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だって君が大切だから
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しおりを挟む季節はすっかり秋になっていた。
あれからおばちゃんは数日経って意識を取り戻したみたい。
そして奇跡的にも後遺症も特に残らず、今は少しずつリハビリをしている所だと優斗は言っていた。
「優斗、今日もお母さんのところ?」
「うん。まあ、着替えとかそういうのも持ってかなきゃだし」
「そうだよな。何かあったら頼れよ。優斗のためなら俺、飛んで行くから」
「私も、翔太と駆けつけるよ!」
「ありがと、2人とも」
学校が終わると優斗はすぐに病院に通うようになっていた。
バイトは家庭の都合とだけ伝えてしばらく休みを貰っている。
「優斗」
「なに?なな」
「…私も、もうちょっとおばさんが回復したら、お見舞い行ってもいいかな」
「もちろん。喜ぶと思う」
そうななに言って、優斗は教室を出て行く。
私は何となく皆に、優斗のおばさんが倒れた時に呼ばれて駆けつけたとは言えなかった。
さらに私もおばちゃんのことが心配だったから、バイトのない日はお見舞いに行ってたし、バイトのある日も優斗に電話をして話を聞いてあげることにしていた。
今日はバイトがあったから面会の時間には間に合わなかったけど、バイトが終わってからいつものように優斗に電話をしようと思っていた。
「あいつに会いに行くの?」
「わっお、類くん」
歩きながらスマホをいじって休憩室を出たら、出たすぐのところに類くんがドアの横でしゃがんでいて呼び止められる。
まさか人がいるなんて思わなくて変な声が出た。
「類くんももう上がりなの?」
「いや、ラストまで」
「じゃあ何でこんな所にいるの?あ、サボりだな」
そんな風にふざけて類くんの肩を突いたが無反応。
「最近バイト終わってもすぐ帰るじゃん。何か用事でもあるの」
「え?あー、まあ、うん」
「…あいつ?あんたの幼馴染の」
しゃがんだまま彼は私を見上げて聞いた。
私も類くんと向かい合わせにしゃがんでうん、と頷く。
「今日は会うわけじゃないんだけど、電話する用があって」
嘘ではないけど、別に用事ではない。
ただ優斗が心配だから話だけでも聞いてあげたくて。
すると類くんは私の制服の裾に手を伸ばして掴んだ。
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