102 / 155
だって君が大切だから
9
しおりを挟むその後のバイトはもちろんルンルンだった。
飛び跳ねるんじゃないかってくらいぴょんぴょん跳ねて歩いていたから、店長までななにめいちゃんに何があったのかって聞いてたくらい。
とにかくそれくらいのビッグニュース。
だってだって、あの人と群れるのが嫌いで私を煙たがり何度も拒絶していた類くんが!
ついに!
私を自ら家に誘うだなんて……!
「お待たせしましたーっ!お通しのピリ辛きゅうりでーすっ」
「めーちゃん今日めっちゃテンション高くない?何か良いことあったの?」
「わかります?嬉し過ぎて身体が軽いんです」
おじさんたちとのコミュニケーションも弾む弾む。
そんなこんなで楽しくバイトをして、時間通り21時に上がって私は先に更衣室で着替えていた。
類くんも21時上がりなんだけど、社員さんに何かを教わっていてまだかかっているみたい。
休憩室で待ってようと鞄をロッカーから出すと、携帯に着信が入った。
画面を見ると優斗から。
普段やり取りをするにしても優斗とはLINEが多い。
どうしたのかなーと思って、休憩室の椅子に腰を下ろして電話を取る。
「やほー優斗。どったの?」
『……明子』
ぼそ、と優斗の声がする。
あまりに小さい声だったから、携帯の電波が悪いのかと思って耳をよくくっつけてみる。
「優斗?あんま声聞こえないんだけど、何かあった?」
電波とかのせいというより、なんかおかしい。
優斗の様子が変だ。
私はへらへらするのをやめてまた聞く。
「ねえ優斗。どうしたの?」
『…母さんが』
絞り出すような声。
私はその小さな声に耳を傾ける。
『…母さんが、倒れた……』
は?!と私は声を出して立ち上がる。
えっ、えっ、と私の方がパニックになって休憩室をうろうろと歩いた。
「倒れたって……、いつ?病院は?」
『……30分くらい前に母さんが倒れて、救急車呼んで今は病院に来てる。緊急手術になって、まだ…』
「病院ってどこの?教えて!」
優斗から聞いた病院を私はすぐに検索して場所を調べた。
そして鞄を手に取る。
「優斗、すぐ行く」
そう言って私は電話を切って休憩室を出ようとする。
すると退勤した類くんが休憩室に入ってきて私は振り返った。
「ごめん類くん!急用ができたの!また今度絶対お家行くから!」
そう言い残すと私は走って焼肉屋を後にする。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる