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もう恋なんてしないなんて
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しおりを挟むやっぱりやっぱり!
普通に会ってんじゃん!
見つけた瞬間身体が勝手に飛び出そうとしてて、それを優斗に抑えられて足を止める。
「待て、落ち着け。何考えてんだ」
「…ごめん、足が勝手に」
というか尾けるのはいいけどその後のことを考えていなかった。
いつもみたいに詰め寄る?
…いや、誤魔化されるし最悪類くんに絶縁されかねない。
でも……ッ。
ピピッ
「…優斗」
「撮っといてやるからあとで送る」
普通に優斗は携帯で動画を撮っていて、確かに証拠さえ掴んでおけば後からなんとでもなるもんな、と感動した。
そのまま2人がマンションのオートロックを抜けて、中まで入って行くところまで動画におさめることができた。
「ありがとう!優斗ほんとにありがとう!」
「何かやってる事、ラブホに愛人と向かう旦那の不倫現場を抑えてる気分になってくるんだけど」
何やってんだか、と呆れて優斗は笑う。
とりあえずこれでネタは掴んだ。
やっぱり黙って待ってるだなんて私らしくない。
「これ見せて正直に吐かせてやるんだから…ひっひっひ……」
「それで本当のことを話すかどうか」
「あとは私の腕次第よ。優斗、ほんとにありがとね付き合ってくれて。何かお礼するよ。何がいい?」
家路を急ぎながら、私は優斗にまた世話かけてもらったからお返ししないとと思った。
優斗はそれを聞いてうーん、と考える。
「iPadがよく固まるようになってきたから新しいやつか、腕時計も最近気になるやつ見つけたし…」
「ちょっ、そんな高いのは…っ勘弁して!」
「冗談。わかってるよ」
ふっと優斗は柔らかく笑う。
以前類くんに嫌われたと思って優斗に話を聞いてもらった日以降、なんとなく2人きりになるのは気まずかった。
あの日の優斗はいつもと雰囲気が違ったし、それをうやむやのままにしていたから。
だから前みたいにこうして話せるのがすごく嬉しい。
「…あ」
「ん?何?何か良い案思い浮かんだ?」
優斗は私に何をしてもらおうかまだ考えていたみたい。
私が顔を覗き込むとちらっとこちらを見て何かを言いかける。
「……いや、何でもない。考えとく」
「りょーかいっ」
道の脇から虫の鳴き声がして、生暖かい風が吹く。
夏の夜のにおいが鼻をかすめた。
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