転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない！

転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない！第二話

1

どうやって帰ったのか覚えていないが俺はそのままベッドに倒れ込み、寝入ってしまった。

「なあ・・・これ・・・何が起こってるんだ？」
女神（男）はため息をついた。
「あんた、マジで気が付かなかったの？」
「気がつくわけねえだろ」

「婚約は破棄されたから、あんたの死亡フラグはまだ立ったままよ」
「え！？」

「当たり前でしょう？隠しておいたって王子の想い他人の名前が知れるのは時間の問題」
「ちょっと待て、懸想しているのが男だってバレたらアーベルは・・・」
昔のキリスト教圏ほど厳格な設定ではないが、この国のほとんどの人間が信仰しており、
国王の権力の後ろ盾もしている教会は同性愛を禁じている。

「ああ、アーベルは大丈夫よ。権力にガッチリ守られて生き延びることになるわ」
「ああ・・・よか・・・」
「あんたはアーベルの目の前で捉えられて牛裂きになるけど」
「だ、よ、なあああああああ」

「あんたは二つの勢力に追われることになるわ。一つはこの婚約をどうにか成立させたい枢機卿の勢力、
もう一つは婚約者になるはずだったマリーテレーズからの刺客よ」
「まあ、順当だな」
「で、ね、今あんたの寝ているそばに、刺客が来てるんだけど」
俺は慌てて目をあけた。
現実世界で飛び起きると、俺の寝ていた枕に深々と刀が突き刺さった。

「！」

呆然としているリュシアンがハッと気がつき、殺気に身を伏せる。
伏せた頭のわずか先を、切先が掠めた。
慌てて顔を上げれば。

リュシアンの目の前には、ローブ姿の男が立っていた。
黒い髪がなびき、片刄の剣がぎらりとひかる。

「くそ！炎よ！」

リュシアンは、慌てて魔法陣から炎を呼び出す。
だが呼び出すよりも一瞬早く、男が刀を振り下ろし、その刃は魔法陣ごと炎を真っ二つに切り裂いた。

「なっ！」

驚きに目を見開いたリュシアンは、身を翻す。

背後を取るように距離をあけるが、そんなリュシアンなどおかまいなしに密偵は刀を振るう。
またも魔法陣と炎ごと切り捨てられる。

リュシアンは舌打ちすると、さらに距離をとった。
魔法陣そのものを斬ることは、封魔の力のある剣なら論理上は可能だが・・・

「早すぎんだろ」
魔法陣が空中に現れるのはわずかに数秒その間をついて切りつけてくるなんてとんでもない早さだった。
そうこうしているうちに、侍の刀がリュシアンに迫る。

「くっ！」

辛うじて避けると、リュシアンは魔法陣を背に庇うように立った。
もう一枚取り出した魔法陣で防御壁を張る。
侍がそれを斬れば、バリンと音を立てて防御壁が消える。だがそれと同時に、
横から突風が吹き、男は吹き飛ばされた。

「？？？？」
黒魔術や精霊魔法の中にはある条件下で発動させる罠のような
魔法があるが、部屋の中にそれを仕掛けた記憶はない。

どうなっているのか確認するために仕掛け元のあたりに近づこうとした瞬間、背後に人の気配を感じた
（しまった！もう一人いたのか！？）

『花の影の眠り』
（精霊魔法！？）
後ろから眠りの魔法をかけられる。一瞬で気を失った

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