【完結】【R18】明子はへこたれないッ

倉田

文字の大きさ
上 下
108 / 155
俺だけ見てろ

3

しおりを挟む

慌ててコーンスープを持った手を外に伸ばして避難させた。

優斗の香りが私をふわりと包む。

私は突然の状況に目をただパチパチとさせて、呆然としていた。


「小さい頃からずっと、明子のことが好きだ」


ぎゅっと、優斗の腕に力が入る。

顔を私の首筋に埋めて、髪と腰に手を添えられて私は動く事ができなかった。

…優斗が、私のことを好き……?

この感じはたぶん、どう考えても幼馴染としてとか人間としてって感じじゃなくてラブの方……。

小さい頃からって、え、だって。


「ま、待って。だってななは?優斗、ななのことが好きなんじゃ?」

「…どこでそう思ったかは知らないけど、俺が好きな人はずっと変わってない」


胸を押して彼を見上げるとやっと表情が見えた。

私の腰を抱いたまま、優斗は頬と耳をほんのり赤らめて私を見下ろす。


「明子が誰かと付き合っても、振られる度に俺に頼ってくれるのが嬉しかった」


優斗は屈んで私の額とこつんと額を当てる。

真っ直ぐな彼の気持ちを見れなくて私は瞼を伏せた。


「その度に俺のこと、早く幼馴染以上に思ってくれないかなって思って待ってた」


外はもう薄暗くなってきていて、肌寒くなる時間帯。

なのに身体は火照っているみたいに暑くて、ただ受け止めることに精一杯で。


「でももう待てない、待ちたくない」


辺りは薄暗いけど人通りはある。
通勤通学の時間帯だし、ここの歩道は広いけど全然通り道だし。

だからこんな風に抱きしめられてて恥ずかしいのに、そんなことより優斗の気持ちを初めて知ってしまった事実にびっくりし続けていた。


「もう、誰かを好きになる明子を見たくない」


彼はまた私の髪に顔を埋めてすり、と頬を寄せる。

大事なものを抱きしめるみたいにその腕は優しくて力強くて、少しも嫌な気持ちになれなかった。

むしろ、その胸の中が心地いいと思ってしまった。

それでも頭の中に浮かぶのは類くんのたまに見せる笑顔で、私は唇を噛んでグッと優斗を押しのける。


「ちょ、ちょっと優斗、少し緩めて痛い…」

「あいつのところに行かせたくない」


逆効果だったのか、先ほどよりも強く抱きしめられて本当に身動きができなくなってしまう。

どどどどうしよう……っ。

いつも冷静で客観的に物事を見てて私を一番に優先してくれてた優斗が、初めてわがままを言ってくれていることに気づいた。

何て伝えるのがいいの?
私はどうしたいの?

突然の事態にタジタジの私。

目をぎゅっと閉じてめちゃめちゃ考えまくっていたら、突然横から声がした。


「明子」


その声が降るやいなや、私の行き場がなかった腕が唐突に引っ張られて優斗の腕が解ける。

あまりに急だったから心臓はドキンッと大きく高鳴って、引っ張られた先にボスっとぶつかった。


「ぃいったあーッ!ちょっと手首!痛い離して!」

「うっせえ!何やってんだよバカ!」


私の手首を痛いくらいに掴んで罵声を浴びせたのは、めちゃめちゃ機嫌の悪い類くんだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...