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俺だけ見てろ
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しおりを挟むそれから黙々と類くんは歩き続け、電車に揺られている時も腕を組みながらそっぽ向いてるし、私は何で連行されているのかわからない気分になってくる。
それでも仕方なく後ろからついていくと類くんの家に着いた。
そして部屋の中に入りやっと類くんが口を開いたかと思えば、玄関のドアにドン、と私を追いやって。
「あいつとは何もないとか言っといて、あれどういう意味?」
「いや、私も予想外って言うかほんとに思ってもみてなくて……」
襲われてそのまま食われそうになる草食動物並に縮こまると、類くんはまたフンッと私を置いてスタスタとリビングに行ってしまう。
あーもうどうしたらいいんだろう、なんて考えながらリビングに向かうと類くんはソファに座っていた。
類くんの前に立ちとにかく弁解しようと肩に触れようと手を伸ばすと、類くんがこてん、と私のお腹に額をつけた。
「類くん…?」
「……あんたが好きなのは俺だろ、ちげえの?」
額をくっつけたまま、俯きながら彼はつぶやく。
こんなことを類くんが言ってくるなんてびっくりしちゃって、私はえって、声を上げそうになったけど何とか抑えて。
「ち、ちがくない!」
咄嗟に私はそう言うと、類くんはゆっくりと顔を上げて私を見つめる。
そして私の腕を引き寄せて、私は類くんの膝の上に座らされた。
そのまま類くんは私の髪に触れて抱き寄せる、んだけど。
「で、でも…、優斗の気持ち、初めて知ってびっくりして、私どうしたらいいのか……」
類くんの胸に手を置いて私は正直にそう告げる。
このまま類くんに黙って抱きしめられたら、きっともやもやするから。
まあこれを伝えたら類くんがこの表情するのはわかってたんだけど。
「…そんな顔しないでよ」
「俺は元々こういう顔だ」
「……類くん、もう一度明子って言って」
「は?なんで」
「さっき一回呼んでくれたじゃん」
ねえねえ、って私は迫った。
私は類くんが好き。
だけど、もうそろそろ類くんだって好きって言ってくれてもいいんじゃないの?
類くんがそう言ってくれるだけで、私は……。
でも少しは期待したんだけど、類くんはやっぱり意地っ張り類くんで。
「……いやだ」
「なんで!さっきは呼んでくれたのに!意地っ張り!ケチ!」
「…もう黙れ」
髪に手を伸ばして私を引き寄せてキスをする。
そんなんじゃ騙されないぞと私がムッとすると、そんな私を簡単に見透かして彼は押し倒した。
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