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転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!第一話

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俺、黒魔術リュシアン・ルルワは自分の部屋の小さな窓から川の向こう岸の宮殿を見つめていた。

部屋というよりは物置の端にわずかに人の生活する空間があると言った方が適切な
粗末な部屋だった。

焦茶に煤けた木の床材は粗悪なもののせいか所々に木のこぶがあり、魔導書の重みに
たわんでミシミシと音を立てる。奥にはついたてで仕切られた裏にベッド、

空きスペースの中央には簡素な木のテーブルに背もたれのない丸椅子が二つ並んでいる。
時計塔の裏側にあり、定時になると鐘の音が鳴り響く。

時計の大きな文字盤越しに外が見えるようになっており、
白亜の宮殿が見える。

ガラス窓に今の自分の姿が映る。ボサボサの黒髪に紫色の瞳、やせぎすというほどでもないが細身の体を少し斜めに傾けて窓枠に頭をもたせかけている。

ヒュンッと高い音が響くと、夜の黒い大空に大輪の炎の薔薇が花開き、大空に炎でできたバラが一輪浮かび上がる。おそらく王宮からは綺麗に見えるだろうそれは奇妙に歪んで石造りの街を赤と緑の光に彩り照らす。

大きな時計台の文字盤ごしに、明日に控える王子婚約の儀を祝う炎の精霊の火花ショーは遠く美しく煌めいていた。
「いよいよ明日か・・・」
思わず感慨深げにつぶやいた。

思えば長い道のりだった。ゲーム会社に勤めていた俺は会社に二泊した後着替えを撮りに家に帰った際にベランダから落ちて死んでしまい、自分がワールド設計兼メインシナリオライターを勤めていた乙女ゲームの世界に転生した。

17世紀フランス宮廷のイメージで作成されたゲームには枢機卿、第二王子、近衛兵団長と煌めくようなイケメンキャラがいるにも関わらず。俺が転生したのは第二王子のセリフに一行登場しないモブだった。

一応バックストーリーとしてそいつの生涯も軽く考えてはいたが、第二王子の添え物程度で決まっているのは一つだけ、主人公に惹かれた第二王子が隣国の王女マリーテレーズとの婚約を破棄した際に対立した大臣方について処刑されるということだけだ。

俺は処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子と同じ王立学院に入学し、友人として接近。なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。

最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった。やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。

俺の死亡フラグは完全に回避された!黒魔術のチート能力も授けてもらったしこの世界で無双して金持ちになり、余生を贈る準備はもうできている・・・はずなんだが、なんだか気分が浮かなかった。


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