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抱きしめたかっただけだった
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しおりを挟む類くんにしごかれたおかげでお昼過ぎにはゆっくりと滑れるようになっていた。
リフトで上まで行って、初心者のコースだけどなんとか降りてくることができた。
「すごくない?私急成長じゃない?」
「めっちゃ時間かかったけどな」
「てか類くんはいいの?もっと上級者のコースに行かなくて。こっちだと簡単すぎてつまんないでしょ」
少しくらいなら緩く滑りながら会話することだってできるようになった。
ちょっと上手になれた気がして類くんに話しかける。
「まあな。でも誰かさんのお守りしないといけないからな」
「なによー。滑りたいんなら行けばいいのに」
「別にスキーもスノボも出来るだけで特別好きなわけじゃないし」
出来るだけっていうのがかなり腹が立つけど、実際自由に動き回っているのを見ると相当上手いんだなと思う。
ぐうの音も出ないほど完璧すぎて、いや性格に難があるからそこら辺は完璧じゃないか。
それからまた日が傾くまで滑って、スキー場を出る頃には夕日が沈みかけていた。
そこから夕飯の買い出しに向かい、お酒やら食材やらを買い込んで別荘に戻る。
女子よりも男性陣の方が料理に慣れていたからそこは任せて、私たちは先にお風呂に入らせてもらうことになった。
「うわー!やっぱめいちゃんっておっぱいおっきいよね!」
「いいなあ!どうしたらそんなに綺麗に大きくなれるの?」
ゆなちゃんたちにぎらぎらと見つめられて風呂場に逃げ込んだ。
とりあえず身体を洗って、早く湯船に浸かりたくて急いで洗う。
お風呂も割と広くて4人で入っても全然狭くない。
「ななちゃんはスレンダーでくびれがキュってなっててめっちゃ細いですね!無駄な肉が付いてないっていうか」
「ななはモデル体型だもんね」
「…私はもう少し胸が欲しいけど」
湯船に浸かりながらスキーの疲れを癒していく。
明日は全身筋肉痛確定だなあと思ったりして。
「てか男性陣皆ボードうまかったよね。さっちゃんずっと宮下さんに付きっきりで教えてもらってたし」
「普段はなんとも思ってなくても、やっぱゲレンデマジックで普段の何割増しかでかっこよく見えちゃうよねー」
2人がキャッキャと話してるのを眺めつつ、それわかるなーって思う。
類くんはいつもかっこいいけど、スキーウェア着こなしてボードを乗りこなして滑る姿はちょっと見惚れちゃったもん。
「ななちゃんは佐々木さんとずっと一緒にいたけど、2人ってどういう関係なんですか?まさかめいちゃんと三角関係?とか!」
「ちがうよー!一条さん含めると四角関係でしょ、ゆなちゃん」
「な、何2人して変なこと言ってるのかな?」
もうさっきからこの時とばかりにぐいぐいくる2人に、今その質問は一番ダメなやつ!と思いながら私は苦笑いで切り抜けようとする。
ななも困ってしまったのか、ふふ、と笑って。
「何もないよ。学校が同じだから仲良くしてるだけ」
「えー、そうなのー?」
先上がるね、とななは顔を手で仰ぎながら風呂場を後にした。
なんというか、やっぱり私がちゃんとしなきゃって思い直した。
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