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そして追いかけた
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しおりを挟む試験も終わって1週間ぶりにバイトに向かう。
今日は久々に類くんと優斗とななとシフトが被る日だ。
なんというか、この4人の組み合わせもなかなか辛いもんがあったりして。
「おーめいちゃんたち、試験おわったか!」
「おかげさまで」
「待ってた待ってた!」
いつになくハイテンションな店長。
私とななと優斗がホールに出てくると、まだお客さんがいないからか店長がジャーンと携帯の画面を見せてきた。
「ん?何これ。予定表?」
「シフト表ですか?」
「ノンノン。年末年始に俺の別荘で皆でパーっと集まんないかっていうお誘い」
「ああ!去年別荘がリフォーム中で行けないから来年は絶対行こうって言ってた例の!」
思い出した思い出したと私とななは顔を見合わせる。
優斗は何のこっちゃという顔をしているから私が説明してあげた。
「店長の実家、こう見えてお金持ちで別荘持ってるんだって」
「こう見えてって…」
「で、去年はリフォームしてたから来年行こうねって約束してたんだけど……」
ふーん、と優斗がつぶやく。
てかちょっと待って。
もしかしたら他に人がいるとは言え今のこの気まずいメンバーで行くことになることもあり得るってこと?
さすがに泊まりで過ごすなんて気まずすぎるよ……。
「ちなみにめいちゃんはもう行くものとしてカウントしてるから」
「えっ」
「2人はどうする?」
「あ、ちょっと!店長!」
こっちに予定があったらどうするんだと思いつつがっちり肩を掴まれてしまい抜け出せない。
ま、最悪ななと優斗が来ることになったとしても、あの人はこういうの行きたがらないだろうし……。
「来年は受験だし、せっかくだから私行こうかな」
「じゃあ、俺も」
「……まじすか」
その返答に店長は大喜びで早速メンバーに追加をしていた。
と、ちょうど良すぎるタイミングで類くんが休憩室からやって来て、店長はそのままの勢いで勧誘する。
「と、いうことなんだけど一条くんもどうかな?」
にこにこと店長は類くんに携帯画面を見せながら伝える。
類くんは画面のメンバーをじっと見て、それからこちらを見た。
いや、まあこのメンバーだしそもそも団体行動嫌いそうだし、ましてや年末年始で泊まりに行くなんてそんなことこの人はしない……。
「行く」
「なっ……!」
「ほんと?!いやあ、一条くんが来てくれるなんて、きっと女子メンバーが喜ぶよー!」
店長は浮かれて厨房の方に行き、他の子に喋りに行ってしまう。
まさか類くんが行くだなんて、その返答を予想してなくて顔が引き攣ってしまった。
「…こういうの、絶対嫌いなくせになんで……」
「嫌がらせ?」
ふ、とイヤーな笑みを浮かべて彼は仕事に取りかかりに行く。
うん、まさにこれは嫌がらせ。
絶対絶対、面白がってるに決まってる!
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