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転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!第一話
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「あ……ごめん」
アーベルが少し顔を赤くして、目を逸らした。
高い鼻梁に切れ長の目、キリッとした眉。
出会った頃は背も低く、どこか仔犬を思わせる可愛らしい風体だったのに——
(イケメンになったよなあ)
「……綺麗だね」
「ん? ああ……まあ、そうだな」
背はいつの間にか追い抜かれ、騎士として剣の訓練を受けているせいか、体もがっしりとして逞しい。
こんな美青年が相手では、政略結婚とはいえマリーテレーズ王女もすぐに恋に落ちるだろう。
そう考えると、胸の奥がなぜかチリチリと痛んだ。
13本の薔薇の花束が出来上がるその瞬間——
部屋の中に大きな鐘の音が鳴り響いた。
時計塔の裏側の部屋なので、定期的に大きな時計台の時刻を告げる鐘が大音量で鳴り響く。
脳を揺らすような音に耳を塞いで、俺は少し笑った。
「本当に相変わらずひでえ音だな。早く引っ越さないと耳がおかしくなっちまう」
「え……リュシアン、引っ越すのかい?」
「ああ。お前と王女の結婚を見届けたら、エズの方に引っ越そうかと思ってるんだよ」
エズというのは、セーヌ川を挟んで北にある都市。海に近い小さな街だ。
不意に、グッと腕を掴まれた。
「どうして!? このまま僕のそばにいてくれてもいいじゃないか」
「どうして……って」
思ったよりもずっと激しい剣幕に、俺は驚いた。
「結婚するお前の……邪魔をするといけないから……」
すっと、腕を掴んでいた手が離れた。
顔を上げた時には、いつもの顔に戻っていて、
「また来るよ」
と小さく手を振ると、階下へと降りて行った。
アーベルが去ってからも、暗くなった部屋の中でぼうっと眺めていた。
花火が終わって帰っていく人々が、そのまま酒宴を始めているのか、街の賑わいが一層高まったようだ。
空には星が戻り、口々に祝う楽しそうな人々の声が、夜空を彩りながらゆっくりと溶けていく。
「寂しくなるな……」
こんな気持ちになるのは、なぜなのだろう。
王子の言う通りだ。このまま俺は王子の側にいればいい。
多分、俺は引き立てられて出世もするだろう。
この気持ちは、あくまでも友情だ。
そう自分に言い聞かせようとした。
でも、気持ちが膨れ上がってくる。
これじゃあ、まるで……
俺は自分の気持ちを振り払うように、頭を振った。
窓を閉めて、カーテンを引くと、暗くなった部屋に静寂が戻る。
「寝るか」
ひとりごち、静かに目を閉じて、眠りに落ちた。
ーーーー
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アーベルが少し顔を赤くして、目を逸らした。
高い鼻梁に切れ長の目、キリッとした眉。
出会った頃は背も低く、どこか仔犬を思わせる可愛らしい風体だったのに——
(イケメンになったよなあ)
「……綺麗だね」
「ん? ああ……まあ、そうだな」
背はいつの間にか追い抜かれ、騎士として剣の訓練を受けているせいか、体もがっしりとして逞しい。
こんな美青年が相手では、政略結婚とはいえマリーテレーズ王女もすぐに恋に落ちるだろう。
そう考えると、胸の奥がなぜかチリチリと痛んだ。
13本の薔薇の花束が出来上がるその瞬間——
部屋の中に大きな鐘の音が鳴り響いた。
時計塔の裏側の部屋なので、定期的に大きな時計台の時刻を告げる鐘が大音量で鳴り響く。
脳を揺らすような音に耳を塞いで、俺は少し笑った。
「本当に相変わらずひでえ音だな。早く引っ越さないと耳がおかしくなっちまう」
「え……リュシアン、引っ越すのかい?」
「ああ。お前と王女の結婚を見届けたら、エズの方に引っ越そうかと思ってるんだよ」
エズというのは、セーヌ川を挟んで北にある都市。海に近い小さな街だ。
不意に、グッと腕を掴まれた。
「どうして!? このまま僕のそばにいてくれてもいいじゃないか」
「どうして……って」
思ったよりもずっと激しい剣幕に、俺は驚いた。
「結婚するお前の……邪魔をするといけないから……」
すっと、腕を掴んでいた手が離れた。
顔を上げた時には、いつもの顔に戻っていて、
「また来るよ」
と小さく手を振ると、階下へと降りて行った。
アーベルが去ってからも、暗くなった部屋の中でぼうっと眺めていた。
花火が終わって帰っていく人々が、そのまま酒宴を始めているのか、街の賑わいが一層高まったようだ。
空には星が戻り、口々に祝う楽しそうな人々の声が、夜空を彩りながらゆっくりと溶けていく。
「寂しくなるな……」
こんな気持ちになるのは、なぜなのだろう。
王子の言う通りだ。このまま俺は王子の側にいればいい。
多分、俺は引き立てられて出世もするだろう。
この気持ちは、あくまでも友情だ。
そう自分に言い聞かせようとした。
でも、気持ちが膨れ上がってくる。
これじゃあ、まるで……
俺は自分の気持ちを振り払うように、頭を振った。
窓を閉めて、カーテンを引くと、暗くなった部屋に静寂が戻る。
「寝るか」
ひとりごち、静かに目を閉じて、眠りに落ちた。
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