。自分が犠牲になるのは当然だと思われませんか?」
(あの野郎、何言ってんだ)
体を乗り出そうとして、ゼムクに制止された
「こらえてください。表の兵隊たちを見ましたが皆聖印と武器を持っています。熟練の騎士というわけではなさそうですが、数があれだけいるとなると私とあなたでも敵うかどうか」
館の前の道を通ればマリーテレーズの領土に続く。だが、それだけにかなり堅牢に守りを固めてあるだろう。
俺が躊躇している間に枢機卿が畳み掛ける
「貴方はその境遇の義務として、すべての国民の模範にならなければならない。くだらない恋愛ごっこに興じるのはやめて、自分のお立場を思い出してください」
しんと、静まり返る。長い沈黙ののちにアーベルが口を開いた
「僕を育ててくれたこの国にはとても感謝しています。今僕が愛する人を持って穏やかな生活を送りたいという平和な願望を持つことができるのも、この国の国民が僕の生活を支えてくれていたからだということも理解しているつもりです」
ですが、と続ける
「いえ、だからこそ、僕は自由で幸福であるべきです。今ここで国のために犠牲になってしまったら、国の為に民に犠牲を強いることが当然だと思われてしまう」
枢機卿が眉を上げる。
「僕は国民の模範なんですから。そう思いませんか?」
不気味な笑みを貼り付けていた枢機卿の表情がスッとなくなった。
「……貴方のお相手はリュシアン・ルルワはこの館内にいますね?」
「!」
(やべ、バレてら)
「昨夜この場所を偵察に行ったものがバルコニーに魔法陣を仕掛ける彼を見ています」
「この館の中に二人、います。その二人をハイデルベルグに安全に送り届けてもいいでしょうか?それが終わったら、僕はこのまま王宮に帰ります」
万事休すーーそう思った瞬間だった。
「お待ちください猊下!」
そう言って入ってきたのは、
マリーテレーズだった。
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