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だって君が大切だから
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しおりを挟む私たちのクラスの模擬店は焼きそばで、初めは出店といえば焼きそばでしょ!と浮かれていたけど、作ってみると暑いったらありゃしない。
作る側の苦労を全く考えてなくて、しかも私が入っていた時間はお昼時だった事もあり大盛況。
とにかく焼いて焼いて焼きまくっていたら、焼きそばを混ぜすぎて手に力が入らなくなるくらいだった。
「あーっしんど!でもめっちゃ面白かった!」
教室に戻ってきてパーテーションで区切られた裏に皆の荷物が置いてある。
私は鞄からタオルを出して拭きながら教室の窓から校庭を見渡した。
校庭に模擬店が並んでいて、別のテントでは飲食スペースがある。
私たちの教室も飲食スペースというか休憩室になっていて、大体がカップルで回っているからどうしても羨ましい気持ちが芽生えてしまう。
「類くんが私と同級生だったら、どんな風だったかなあ」
きっとうちのクラスでもモテていたんだろうなあ。
周りの子がいる中でも私は他の目を気にせず今のようにアタックできていたんだろうか。
何でもいいから早く類くんに会いたいなあと思う。
確か明日はバイトで類くんに会えるから、今日の学祭の話をしてあげようと思った。
そうして学園祭は終わり、カップルたちのビッグイベントもひとつ無事に過ぎて行った。
まあ、この学園祭でカップルが誕生するっていう事もあるんだろうけど、と教室で使った道具を倉庫に戻しに行く途中、早速私は初めて他人の告白現場に落ち合ってしまう。
「佐々木先輩のこと、委員会で知り合ってからずっと好きでした。私と付き合ってください!」
気づかずにそこを通り過ぎようとしてしまい、声が聞こえてきて私は急停止した。
いやだってここ、人通りは少ないけど倉庫に向かう廊下だから今は誰かが通ってもおかしくないでしょ。
というか佐々木先輩って、優斗じゃない?!
仕方なく、というかぶっちゃけ興味本位私は影に隠れてそれが終わるのを待つことにした。
「ありがとう。気持ちは嬉しいけど、俺君のことそんなによく知らないし」
「じゃあ週末デートしてください。その後決めてください」
うわ、私が言うのもあれだけど、結構ぐいぐいくる後輩ね。
優斗もデートくらいしてあげるのかな、と思っているとはっきりと彼は言った。
「ごめん、俺ずっと前から好きな人がいるから」
……好きな人?
はて?
そんな人、いたのか?
と、一時思考停止していると、私が来た方向からぞろぞろとななとキキと翔太が用具を持って歩いてきて、隠れている私に気づいて近づいてくる。
「あっ、めい」
「シーッ!!!」
大振りなジェスチャーでそうやると3人はピタッと足を止める。
が、話が終わったらしい優斗が私の背後に立っていて、何してんの?と聞いてきたから心臓が止まりかけた。
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