転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!

煮卵

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転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!第二話

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「・・・・ここは・・・」
辺りを見回すと貴族の屋敷の一室のようだった。豪華な装飾が施された室内は薄暗く、ベットを覆うジャガード織りらしき分厚い天蓋のせいでベッドの上は更に暗かった。静かに起き上がる。
「拉致されたのか・・・?」
なぜあの場で殺さなかったのか、疑問が湧くが考えている暇はなさそうだ。
「ここから出る手立てを考えねえと・・・」窓の外を見ると右斜め前に王宮の先頭がみえた
(!?王宮内か?)
王宮内に拉致されたのだとしたら考えられる相手は三つ。
一つは王、つまり、婚約破棄の原因は何が考えられるか最も身近な俺に聞きたいという尋問の可能性、二つ目は王子、返事を聞きたいので拉致った、まあこれは考えにくい。そして、最後の可能性・・・これが最も高いが
「お目覚めになられましたか」
奥の部屋から一人の男が出て来てその後ろから水色のドレスを纏った背の高い金髪の女性が現れた。
(やっぱりか…)
マリーテレーズ・クリスティーナ・マグダレーナ・ハイデルバーグ・フォン・ロートリンゲン・エスターライヒャー。帝国から婚約の顔合わせにやってきた、王子の婚約者だ。
慌ててベッドから飛び降り跪く。
「ご無礼を失礼致します」
転生した俺の身分は爵位もない名ばかりの役人貴族だ。この世界の名前の構成は名前、聖別名、持っているすべての領地(及び爵位)、最後に父母の出身家名となっている。マグダレーナはマグダレンという帝国一の豊かな穀倉地帯、ハイデルバーグは帝国騎士団の本拠地でありその領主であるということは騎士団の統率権を所持すことを意味する。爵位や領地のない役人貴族の俺との身分差は明白。本来は顔を合わせて話すことができないような相手である。
跪く俺に執事らしき男が続ける
「構いません。お嬢様は信仰では、天のもとに人は皆平等。身分差による儀礼は必要ございません。」
(ああ、そういや新教徒だったな)
ユニベルシダ教には新教と旧教がある。この国を支配しているのは旧教だが、隣の帝国は新教だ。モデルは宗教改革によって生まれたプロテスタントだが、このゲームの新教はさらに戒律が緩く、同性婚もOKとした。ぶっ飛んだ設定にしたのには訳がある。薔薇庭は全キャラを攻略した後に特別ルートでマリーテレーズを攻略するルートがあるからだ。当時は女性同士のルートがあると言うことで結構話題になった。
「お嬢様が今日お話ししたいのは、昨日起こった驚くべき出来事です」
(やべえ)
心臓が跳ね上がった。おそらく昨日の婚約破棄の理由を王子のそばにいる俺に聞きにきた・・・とすれば拉致する理由はない。その場で使いのものに聞けばいいだけだ。背中につっと冷や汗が流れた。
「昨夜のバラ園で起こったことも、お嬢様はご存じです」
(終わった)
間者がいたのか。あの場に。そうなるともうここで首を刎ねて遺体を鳥にでも撒くためにここに呼んだとしか考えられん。永遠にも感じられる沈黙ののち・・・王女が口を開いた

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